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W1 手紙

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          第1跳 始まりを告げる手紙


 すがすがしい朝だった。俺の名はマリオ職業は配管工、毎日毎日重いハンマーで壊れた配管を直すだけだった。
いつもは憂鬱な朝なのに、なぜか今日は特別な事が起こりそうな気がした。
 ベットから起きた俺は、短い廊下をミシミシと歩きリビングえとつながるドアをゆっくりと開けた。いつもなら弟のルイージやキノコみたいなクリボー達、そして愛するピーチ姫がおはようと言ってくれるはずだった。
 ガチャっと小さなドアを開けた。そこにあった光景はいつもとちがうものだった。ガクッとヒザをつき、涙をながしながら、下をむいているルイージがいた、その手には1枚の小さな手紙があった。


――― ピーチ姫は頂いた。 かえしてほしくば城までこい  
クッパより ―――

そう言う事か・・・ 特別な何か、それはこれだったのだ・・・
泣いているルイージ、ここにはいないクリボー、そして何よりピーチ姫の笑顔・・・ この1枚の手紙で、全てが分かったような気がした。
なにをするわけでもない、まず最初にたしかめたかったのは外の様子、泣いているルイージを横目に震える手で外へと通じるドアをキィーと開けた。
 もう何も言えない、と言うより言える言葉がない、そこに広がっていたのは言うまでもない、転がっているクリボーやパタパタの死体、宙に浮いているブロック、その光景を見て思わず
「戦場・・・」
 まさにその言葉どうりの世界、思わずピーチ姫の安否を確かめるため、キノコ城にむかって走ってしまった。その時後頭部に
 ゴンッ
 と、ぶつかる音がした。痛いと言う暇もなく後ろにいる者がなにかぐらいは、分かっている。そっと後ろを見るとやはりそうだった。とがった牙、キノコのような体、
  「・・・クリボー」  
第2跳 行ってきますの決心

 「・・・クリボー」
 その言葉は異常なまでに体中に響きわたった。
 そこにはかつての姿はなかった、あのかわいらしいクリボーはどこへいったんだろうか・・・、まずはこのクリボーをどうしたらよいものか、その時震えた声で後方から
「にっ、兄さん、踏んで倒すんだよ」
 その震えた声は確かに意思を持ったルイージの言葉だった。自分はその声に言葉をかえそうとはしなかった、1番の理由は昨夜まで同じ暮らしをしていた者を踏んで倒す事はどう考えてもできそうにない、ただピーチ姫を助け出すにはクリボーを倒すしかない、その時クリボーが自分に向かって、
 「ダッ」
 と、向かってきた、自分は動くに動けなくなった、なぜだろうあんなスピードでせまってきているのに・・・、


「ゴツンッ」


 あそこまで悩んでいたのに・・・
 自分の足にぶつかったクリボーを、見下ろすような体制で右足を腹の位置まであげていた、そのままゆっくりと落ちるようにクリボーの頭の上に自分の右足のカゲをつくった、クリボーは何が起こったのか分からない様子であった、そのポカーンとした顔にそのまま足をおろした。


「ポコッ」


 自分はすでに迷ってはなかった、何をしたいわけじゃない、ピーチ姫を助けるために、大きなポールを横目に古い城にたどりついた、その時自分は後ろをふりむき、

「行ってきます。」

 ガラにもなく大きな声をだした。ルイージに届いたかは分からない、でもきっと伝わっただろう。
 決心がついた自分は2つ繋がった土管に入っていった。
2, 1

  

第3跳 かめとくりの夜(前)


 大きな緑の土管に勢いよく入っていった自分は、少し前に言った言葉が心の中で大きくこだましていた。



「行ってきます。」


 いってらっしゃいと言ってくれる人がいる訳ではない、自分は今からその人を助け出しにいくのだから・・・。

 周りを見る限りここは地下らしい、まぁ土管をくぐったら地下以外ないだろうな。
 薄暗く視界が拒まれる

「今敵が襲ってきたらとうてい太刀打ちできないだ・・・」


     ゴツンッッ!!


 顔面に赤いカメの甲羅がぶつかった。あぁ、こうなる事は大体予想はついていた、せめてセリフぐらいは言わせてほしかったな・・・


 目の前にはただ赤。
 ぼくの顔から広がる甲羅の赤。
 最後に思ったのは、一人のこったピーチ姫はどう
 するのだろう、ということだった。
 クリとカメの山の中でただ一人。
 ぼくはピーチ姫が可哀想になった。
 ・・・・・・ビーチ・・・・・・。
第4跳 かめとくりの夜(後)

 ピーチ・・・・・・。 その笑顔・・・、かわいかったよ・・・。
 亀と栗・・・・・・。 一緒の生活・・・、楽しかったよ・・・。
 ルイージ・・・・・・。 ・・・、・・・、・・・、ごめん何もない。

 昔、博多のマコトおじちゃんが言ってたな。
 
            ここから、回想です

「人は死ぬとき、バッタリたおれるとばい、ばってん」
「マコトおじちゃん、何言ってるの?」
「ハハハハハ、まだわからんとですたい」
「マコトおじちゃん、日本語言ってるの?」
「ハハハハハ、何語って、ハハ、ま~ご」
「アッハハハ、マコっさん、勘弁してけらい」
「マコっさん、冗談はやめなあそばせ」
(なんで皆笑ってるんだろう・・・、ぼく何か変なこと言ったかな?)

