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第一章「始祖神編」‐その1

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 昔むかしある所に、丸い水の塊がありました。この大地は後に「地球」と呼ばれる星の事なのですが、その頃にはまだそのような名前はなく、ただ丸い水の塊でした。
 そこに、一人の神様が生まれました。どうやって生まれたかはわかりません。お母さんのお腹からではなく、コウノトリが運んで来たわけでもありません。唐突に、その場に生まれたのです。
 この神様の名は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ 以下:アメノミナカ)と言いました。
 アメノミナカは、男でも女でもありませんでした。
「何それどういう事?」と思われるでしょうが、そうとしか言えません。アレがついてるのに胸が膨らんでるとかそんな感じでしょうね。要するにふたなりです。
 こういった、男とも女ともつかない、つまり性別のない神様の事を、独神(ひとりかみ)と呼びます。
 アメノミナカが「どうすっかなー私もなー」とか思ってると、自分と同じように、またまた神様が生まれました。今度は二人です。
 この二人の神様は、高御産巣日神(たかみむすひのかみ 以下:タガアリ)と神産巣日神(かみむすひのかみ 以下:タガナシ)と言いました。
 三人は、お互いに挨拶をして、丸い水の塊を眺めました。そして、話し合います。
「何これ、水?」
「水じゃね? 知らんけど」
「水だね、でっかい水の塊だね」
「どうすんのこれ、ワケわかんないんだけど」
「いや、そんなん知らんし。私も今ここに出て来たばっかだし、何で出て来たのかも知らんし」
「……じゃあ、何か作る?」
「何かって?」
「いや何かこう……適当になんか浮かせたりとかしてさ、様子見てみない?」
「出来んの、そんな事?」
「いやー、わからん。やってみる?」
 そう言って、アメノミナカがこう、ちょちょいと何かしました。すると、水の塊の表面に、ブヨブヨの何かスライム的なものが浮かび上がりました。
「うわ、出来てるし」
「何でそんな事出来んの?」
「知らないよ」
「じゃあさじゃあさ、同じ感じで私達みたいなのも出来るんじゃないの?」
「えー……やってみる?」
「やろうやろう」
 同じようにすると、何か本当に出来ちゃいました。しかも二人出来ちゃいました。そうして生まれた神様達は、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ 以下:ウマシア)と天之常立神(あめのとこたちのかみ 以下:アメノト)と言いました。
「何で出来るんだよ、マジで」
「知らないし。一番ビビってるの私だし。ひくわー」
「じゃあもう、色々な事はアメノミナカに任せるわ。私(タガナシ)とタガアリは帰る」
「え、マジで? お前ら何しに来たの? 帰るってどこによ?」
「いやー、わからん。まぁ、適当に……」
 こうして、タガアリとタガナシはどっか行きました。そして今後、マジで一切現れる事はありませんでした。
「あ、じゃあ私達も帰ります」と、ウマシアとアメノトが言いました。
「お前ら出来たばっかじゃん。それこそ本当に何しに来たんだよ。さっきも言ったけど、帰るってどこによ?」
「いやー、わかんないっす。まぁ、適当に……」
「お前らそればっかじゃん」
 とか何とか言ってる間に、ウマシアとアメノトはどっか行きました。そして今後、マジで一切現れる事はありませんでした。
「うーわ、一人とか……じゃあ、私も帰るわ」
 そう言って、アメノミナカも帰りました。そして今後、マジで一切現れる事はありませんでした。
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