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第二章

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とうとう来たぜ、
俺様英雄!
「安心しろ、G-Nは絶対俺が守ってやるからな」
長身の男の大剣がガリガリと地面を削る。
「貴様になどその子は守れない」
「我が名はロータス=クラーナ、Bランクの魔法使いだ」
「そして後に最強の魔道士となる者でもあるとでも言っておこうかな 」
「この名は冥府への切手だ。さあ、死ねい!」
刹那、ロータスは大剣を軽々と振るう。
大剣から放たれた強力な衝撃波が冷蔵庫やキッチンを散らす。
食器のたぐいは全て割れ、かろうじて残った金属類も凹んで使い物にならない。
こんな威力の攻撃が人間の脳みそを揺れ動かしたら…。
あまり余計なことを考えていると次の攻撃をかわせない。
追撃の衝撃が飛んでくる。
守りの体勢をとってなんとか生き残れた。
「なにがどうであれ、勝てばよかろうなのだァアァァアァアァアァァァ!!!!!」
剣を構える。
その先には倒れたG-Nがいた。
「やめろ!!!」
反射的にロータスに飛び出した。
「貰った!」
俺は、視界が封じられた。
ロータスは俺に目つぶしを食らわせた。
「兼続君!」
見えない…。痛い…。
俺はその場で暗い空間を倒れた。
「さらばだ、せめて、この大剣で痛みも感じるまもなく、逝ってくれ」
大剣を再び構える。
死の宣告。
「い……いや…」
大剣がその細い首を…。
切れなかった。
男は剣とともに吹っ飛んでいた。
「なっ!?にぃ!」
「音で方向を知り、衝撃を放っただけだ」
彼は、衝撃魔法をコピーしていた。
コピーしても使えるのは三分くらいが限度。
だがこの男を黙らせられるに十分すぎる。
ロータスは剣に命じる。
殺せ、と。
空気が悲鳴を上げ、自分の部屋だった物は完全に廃墟と化している。
衝撃波を衝撃波で相殺する。
人を超えた…力を…、
もっと、
もっと出力を上げられないか…。
「覇!」
ロータスは吹き飛び、ガラスを割って落ちていった。
ちょうどG-Nも起き上がった。
魔方陣を展開し、家中を明るくする。
そして彼女は俺の視力も治癒した。
これが…魔道士の力…。
しかし、彼女の治癒の力は彼の視力だけにとどまった。
「ここは一日で修復できるよ。佐藤君、どこかに泊まりに行こう」
「どさくさに紛れて、名前で呼んだよね、G-Nさん」
「ん?なんのことかな?」
唯一無事だった布団をG-Nにかぶせる。
「夏とはいえ、夜は寒いだろ」
もう暗くなっていた。

案の定、爆発事件として下は大騒ぎだった。
「無事だった人が…」「奇跡だ!」「爆発した部屋の住人が生きてるぞ」「すごい傷…」
警官隊は連続した爆発のため、様子を見て突撃する予定だったらしい。
「あ、あの時の不細工…」
そこには見たことのあるふた結びの女がたっていた。
「秋野か…」
「すごい傷じゃない!!!!!なにがどうしたのよ」
本当のこと…魔道士にやられた…で信じてくれるだろうか。
否、信じるわけがない、過去の俺みたいに…。
「爆発を直接受けてしまった…」
「よく平気だったわね~。ま、私の電撃を受け止めれたのだし当たり前か」
俺をそんな無敵人間みたいに言うなよ…。
「佐藤君…この人だれ?」
「ん、ああ、昼間出会った能力者サマだ」
「ふぅん」
「あと、できればでいいんだけど秋野、一日だけ家貸してくれないか?」
彼女は少しだけ考えて…。
「いいわ、一日だけね」

