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一月九日

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一月九日

 昨日の中に仕掛けてあった時限爆弾が七時を少し過ぎて爆発すると、僕の自由ではない強制的な一日が今日も始まった。
 ベットから出ると二階から一階まで体が反射的に動き、同時に朝の準備も行っているようだった。冬の間の習慣である石油ストーブを点けて、小さな画面に表示された室内温度を確認すると八度だった。これは寒いわけだと妙に納得しながら、ほぼ毎日の義務である刑務所に行く準備を始めた。
 
 僕は刑務所に四歳から通っている。その間に四回ほど他の刑務所に移され、今の場所に落ち着いた。何時また移されるかは判っていたが、判らないふりをしていた。そこは朝の七時から八時くらいと、行く時間はどこも指定されていた。
 今日も朝食を食べながら朝のニュース番組を観て、昨日や今日の出来事をアナウンサーが一方的に話しかけているのを観察しながら、いつのまにかパンを食べ終えたのを自分で確認して、歯を磨き始めていると、昨日今日の出来事は終わりを迎えていたようだ。それから歯磨きを終えて、水道から出る水をコップに注ぎ、それを口に含んでみると非常に冷たかった。指定された囚人服を着て、刑務所に行く時間を確認すると、もうその時間だったようだ。
 外へ出てみると、僕と異なる指定された囚人服を着た、近くの刑務所の同年代の人間達が僕の家の目の前を歩いていた。周りを見ると、僕より幼い子が囚人服を着ていたり、僕より大人の男性が囚人服を着ながら、駅の方へ向かっていた。その中で僕も同じように囚人服を着ながら自転車で、しばらく僕の刑務所の方へ向かうと、僕と同じ指定された囚人服の人間達が同じ様に自転車に乗っていた。
 
 刑務所の門が視認出来る距離まで僕は近づくと、囚人達が駅の方から歩いていて、警備員を超えて収監されているのを確認できた。誰も抵抗すらしていなかった、それどころか集団で微笑んでいる者も居た。刑務所なのに。何かが可笑かった。
 
 僕の自転車が門を超えて後ろを振り返ると、まだ囚人達が後ろを歩いてきているようだった。
 
 
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