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女流武者 御剣桜華 第二幕 女を捨てた武士

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 両親の仇である麻蛇羅虎雅を討つため、単身旅に出た御剣桜華は、近くにある因幡の町へと移動を開始した。
 「村の外は狩り以外は出たことがないからな・・。それにいつ虎雅の武士が現れるか分からないから慎重に移動しないと危ないからな・・・。」
桜華は草むらを掻き分けながら、森の中を進んでいく。すると草むらの先に一人の武士のいでたちをした人が倒れていたのが見えた。
 「まさか虎雅の武士かっ!?」
桜華は慎重にその武士の近くにより、すぐさま生死を確認した。心臓の音が聞こえる気配がなく、どうやら死んでいたようだ。桜華の村に来る前に行き倒れた武士であった。
 「えいっ!!」
桜華は武士の体を蹴ると、その武士は抵抗するどころか倒れてしまった。
 「ひゃあっ!!し・・死んでる!!」
桜華は武士の死体を見て、足が竦んでいた。桜華は震える足で、武士の近くに近寄る。
 「と・・とりあえず刀でも巻き上げておくか・・・。」
その武士の腰の辺りには、鞘に入った刀がそこにあった。桜華はその刀の鞘を取り、その鋭い切先を見て、そう呟く。
 「おっ・・いい刀だな。私の持っている猟刀とはえらく違う切れ味だな・・。早速その刀の切れ味を試してみるとするか・・。」
桜華は刀を手に取り、両手に渾身の力を込め、草むらを切り裂いた。その鋭い切れ味は、長く伸びた草を軽々と切り裂く威力であった。
 「こいつはいい刀だ。切れ味もよい。ついでにこの武士から篭手を奪っておくか・・。」
桜華はその武士から篭手を巻き上げると、すぐさま自分の腕に身につける。
 「おお・・腕に身が入るようだ・・。これで利き腕を守れる・・。」
初めて装備する篭手に、桜華は満足げな表情を浮かべる。武士からある程度の小銭を奪うと、桜華は町へと足を進める。
 「さてと・・、町に急ぐか。虎雅の武士に襲われると厄介だからな・・。それより、腹が減ってたまらぬ・・・。町で何かを食わねばならん・・。」
桜華は空腹に苦しんでいた。狩りに出かけてから何も口にしていなかったのだ。そんな状態で敵の武士や凶暴な野生動物に出会っても、空腹のために力が発揮できず逆に倒されてしまう状態であった。
 「うう・・、腹が減った。村で何か食べてから旅に出ればよかった・・。腹が減っては戦はできぬとはこのことか・・。はやく町に行き腹ごしらえをしないとな・・。」
桜華は空腹と戦いながら、森の奥に進むと、そこには広大な草原が目に映った。彼女は辺りを見回すと、町のようなものが見えた。
 「ま・・町が見えた!さっそくあの町に向かおう!!早速あの町で食事をしなければ!!」
桜華は空腹に耐えながら、ひたすら町へと歩き続けた・・。

 歩き続けて数分後、桜華は因幡の町に辿りついた。
「やっと町に着いた・・。早く飯処に行き、食事を取らなければ、空腹で倒れてしまう!!」
桜華は町に来ると、真っ先に飯処へと急ぎ、食事をとることにした。

 桜華は町にある飯処に来ると、すぐにかけそばと握り飯を注文した。
「掛けそばと握り飯ですね。合計二十両になります。」
桜華は自分の財布から二十両を出すと、店の人が金額を確認する。
 「二十両、確かに受け取りました。ではあちらの席でお待ちください。」
店の人は桜華が出したお金を取ると、すぐに厨房に向かっていった。桜華は料理を作っている間、席に座って料理が来るのを待つばかりであった・・。

 料理を作り始めてから数分後・・
店の人が料理を持って桜華の席に来て、そう言う。
 「ご注文の品、持ってまいりました。ではお召し上がりください・・・。」
料理が来たとたん、桜華は店の人が持ってきた掛けそばを食べはじめた。
 「うまい!!やっぱり店で食べる掛けそばは、一味違うなぁ!」
桜華は初めて食べる飯処のかけそばの味に感動していた。桜華が食べている間に、一人のさすらいの剣士が桜華に話しかけてきた。
 「君は虎雅の武士ではなさそうだね・・。ちょっと話を聞かせてくれ・・。」
さすらいの剣士がそういって桜華に問いかけると、桜華は食べるのをやめ、さすらいの剣士に答えた。
 「私は決して虎雅の武士などではありません。私の名は御剣桜華と申します。私の両親は虎雅によって家を焼かれ殺された。私は両親の仇をとるため、女を捨て男として武士として戦うことを決意しました。」
その言葉に、さすらいの剣士はこう答えた。
 「おお・・。お前も虎雅に復讐の意を持っているのか・・。実は私もそうだ。私の祖国も虎雅とその武士によって制圧された。私の祖国は備前の国だ。今は虎雅の占領下にあるようだ。ぜひとも私の家臣として働いてもらいたい。もし成功すれば、礼は弾むぞ。」
さすらいの剣士の言葉に、桜華はこう答えた
 「なるほど・・。話はよく分かった。ならばあなたの家臣として私を使ってください!!絶対に役に立ちます!だから一緒に戦わせてください!!」
桜華の言葉に、さすらいの剣士が答える。
 「よく言ったな!今から君は私の家臣だ!私の名は龍牙鋼獅朗(りゅうがこうしろう)と申す!!私は卓越した龍牙流剣術の使い手だ。祖国を取り戻すため、毎日我が家臣と共に祖国を取り戻すために旅をしている。決行は今夜だ。それまで宿で疲れを癒すがよい。心配だったら、私と同行するかね?」
鋼獅朗がそう言うと、桜華が首を縦に振ってこう答える。
 「家臣なる者、常に主についていくのが武士の基本であります。ぜひともご同行願おう!」
桜華がそう言うと、二人は因幡の宿屋で休息を取るのであった・・。

 さすらいの剣士、龍牙鋼獅朗の家臣として仕官した桜華。
彼の祖国である備前の国を取り戻すため、彼女たちの旅が始まった。
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