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女流武者 御剣桜華 第十五幕  小さな村の戦い

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 伸朗を倒し、砦に囚われし村人たちを救った桜華たちは、再び旅に向かうべく、牙龍丸の馬車に必要なものを積み込み、村を出ようとしたとき、村長が呼び止めた。
「桜華殿……伸朗の家を建てる様子を、少し見てくれぬか…。村人たちと伸朗のがんばりを見て行っておくれ。」
村人に連れられ、桜華たちは村長の家の近くまで来ると、そこには村人と伸朗ともに家を作っている姿が見受けらる。どうやら本当に伸朗は心を入れ替えたようだ。
 「今はまだ土台の部分だけど、みんなと伸朗が力を合わせればきっと立派な家ができそうだな。伸朗殿、家ので出来はどうだ!!」
桜華が家の建設にいそしんでいる伸朗にそう言うと、伸朗が桜華にそう言う。
「家の出来ならまだまだだ!!今は手が離せないんだ…。用件なら下にいる村人にでも聞いてくれ!」
伸朗がそう言った後、近くにいる村人が桜華たちにそう言う。
「伸朗さんの家は、まだまだ土台と骨組みしか出来ていませんが、これから村のみんなと力を合わせれば、あと二日すればきっといい家が出来るようです。」
村人の言葉に、桜華は感心した表情で答える。
「いい家が出来るといいな…。私はこれから私の両親の仇である虎雅を討つ為、大和へと向かう。それでは村長殿、私たちはこの村を発つ。」
桜華がそう言って村を出ようとした瞬間、山奥の砦で共に戦った竜五郎、雅沙羅、紅零の三人が村を出ようとする桜華たちについて来た。
 「おっ、おぬしたちは山奥の砦で私たちと共に戦ってくれた者ではないか…。もしかして私たちと共に虎雅を倒してくれるというのか!?」
東雅が後ろを振り向くと、そこには三人の姿がそこにあった。三人は桜華の前に来て、そう言う。
「私たちも桜華殿の役に立ちたいのです。私たちはあなたについていきます!!」
「桜華殿、東雅殿!!僕はあなたたちのおかげでここまで強くなれました。ぜひとも私を家臣に加えていただけぬか?」
三人の言葉に、桜華は首を縦に振り、了承のサインを送ると共に、三人を家臣に加えることにした。村でであった三人の家臣を加え、桜華に仕える家臣は四人となった。家臣が四人いれば、心強いものだ。
 「さぁ、我が家臣たちよ、目指すは我が両親の仇、麻蛇羅虎雅がいる大和だ。皆のもの、馬車にいてもいつ武士との戦いが来るか分からないので、準備は万全にしておくのだっ!!」
桜華の言葉で、家臣たちは戦いの準備を済ませ、すぐさま馬車へと飛び乗る。家臣たちが全て馬車の中に入ったのを確認すると、桜華は馬に鞭を振るい、播磨の辺境の村を去った。
「村長殿!!伸朗殿!元気でなっ!虎雅の首を討ち取った後、またこの村に顔を見せに来るぞっ!!」
桜華は大きな声で村長と伸朗に叫ぶと、宿敵である虎雅がいる大和へと向かうのであった。

 一方その頃、桜華と鋼獅朗によって平和を取り戻した備前の城にいる鋼獅朗は、瓦版を見ながら椅子に腰掛けていた。
「何ぃっ!播磨の辺境の村が救われたという話だ。女の武士がどうのこうのと書かれているのだが、それはもしや桜華殿のことでは!?」
鋼獅朗の言葉を聞いた冥那が、鋼獅朗が手に持っている瓦版を覗き込む。
「桜華殿が村を救っただって!?その話は本当なのか鋼獅朗殿よっ!」
冥那が桜華が播磨の辺境の村を救ったことについて鋼獅朗にたずねると、首を縦に振りながら鋼獅朗が答える。
「うむ…冥那殿、瓦版に書いてあることは本当のことだ。私がいない間にも桜華殿は強くなっておる。これからの成長が楽しみだ。ハッハッハ……。」
鋼獅朗が高笑いを浮かべながら冥那にそう言うと、鋼獅朗の持っていた瓦版を手に取り、読み始めた。そこには虎雅がまたひとつの村を滅ぼしたという知らせがあった。
 「何々……悪の大名虎雅、和泉を滅ぼし虎雅領となった…か、鋼獅朗殿、虎雅は徐々に領地を拡大している様子だ。しかし奴の家臣でも強国、京都の鎌倉だけは制圧できなかったという。まぁ鎌倉の兵力は虎雅の兵力に劣らないほどだからな……。」
冥那が鋼獅朗に虎雅のことについて話すと、鋼獅朗が答える。
「虎雅とは、桜華殿は両親の仇と言っておったな。私はかつて備前が雲之介に奪われる前、奴の家臣と戦ったことがある。数百人ほどの奴の家臣が攻めてきたが、私のご先祖龍牙龍之介(りゅうがりゅうのすけ)の代から伝わる龍牙刀術に精通する我が家臣によって虎雅の家臣たちは倒された。ちなみに奴の課sンと戦ったときの私の家臣は二十人ほどだったな…。龍牙刀術こそ一流の強さだな!」
鋼獅朗は深刻な表情から一転、虎雅の話から逸れ龍牙刀術の強さを自慢げに冥那に語り始めた。冥那はあきれた表情で鋼獅朗を見つめる。
 「はぁ……こんな領主がいたら他の領主に笑われそうだな。桜華殿、がんばっておるようだな…。」
冥那は桜華のことを気にかけながら、天守閣から外を見上げるのであった。夜空には三日月が昇り、備前の村を黄色い色に照らしていた。