秋野文香の家はとても広い。
まず、外観からして西洋の屋敷を彷彿させる。
敷地は俺のアパートが何個も入るほどだ。
ありとあらゆる植物が植えられている。
エントランスは高級な赤と金の装飾で、天井までキラキラ。
客室までとても豪華。
しかも驚くことにこれで一人暮らしらしい。
念度8の能力者はここまで凄いのだと確信してしまった。
まるでお嬢様ではないか。
「とりあえずこの服を着てくれない?そこの不細工も猿のようにおそってくるし、さすがの私も恥ずかしいわ」
「おそわねえよ!」
文香は着ている服と同じ水兵服をG-Nに着せる。
これは…めっちゃ可愛いやんけ!
俺は貧血で倒れた。

―助けて―

―殺される―

―もうすぐそこに―

―来てる!!!!!!!!!!!!―

突然目が覚めた。
壁に埋め込まれているデジタル時計には午前二時。
何かいやな予感がする。
ランタンに火を付けて持って行く。
エントランスに出る。
正面の扉が開いていた。
明かりを消した。
そこに人影が一つ。
「私はSランクの魔術師、名はライル」
Sランク。魔術を知らない者でもわかる強さだ。
夕暮れの男とは明らかに雰囲気が違っていた。
「一つ問おう」
氷のように冷たき女の声。
「彼女はどこにいる」
ここにいることは知っている…。
もう、逃げられない。
「答えないのなら、ここ全てを爆破する」
「やめろ!ここには…俺の友達もいるんだ!」
「では、答えよ」
ヒュンという風切り音とともに何かが飛んでくる。
その何かは手すりや天井だけではなく、空気、つまり空間ごと切り裂いていた。
「次は当てますよ?」
「俺が問いたい、なぜ彼女をしつこく狙うんだ」
「あなたには、関係ねエエエエェェェッ!!!!」
床にありったけの魔方陣を張る。
そうして明るくなって姿を見せた。
青と黄色が基調のローブを纏う黒髪ショートの長身の女だ。
歳は20くらいにみえる。
その魔方陣が起動し、エントランスは無数の線で切り裂かれる。
天井が…崩れる。
シャンデリアが切り落とされ、地上で爆発、炎上した。
その崩れる惨状の中、女はつぶやいていた。
飛び起きた二人もやってきた。
「何が起きてるのよ…不細工!」
「まってよ能力者!」
だ…め…だ…今来ては…。
「来るな!!!!!」
「え???」
G-Nが、見えない手に引かれるように空を舞った。
や…め…ろ…。
ライルが瓦礫の中から重力魔術を使い、飛ばせた。
無数の魔方陣が彼女の周りを囲む。
そして、ドイツ語の詠唱を始める…。
彼女はこっちを見て、笑いながら口を動かした。

―ありがとう―

「諦めるなよッ!」
秋野文香が強力な電撃で魔方陣を消していた。
原理はよくわからないがとても強い力で魔方陣は壊せる。
ライルは慌てた様子で次の魔法を詠唱した。
しかし、遅い。
俺は、とっさに懐に潜り込んで殴り飛ばした。
瓦礫の上をゴロゴロと転がっていく。
重力魔術が解かれ、G-N地球重力に従って落ちる。
それを、文香は優しい電磁力で受け止めた。
そして、完全に地上に降りたことを理解すると、G-Nは人差し指で文香の額を触れた。
文香は事件に関する記憶を消され、倒れたのだった。

さて、話を聞くとしようか。
「なぜ、彼女をしつこく追って殺そうとする」
「失敗作だから…そうとしか聞かされていない」
「彼女が失敗作だと!?ふざけるのも大概にしろ!!!!!」
彼女は…俺と一緒に過ごして楽しそうに笑ってた。
「彼女は戦闘用に作られたホムンクルス。感情を持たないはずだった」
「だけど彼女、いや、Gブロックは全員持ってしまった。なぜ感情を持ったのは聞かされていないけど悲運だったでしょうね」
「だからって…殺すわけには…」
ライルの目から涙が落ちる。
「殺さないと…魔法が暴走したとき、こちらにも被害がでちゃう…」
「そうならないために殺処分してきたのよ、彼らは」
「彼ら…とは…」
「ホムンクルス工場、とある寒い地域に存在する…一つの工場」
「あとは教えてあげられない…。情報もない。もう会うこともないでしょう」
満月をバックに、彼女は飛び立った。
「幸せにしてあげて」
そう言い残していった。
9, 8