 この時マリオの心は、すき焼きの時に勢いで大きい肉をとってしまい、べチャッとおとしてしまった時の感じに似ている何かがあった・・・

 
 ・・・はっ、・・・あの時はマコトおじちゃんが何いってたか分かんなかったな・・・、ごめん今も分かんない。
 
 用は死ぬとバッタリたおれっから気ぃつけろよ、と言う事だろう。

 ・・・しかし死んだら倒れると言うが、今・・・、俺・・・、

 空・・・跳んでます・・・。
 
 跳んでると言うより、M字開脚で両手を上げこの世の終わりみたいな顔をして、上にあがっている。このままだと天井のブロックを突き破るぐらいの勢いだ・・・。

 しかし、そううまくは行かなかった。

 ヒューーーーーン、と落ちて行き、そのまま床をすり抜けて落ちて行った・・・。

 すると目の前が真っ暗になり一つの英文が現れた。


                 GAME OVER

 「・・・・・・、ガメオベラっっっ????」
4, 3

  

         第5跳 デュフフフフフフフフ!ゴメンよルイージ


               GAME OVER

 「・・・ ・・・、ガメオベラっっっ????、なに・・・ ・・・、それ・・・ ・・・!?」
 
 周りを見わたすと真っ暗だった、2分ぐらいポヤ~としていると自分の頭の上の方にルイージの顔が見えてくるような気がした。
 
 (・・・ ・・・気のせいだ、「ガメオベラ」なる不思議な暗号が出てきた矢先ルイージの顔なぞ縁起が悪い。)
 「兄さん、兄さん!!!」
 (オレ、アイツの事嫌いなのに・・・、何かアイツオレの事好きすぎるんだよね、なんだっけこう言うの何か違う言葉で言い表せた気がする・・・、えーと、えーと、マザコン?何か違う気がする、・・・ ・・・、ファミコン?、違う、違う、ファ、ファ、ファ・・・)


 「ファルコン!!!」 
 「・・・ ・・・、ヒッ、ヒドイよ兄さぁぁぁぁん」

 
 一方そのころ地上では―――――
 
 「あれ?マリオいなくね、亀氏」
 「そのようでござるな、栗氏」
 「セッシャの甲羅が当たったでござるよ、亀氏、栗氏~」
 「デュフフフフフフフフ!」
 「そんな事より石原サトミ可愛すぎだろ」
 「デュフフフフフフフフ!、異議なし、デュフフフフフフフフ!」
 「待ったでござるよ、赤亀氏、栗氏」
 「何を言うでござるか、亀氏」
 「そうでござるよ、亀氏、石原サトミのかわいさは犯罪級でござるよ」
 「栗氏、確かに石原サトミはかわいい、ただ、堀北マキちゃんの透明感にはかなわないでござるよ!!!」
 「ちっ、ちがうでござるよ亀氏、石原サトミの方が・・・」
 「うぉーーーーーー」
 「どうしたでござるか、赤亀氏」
 「ゴメン、栗氏、セッシャ・・・、小林セイランちゃんの方がイケるでござる!!!!」
 「・・・ ・・・」
 (変態だーーーーーーーーー)
 (ヤバイ、この世界に問題が起きる前に通報せねばいけないでござる!!!)
 (母さん、オレ、変態と会話して、同じ空気すってるよ・・・ ・・・)
 「どっ、どうしたでござるか、亀氏、栗氏」
 「・・・ ・・・、うぅん、いぃんじゃぁないぃぃ」
 「何、マスオさんみたいになってるでござるか、栗氏・・・」
 「・・・ ・・・」
 「・・・ ・・・」
 「栗氏、亀氏・・・ ・・・」
 

 あれから4分後、マリオ達は―――――
 
 「さっきはいきなり兄さんにファルコンて言われて怒っちゃったけど、もう1回顔ださなくちゃ・・・」
 「あれ?ルイージ消えた、幻だからどうでもいいか・・・、まぁもっとも、本当に消えてもどうでもいいんだけどね(笑)」
 「・・・ ・・・ ・・・」
 そこにはこの世の終わりの様な顔をしたルイージがいた。
 「・・・ ・・・ひどいよ・・・ ・・・」     
 「あっ、ルイージ・・・」
 「もっとヒドイよ兄さぁぁぁん」
 「あっ、ゴメンよルイージ、戻ってきておくれーーーーーーーー」


 一方そのころ地上では―――――
 
 「栗氏、亀氏・・・ ・・・」
 「・・・ ・・・、それはそれでありかもしれぬな」
 「ありだと思うでござる」
 「栗氏、亀氏・・・ ・・・」
 「デュフフフフフフフフ!」

 その時クリボーは思った、この世の中は、色々な人がいる。
 それを受け入れてこそ、この世の中は楽しいんだ。

 
 僕は栗、相手は亀。
 だから面白い。
 だから楽しい。

 
 ―――――みんな違ってみんな良い―――――

 この時のクリボーはとてもすがすがしい気持ちだった。
 もう「デュフフフフフフフフ!」などの言葉は心にはなかった。
 クリボーはこの気持ちを忘れない。
 これからもずっと・・・
5

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