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三番

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三番 おかえり

「・・・はっ!」
 目が覚めた。私の隣には、大河さんが眠っている。様子を窺ってみると、ちょっとやそっとの事では起きそうになかった。
 朝早く道朗に揺り起こされたせいか、私はまだ眠い。居間の時計を遠目ながらに見ると、もうすぐ昼時だった。
 時計を見ると急に空腹を感じはじめてしまった。しかし、まだ眠いから体を動かすのは億劫だ。何も食べなくても空腹が満たされてしまえば良いのに。一瞬そう思ったが、しかしそれではおいしいものを食べる楽しみがなくなってしまうな、と考え直した。とはいえ、今この場ではあまり動きたくない。とりあえず立ち上がりでもすれば体に血がゆっくりとめぐり始めるのであろうが、今の私にはそのとりあえず立ち上がるという行為がとても困難に思えた。
 道朗は今、何をしているのだろうか。
「ああああああああああああああああっ!」
「・・・んだよカナ・・・どうした?」
 つい叫び声で大河さんを起こしてしまったが、仕方ない。
「道朗は今日、お昼には帰ってくるんだった!」
「・・・だからどうしたってーの」
「玄関行ってきます!」
「・・・おう?」
 説明が中途半端になってしまったが、仕方ない。
 誰よりも、先に。
 何よりも、早く。
「ただいま」
 道朗を出迎えるのは、私だ。
「おかえり」
 良かった、今日も間に合った。

三番 おわり

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