  

朝、修復した自分の家にいた。
昨日は派手にやってしまった。
秋野の財力は侮れないけどアレはアレで泣き叫んでいただろうな。
とりあえずベッドに寝ているG-Nを起こす。
「ほら、風呂だ」
「わーいわーい」
なんか、変になってないか?
そんな些細な違和感はすぐに消えた。
とりあえず旅の支度だ。
「ひえ~っ!なめくじ~!」
突然バスタオルを纏っただけの半裸の少女が飛び出した。
「たすけてたすけて~っ!」
滑って倒れた。
俺は顔を真っ赤にした。
これは…見えてる…。
珍しく彼女は顔を赤くした。
本当に人間らしくなった…というか…人間そのものに見える。
「見ないでよぅ…」
「可愛いな」
彼女はバッグに目を付けた。
「どこかいくの?」
「ん…どこでもいいだろ?」
「だめ!私もいくんだから!」
「…。奴らの工場に…」
「…」
それなりの重さを感じていた。
「一人はだめ…」
抱きしめられた。
「一人じゃ…死ぬときも寂しいから…」
「じゃあ、一緒に逝こうか」
「うん!」
朝焼けに染まる街、夏休みと言うことで人は少ないが屋根の上を走れば目立つ。
そう、道なりに進む。
工場までは最低でも一日かかるみたいだ。
急がないと、彼女の仲間が殺される。
いや、兵器になってしまう…。
手遅れになる前に、つかなくては…。
今、夢を守る彼らの冒険が始まる!

電車を何本も乗り継ぎ、歩き、たどり着いた。
夏でも雪が降っている極寒の土地。
そこにあったものは…。
禍々しい黒煙を吹き出す工場。
「ひどい臭い…」
地下に続くはしごを見つけた。
「ココが入り口だな…」
内部、機械とパイプと金属と電線とモニターが混ざっている空間。
そこにはパイプの手足が生えた銀色の筒型ロボットと、掌サイズのホムンクルスの失敗作がいる。
ホムンクルスの失敗作はロボットにつぶされ、ロボットは黙々と仕事をする。
つぶされるたびに青色の液体が飛び散る。
そこにあるのは狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気。
狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気。
狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気狂気。
「誰なんだよ…ツクった人は」
奥に進む。
「いたっ」
G-Nは倒れる。
ガラスの破片で足を怪我したみたいだ。
とりあえず背負っていくしかないな。
「わーたかーい」
「落ちるなよ」
細いゴム製の道に刺しあたる。
壁はパズルのようなタイルでできていて…謎の子供っぽさを見せる。
『ビーッビーッビーッ』
強い警告音が工場を障る。
「見つかった!」
「正面から来たのに見つからなかった方が不思議だよ…」
ゴム製の道が動く。
ベルトコンベヤーだ!
先の扉が遠ざかる。
さらに、後ろからはピコピコハンマーを持ったロボットが近づく。
「走って!佐藤君!!!!!!」
走っても…走っても…扉にたどり着けない。
後ろからハンマーが近づく。
木箱が前から流れてくる。
それを避けて進む。
その木箱は、ハンマーに砕かれる。
「ピコピコハンマーで…あの威力かよ…」
「くるぞ!」
ドドドドドドドドドドドドドドド。
ハンマーがベルトコンベヤーすらも壊してく。
「うわああああああああああああああああ」
彼らの運命は…。
11, 10

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