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体育祭

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あれは高校最後の体育祭のことだった。

あの日、僕は特に何の感慨も抱かずに適当に競技をこなしていた。

体を動かすのは好きではなかったし得意でも無かった。

しかし、そんな僕でも一つ期待している競技があった。

それは「大綱引き」。僕はこの競技の為だけに体育祭に参加してるといっても過言ではなかった。

運動嫌いな僕を心躍らせる理由。それは大綱引きが持つ「もみくちゃなエロス」だった。

大綱引きは男女混合で行われる。しかも密着度が凄い。

そうなると色んなところを触れたり触られたり、押し付けたり押し付けられたりするのだ。

これは大変な魅力だった。一年に一度のビッグチャンス。しかも今年でラスト。

絶対に負けられない勝負がそこにはあった。


「大綱引きの準備をしてください。」


グラウンドに叙事詩的なアナウンスが鳴り響いた。

ついに運命の時が来たのだ。

僕は何度もシュミレーションした作戦を再確認した。

「合図が鳴ったら、少し遅れて出る。そして女の子と女の子の間にすかさずサンドウィッチ」

名づけて「できれば可愛くてふくよかな女の子に挟まれたいです作戦」。

作戦は完璧。完璧だった。あまりにもパーフェクトすぎる。欠点なんて見つからない。

そうほくそ笑んでいると急に合図のピストルが鳴った。

僕は驚いて少しこけた。大分出遅れてしまった。

気づいたときには、もう手遅れだった。

綱の周りには人がみっちりと群がり、少しの隙間も無くなっていた。

途方に暮れてウロウロしていると後ろから野太い声が上がった。


「おおい!こっちへ来てくれ!!」


振り向くとラグビー部だと思われる屈強な二人が僕を呼んでいた。

丁度二人の間に人一人が入れる隙間が存在しているのを見たとき僕は神を呪った。

僕はやむを得ず男臭い彼らの間に入って綱を握った。形だけでも綱を引いておこうと思ったのだ。

しかしまともに綱を引くことはできなかった。

なぜなら二人にがっちりと挟まれて身動きがとれなくなっていたからだ。

「鋼鉄のパンに挟まれた哀れな具材」それがその時の僕の状態だった。

最初に立てた作戦が「ガタイが良いムキムキなお兄さんに挟まれちゃった作戦」に変わっていた。

このままではいけないと思ったが貧弱な僕ではどうすることもできず

ごつい二人に色んな所を触れたり触られたり、押し付けたり押し付けられたりされた。正直泣きたかった。

汗臭い男の香りに朦朧としていると競技終了の合図が鳴った。

勝負の判定は僕らの軍の勝ちだった。みんな歓声を上げていた。

僕以外は。
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