 そのころ桜華は播磨を抜け、丹波にある小さな村にやってきた。桜華はなにやらひそひそ話をしている二人組の村人がいたので、物陰に馬車を隠して話し声を聞いていた。
「はぁ…瓦版を見る限り和泉の村も虎雅に滅ぼされたか。丹波はまだまだ虎雅の魔の手が伸びていないとしても、何百人いる家臣がこっちに来るか分からない…。だから俺は武士になってこの村を守ろうと思う。」
村人の一人がそう言った後、その男のそばにいた他の村人がそう言う。
「おいおい、そんな事を言うなよ。こっちまで怖くなってしまうではないか。武士って言うのはいつ死ぬか分からない仕事だぜ。それに武士の返り血を浴びなければならないんだぜ。お前がそう言うんなら、俺も武士になってやろうではないか…。俺たちと共に悪を討とうではないか。そのためには刀の修行だ!!」
ひそひそ話をしていた村人たちがそう言った後、どこかに去っていった。彼らは刀の修行にでも行くのだろう。
 「うむ。和泉の国が滅ぼされたか。まぁ奴の本拠地である大和の近くにあったのだからな。私がこうしている間にも虎雅は領地を拡大しておる。龍牙丸、行くぞ!」
桜華は龍牙丸を走らせ、丹波の小さな村を出ようとした瞬間、さっきひそひそ話をしていた二人組の男が武士の格好をした男に捕まっているのが見えた。
「貴様!!虎雅様に対する侮辱罪で打ち首だ!」
虎雅様という言葉を聞いた桜華は、この武士の格好をした男が虎雅の武士だということが分かった。桜華は刀を構え、虎雅の武士に近づく。
「貴様、この者たちが何をしたのかは分からないが、刀を下ろしてもらおう。」
桜華の言葉に、虎雅の武士が桜華を睨みつけながら答える。
「何だお前は!お前もこいつらと同じ目にあいたいのか!」
虎雅の武士が怒りを露にした表情でそう言うと、二人組の村人が桜華に足し受けを求める。
「ひいぃっ!!女の武士さんよぉ、助けてくれ!!俺たちが武士になって虎雅の兵士を倒そうって話していたら、運悪くそれを聞いていた虎雅の武士に捕まってこの有様だ…。一生のお願いだ、頼む。金ならいくらでも出すから!!」
二人組の村人がそう言うと、桜華は馬車にいる家臣たちを呼び出し、二人組の村人に答える。
 「金はいい。私は困っている人をみすみす見捨てることは出来ないのだからな。さぁ、虎雅の武士よ、私と勝負だ!!私の両親を殺し、村を襲った虎雅を倒すまでは負けられないからなっ!!」
桜華が刀を構え、戦いの準備をすませる。虎雅の武士も刀を構え、桜華を迎え撃つ態勢にはいる。虎雅の武士が持つ刀は、桜華の持っている刀より鋭い物で、切れ味も抜群だ。
「お前の刀を見る限り、使い古しのようだな。そんな刀で俺が倒せるとでも思ったのか!!まぁ勝てる見込みなど無いけどなぁっ!!」
虎雅の武士が刀を振り上げ、桜華に襲い掛かってきた。桜華はすぐさま虎雅の武士の斬撃をかわすと、一気に刀を突き出し、虎雅の武士の心臓を貫いた。
「がはあっ!!な…何故俺がこんな女なんかに……ぐふっ!!」
「決まっておろう。お前の刀の使い方が間違っているからだ。もしかしてお前は虎雅の家臣に入ったばかりだったのか…どおりで弱かったということか。とりあえずこの刀は捨てて、さっき倒した奴から刀を奪うとするか。あと甲冑も捨てがたいから奪っておくか。」
桜華は倒れた虎雅の武士から良質の革と銅で作られた甲冑と良質の鋼を鍛えて作られた刀を奪い。今まで使っていた刀を捨てようとしたとき、二人組の男が桜華に話しかけてきた。
 「すまねぇ、その刀俺たちにくれないか…。修行の際に必要なのでな。」
二人組の村人がそう言うと、桜華は今まで使っていた刀を村人の男に渡した。
「そうだな。これはおぬしたちが持っていてくれ。それを使い、刀の修行に励むのだぞっ!!」
桜華は二人組の村人にそう言った後、丹波の小さな村を後にした。
「ありがとう女の武士さん!!おれたちこれからがんばって武士を目指すよっ!よし、今から修行だ!」
桜華たちが村を去った後、二人組の村人は桜華から譲り受けたその刀で、武士になるための修行に明け暮れるのであった。

虎雅の武士を倒した桜華は、武器と防具を奪い、力を手に入れた。
丹波の小さな村を後にした桜華たちは、虎雅を倒すべく大和へと向かう!!
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