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女流武者 御剣桜華 第十七幕 山城の町

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 虎雅の武士を振り切り、桜華たちは草原を抜け、古くからの文化が栄えている大きな町、山城の町にやってきた。山城に着いた桜華たちは、早速家臣の装備を整えるべく、鍛冶屋を目指していた。
「さすがに大きな町だと、どこに何があるのかわかりませんな……。とりあえずこの町を一回りして、鍛冶屋を探しましょう。」
桜華の後ろを歩く東雅がそう言った後、桜華たちは山城の町を一回りすると共に、鍛冶屋を探すことにした。町には人力車が走り、着物を着た女たちが行き交っていた。一時間ほど歩いたとき、鍛冶屋の立て札が桜華の目に映った。
「おっ、鍛冶屋があったぞ。しかし今は閉まっているようだ。また日を改めて来るとしよう…。」
桜華たちが鍛冶屋の中に入ろうとしたとき、鍛冶屋には休業の立て札が張っており、店に入れなかった。桜華たちは仕方なくその鍛冶屋を後にし、別の鍛冶屋を探すことにした。
 「桜華殿、この店をあきらめて別の鍛冶屋を探しましょう。この場所にはまた日を改めて来ればよいではないか…。」
東雅がそう言ったあと、桜華は物足りなさそうな表情で答える。
「そうだな。別の鍛冶屋を探すか…。とりあえずこの場所を後にしよう。鍛冶屋はここでけではないからな。」
桜華たちは先ほど見つけた鍛冶屋を後にして、別の鍛冶屋を探し始めた。

 一方備前を収める鋼獅朗に、瓦版の配達人がいつものように瓦版を渡し、後を去っていった。鋼獅朗は瓦版を手に取り、読み始めた。
「何々…。虎雅の奴がまた領地を広げたか。今度は紀伊を侵略したか。奴はどれだけ領地を拡大すれば気が済むんだ…。」
鋼獅朗のただならぬ表情に、家臣である冥那が駆け寄る。
「また虎雅の話か…。瓦版を見るなりその話ばかりだな。鋼獅朗殿、虎雅は一体どういう奴なのだ…。」
冥那が鋼獅朗に虎雅のことについて尋ねると、鋼獅朗が静かに口を開いた。
 「私の友人であり忍者である風魔甚助(ふうまじんすけ)から聞いた話なのだが、虎雅はかつて伊賀で上忍を勤めており、部下からの信頼も厚かったのだが、奴は突如忍の道をはずれ、抜け忍となった。その後大和で武士となり、戦果を上げて大名まで成り上がり、数々の国を侵略し始めたのだ。奴は忍術も使え、卓越した刀術を兼ねそろえる武士で、奴の家臣がいなくても数人の兵を倒したという話だ…。これで私からの話は以上だ。」
鋼獅朗の話が終わった後、天井裏から何者かが現れた。
「何者だっ!!」
何者かの侵入に、鋼獅朗と冥那は刀を構え、迎え撃つ準備を始める。しかし、天井裏から現れたのは鋼獅朗の友人でもあり忍者の甚助であった。
 「鋼獅朗殿、私ですよ。友人の甚助でございます…。上忍の命令で、備前の護衛にやってまいりました。山城や蝦夷の辺りにも私たちのほかの忍者を配置し、護衛にまわっているそうだ。虎雅の武士たちがこの辺を襲っていると聞いたものでな。」
甚助の言葉に、鋼獅朗が首をかしげながら答える。
「甚助殿、この城にいる忍者に護衛を任せたと伝えておいてくれ。甚助は伊賀きっての手裏剣の使い手だから、虎雅の武士が来ても安心だな。では頼んだぞ。」
鋼獅朗がそう言うと、甚助は鋼獅朗のそばにいる冥那のことが気になり、鋼獅朗に尋ねる。
 「鋼獅朗殿、今の言葉、我が仲間たちに伝えておきます。隣にいる女の人は、君の家臣か?」
甚助が冥那を見てそう言うと、冥那が首を縦に振り、答える。
「私の名は如月冥那と申す。おぬしの言うとおり鋼獅朗の家臣だ。甚助殿は忍者と申しておられたが、何か忍者の使う武器を少しだけでも教えてくれぬか…?」
冥那がそう言った後、甚助は腰に付けている腰紐をはずし、冥那にそれを見せる。
「これが私の忍道具です。いろいろと刃物が多いので、手を触れぬようにな。」
冥那は甚助の忍道具のひとつである手裏剣を見ると、なにやら文字が彫りこまれているのが見えた。不思議に思った冥那は甚助にそのことについて尋ねる。
「すまぬ。この手裏剣にはなにやら文字が掘り込まれているようなのだが、教えてくれぬか?」
「そいつは風魔家に伝わる手裏剣『風魔手裏剣』といわれる一品だ。そいつには風の力が宿っており、投げた瞬間に風の刃が発生し相手を切り裂く特別な手裏剣だ。我が先祖、風魔小太郎(ふうまこたろう)が使っていた最大奥義のひとつである『風魔疾風刃』を使えるのは風魔家の忍者だけです。」
風魔手裏剣の説明が終わり、冥那は忍刀の横にある尖った短剣のような物を見て、甚助に尋ねた。
 「甚助殿、不思議に思ったのだが、刀の横にある尖った物は、どのような物なのだ?」
冥那がそう言った瞬間、甚助は尖った短剣のような物を手に取り、冥那に答える。
「こいつは手裏剣の一種・苦無(くない)と呼ばれる女でも扱える物だ。主に女の忍者である『くのいち』が使う小型の短剣だ。相手に向かって投げたり、両手に持って相手の懐に飛び込み、一気に切り裂くことができる武器だ。また、このほかにも『円月苦無(えんげつくない)』と呼ばれる物もあるそうだ。これで説明は終わりだ。それでは私は任務に戻ることにする!」
甚助は再び天井裏へと戻り、自分の持ち場へと戻っていった。
 「冥那殿、言い忘れていたことがあった。忍者には風魔家と対立する流派『炎魔家』と呼ばれるものが存在するようだ。奴らは火薬を仕込んだ特殊な手裏剣『炎魔手裏剣』を使う忍者だ。風魔家に奥義があるように、炎魔家にも奥義というものがある。それは火薬を仕込んだ手裏剣を敵めがけて投げつけ焼き払う『炎魔烈風刃』という奥義だ。風魔と炎魔の両方の奥義を使える忍者がいる話を甚助から聞いたのだが、詳しい話は分からぬままだ…。」
鋼獅朗がそう言った瞬間、冥那が呆れ顔で答える。
「はぁ…、鋼獅朗殿は忍者のことをよく知っておられるのだが……私に話されてもよく分からぬ…。」
冥那がそう言った後、気分転換に城の外へと散歩に出かけた。

 一方桜華たちは山城の町の鍛冶屋を探しているうちに、夜になってしまった。
「桜華殿、今日はもう宿に行きましょう。鍛冶屋はまた明日によってみよう。明日になれば開いているかもしれぬからな…。」
竜五郎がそう言うと、桜華は首を縦に振りながら答える。
「そうだな。鍛冶屋にはまた明日寄ることにしよう。今日は近くの宿で休みを取ることにしよう。」
夜になってしまったので、桜華たちは仕方なく近くの宿で睡眠をとるのであった。

家臣たちを率いて、侵略図を広げる悪の大名虎雅
山城に着いた桜華たちは、虎雅が徐々に侵略図を広げていることをまだ知らない。
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