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序章とマダムと私

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満員電車のかごから開放された社会人はため息付きながら、今日も日光を浴びた。
私は、これを眺めるのが、大好きなのだ。
他人と別種の開放感と、爽快感がまるで違いこれ程良いのはやめられない。
そんな私が眺めている日常を嫌って私を睨むのがいたらこの駅から、すぐの近いビルの4階に住んだ私を追い出せるものなら追い出したまえ・・・っと。
そして得意の、この浦木探偵事務所に迷える羊を甘い草で誘い込む。
その中で逸材の人物が一人。
背伸びする者の中に我を不機嫌に突き落とす人物が視界に移る。
俺の契っても契れぬ深くさび付いた鎖で繋がれた腐れ縁であり邪魔その者でしかない相棒の登場だった。
「おーい!!」
金髪にして、さながらサイヤ人に服を着せたような彼は面倒ごとを引っ掻き回してもっと歪にする事から悪魔という俗称の元、サタンと呼ばれている。
さて、彼のことは放置しよう。腫れ物を掻きすぎても膿が出るだけだ。
「喫茶店でもどうです? 勿論私持ちです、マダムには奢らせるには行きませんのでね」
「まぁお上手」
お決まり文句を吐いて、マダムは手を口に当ててクスクスと笑い出した。
二ヶ月振りの客に接待は手を抜けない、そして見え呉れも良しとした指輪に怠惰の脂肪といった見ただけの情報を見るに金袋だ。
これだけあれば水道代とツケが払える。
しかしその依頼はありきたりでとても苦労の絶えない代物だった。
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