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第四章「国造り編-彼の名前はオオクニヌシ」-その1

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 オオクニヌシが国造りと浮気に精を出して、しばらくの時が経ちます。
 ある日、オオクニヌシが、いつものように国造りをしていると、海(波)の向こうから、船が流れて来るのが見えました。
 ただし、船と言っても、木の船とか客船とかそういうのではありません。ガガイモです。ガガイモの船が流れて来たのです。例えるなら、海の上に折り紙のツルが浮いているような感じだと思います。
 ガガイモの船には、とってもとっても小さな神様が乗っているようでした。そしてガガイモの船は、遂に出雲に流れ着きます。
 小さな神様が、出雲に降り立ちました。そして、呆然と見つめていたオオクニヌシの前に立って、ペコリと頭を下げました。
「国造りはいいねぇ。国造りは心を潤してくれる。DQN夫妻の生み出した文化の極みだよ。そう感じないか? オオクニヌシ君?」
「僕の名前を?」
「知らない者はないさ。失礼だが、君は自分の立場をもう少しは知ったほうがいいと思うよ」
「そうかな? ……あの、君は?」
「さて、誰でしょう?」
 どうやら意地悪らしい小さな神様は、そう言って軽やかにどこかへ行ってしまいました。
「やなやつ、やなやつ、やなやつ!」
 オオクニヌシは、地団駄を踏みました。そしてムキになって、絶対に今の小さな神様の正体を暴いてやろうと、色々な奴に聞き回ります。

 まず、オオクニヌシは、ヒキガエルに彼の事を問います。
「あの小っちゃい奴、何者なわけ?」
「いや、知らない。そうだなぁ……カカシなら知ってるんじゃないの? アイツ歩けないけど、だからこそずっと世界を見てるから、色々知ってるんだよ」
 ヒキガエルにそう聞いて、オオクニヌシは、今度はカカシに聞きに行きます。気分はすっかりお使いクエストです。
 しかしオオクニヌシは、それほどたらい回しにされる事なく、小さな神様の正体に行き着きました。カカシが、彼の正体を知っていたのです。
「あの小っちゃい奴、何者なわけ?」
「ああ。彼の名前は少名毘古那命(すくなひこなのみこと 以下:スクナヒコナ)だよ。彼は、タガナシ様の子供なんだ」
「えっ? タガナシ様の子供?」
 オオクニヌシは仰天しました。タガナシ様と言えば、自分が兄神様達にゴールドエクスペリエンスレクイエムを喰らってる時に、自分を生き返らせてくれた神様達を派遣してくれた神様です。実際、超偉い神様です。そのタガナシ様の子供だと言うのだから、これは無碍にしていいはずがありません。

 オオクニヌシが正体に行き着いたタイミングを見計らったのか、そこに軽やかにスクナヒコナが現れました。
「やなやつとか言ってごめんね。君のお父さんにはお世話になったんだ」
「父さんは父さんだよ、僕じゃない。僕はただ、君の国造りの手伝いをしようと思って来ただけさ」
「どうして?」
「面白そうだったから、かな。それ以外に理由がいるのかい?」
 オオクニヌシは、スクナヒコナに奇妙な友情を感じます。
「君は、何を話したいんだい?」
「えっ?」
「僕に、聞いて欲しい事があるんだろう?」
「……色々あったんだ、ここに来て。来る前は、お兄ちゃん神達のところに居たんだ。穏やかでなんにもない日々だった。ただ、そこに居るだけの……。でも、それでもよかったんだ。僕には、何もする事が無かったから……」
「国造りが、嫌いなのかい?」
「別に、どうでもよかったんだと思う。ただ……女神は好きだった!」
 オオクニヌシは、「どうしてスクナヒコナ君にこんなこと話すんだろう」と考えます。ただぶっちゃけ、別に今回にかかわらず、オオクニヌシは色んな神様や物に弱音を吐いています。台詞に説得力がありませんね。
 スクナヒコナは、何も言わずに、ただ、オオクニヌシの言葉に頷いていました。そしてしばらくあって、スクナヒコナが、静かに口を開きます。
「僕は、君に逢う為に生まれて来たのかもしれない」

 こうしてスクナヒコナは、オオクニヌシの良き相棒となり、オオクニヌシの国造りの手伝いをします。実際スクナヒコナは敏腕で、これまでオオクニヌシが困難に思っていた事は、スクナヒコナの助言により、驚くほどスムーズに行くようになりました。
 オオクニヌシが辛い時は共に悩み、オオクニヌシが喜ばしい時は共に喜ぶ、言うなれば親友でした。スクナヒコナの存在は、例えるならば、三国志の孔明であり、遊戯王の城之内君であり、ジョジョのツェペリ一族であり、ペルソナ4の陽介であり、ダイの大冒険のポップです。

 かと思えばある日、スクナヒコナは突然、「常世之国(とこしよのくに)に行く」と言い出します。オオクニヌシが止める間もありません。
「ありがとう。君に逢えて嬉しかったよ」
 そう言って、スクナヒコナは、オオクニヌシの前から姿を消します。そして、二度とオオクニヌシと再会する事はありませんでした。
「まったく……最初から最後まで勝手な奴だなぁ、アイツは」
 オオクニヌシは、消えていくスクナヒコナの背中を、最後まで見守り続けました。
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