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俺は最強の冒険者

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 俺は最強の冒険者。今日も今日とて魔物を倒す。魔法で足止めしてから剣でとどめ。簡単なお仕事だ。それだけでお金がどばどば入ってくるし美女たちにもちやほやされる。いいことづくめだ。何も困ったことなんてない。
 ある日、俺は王様に呼び出された。
「なんですかね」
「実は魔王が蘇ってしまって」
「ちゃんと管理しとけよ」
「そんなこと言ったって」
 俺はごちゃごちゃ言う王様を袈裟切りにした。メイドたちが悲鳴をあげた。
「もう、今日からこの国は俺が仕切るから! いいね!」
 だれもいなやはなかった。王様は最強の戦士だったのだ。そいつがやられては誰も文句のつけようがない。俺は王様になって魔王討伐の編隊を組んだ。
「おまえとおまえ! いってこい!」
 騎士たちがどんどん宮殿から減っていく。
「陛下、騎士たちが戻ってきません」
「ちっ、やられたか」
 俺はマントを翻した。
「俺がいく!」
「おお、なんと力強いお言葉・・・!」
「そうだろう俺は最強の戦士だからな。おい俺の剣を持って来い」
 俺の愛剣はいまもなお銀色だった。
 ふふん。
「いいか、俺は一人でいく。お前らはついてくるな」
「そういうわけにはまいりません。陛下こそわが身命。陛下のおそばで散る命こそわが命題」
「いいこと言うじゃん」
 俺は同行を許した。
「くそくらえな旅路になるだろう覚悟はいいな」
「御意」
「ふむ」
 俺はたくさんの馬車を編隊にして出発させた。さしずめ王立国防軍のお引越しである。
「いけいけすすめー! ぎゃはははは」
 途中で立ちはだかる魔物も夜盗も裏切り者もすべて切って捨てた。
「俺に逆らうからこうなるのだ。俺が正しい。そうだな?」
「ははーっ!」
 部下たちはみな平伏し、罪人たちはこういい残して死んでいく。
「ああ、陛下、あなたの素晴らしさを少しでも理解できる力が私にあれば、あなたの盾になる以外の道を選ばなかったでしょうに」
「そうだろうな。当たり前だ。俺が一番凄いんだ。俺が一番偉いんだ。俺はいつも正しいし、これからもずっとそうだ。俺の敵はすべて間違っているし、一人残らずブッ殺す。絶対に後悔させるし生かしては返さない。俺の敵になったことを未来永劫くたばり果てても嘆き悔やむ時間を与える。絶対にだ。俺は敵を許さない。俺の前に立つやつを絶対に許さない」
「陛下、あなたこそ英雄、あなたこそ救世主、あなたこそ勇者です。あなた以外に素晴らしさなどありえない」
「そうだろう、それでいいんだ。たとえ嘘でもそう言えただけお前は幸せに死ねるだろう」
「嘘ではないのです」
「嘘でもいいのだ」
 俺はそいつの首をハネた。
「つれていけ。時に下僕その1よ。あとどれくらいで魔王の城に辿り着く?」
 ははあ、と下僕その1は平伏し、
「それがですね、魔王はすでに城を捨てておりまして逃亡しております。我らの強さと正しさに恐れをなしたのでしょう」
「ほう」
「それでですね、いまのままだと永遠に魔王には追いつけませんから、とりあえず魔王の居城を制圧してすべて終わりにしてはどうかと思うのです」
「ならん」
「え」
「魔王を追え。永遠にだ」
「それは……へ、兵たちも疲れていますし、なぜそんな無駄なことを」
「無駄じゃない。無駄なことなど何もない。俺は敵を殺す。魔王の首をハネる。そのために今こうして大陸を横断し、これからも横断する。立ち塞がるものはすべて殺せ。これからもずっと、そうしていく。それでいい。それでいい……」
 一人哄笑する俺を残して、下僕たちが仕事に戻る。暗い夕陽を見ながら俺は思う。
 これでいい。



「完」
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