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岡田郁夫

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4. 岡田郁夫

この仕事を続けて4年になるが、世の中には本当、変な人が多い。
以前、両手を縛って口に猿ぐつわをはめて出てきた男がいたが(あの時は本当に驚いた)
今日は全裸の女の人が出てきた。
シャワーを浴びていたとのことだったが、身体もほとんど拭かないで出てきたのか
長い黒髪からは水滴が滴り落ち全身がまだ湿っているようだった。
しかもその女はとくに恥じらいもせず平然と荷物を受け取る。
こうゆうへんな奴らは大抵平然としているものだ。
同僚からそれに似た話も聞いたことはあったが自分もこんな目にあえるとは。
やはり変な人間とはいえこうゆう「変さ」なら大歓迎だ。
とはいえさすがに焦ってしまっていた。
受け取りのサインは貰ったものの、お客様控えの紙を渡すのを忘れてしまっていたのだ。
気づいたのは車に戻ってからだった。
「やっぱマズイよな~。」
たいていの人は受け取りの控えの紙なんて気にしないんだろうが
万が一ということもある。
たった紙切れ一枚渡さなかっただけで面倒なことにならないとは言い切れないのだ。
仕方なくもう一度さっきのマンションに向かう。
よりによって4階。エレベータ使えば直ぐだがどうやら故障しているらしく階段を使わないといけない。
「はぁ、やっちまったな~」
「あ、でも」
もう一度裸の女を拝めるかもしれない。
そう思い直すと気分は一転、忘れててよかったとさえ思えてきた。
4階まで階段を上がり通路に出た。
このマンションは階段を上がると横に通路が伸びており
それぞれ突き当たりで直角に折れ
折れた先の通路に4つずつ部屋が並んでいる。
「安田」さんは右側の一番奥の部屋だ。
「安田」。それがあの女の人の名前らしかった。
通路を右に曲がり突き当たりを曲がる時、女の人とすれ違った。
なんとも派手な格好、全身黄色でコーディネートされている。
それもなんとも明るい黄色だ。
あんなもの見てたら目がチカチカしそうだ。
髪の毛もウィッグなのだろうが黄緑色だ。
いくつなのかはわからなかったが、よくあんな格好ができるもんだ。
このマンションは変人が多いのかもな。
スカートを履いてはいたが、もしかしたら男って可能性もあるな。
そして「安田」の表札の前についた。
ピンポーン
ピンポーン
「すいませーん、先ほど荷物をお届けに上がったものですがー」
もしかしてまた裸で出てくるのか?
今度はしっかりと目に焼き付けておこう。
幸い相手はそんなこと気にも止めてなさそうだったし、なにより美人だった。
長い黒髪に口元のほくろ、しかも裸だって言うんだから
なんとも色っぽい。
しかしあんまり想像しすぎても下のほうが大きくなってしまってはいけない。
ピンポーン
もう一度チャイムを押してみる。
「はーい」
中から声が聞こえた。
「少し取り込んでいまして・・・。
 どういったご用件でしょうか?」
ドアは閉じたままだがさっきの女の人の声だ。
「あ、すいません。先ほどお荷物届けさせてもらったものなんですが、
 お客様控えをお渡しするのを忘れてしまいまして」
「あ、そうですか~。
 悪いんですけどそこの郵便受けに入れといてもらえます?」
「あ、はい。わかりました。何度もお邪魔してすいませんでした。」
郵便受けに紙を入れる。
「では、失礼します。」
取り込み中とのことだったが、なにか食べていたのだろう。
口に何かをふくんでるのが話し声で分かった。
「取り込み中っていうか食事中ね。」
裸はいいのに食事中はダメなのか?
まぁ食べながらなにかやってるのかもしれないし、なにより変人の思考はわからないからな。
そう思い、郵便受けに控えの紙を差し入れ階段へ向かった。
そこで気づいたが、通路にさっきの派手な女のものであろうこれまた派手な
真っ黄色のハンカチが落ちていた。
ハンカチの縁には赤や青や緑のキラキラした小さなガラス玉のようなものが縫い付けられていた。
私はなんとなくそれを拾ってポケットに入れ
そのまま持ち帰った。
4

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