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エルフの里へ

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「なあ、リュキ。この剣やるよ」
「え、いいの?」
「うん」
「でもちょっと気持ち悪いな」
「おまえはまたそういうひどいことをいって」
 よくないぞ。
「俺よりお前が持ってた方がいいだろ、たぶん」
「そっか・・・・ありがとう王子。じゃ、もらうね」
「ああ」
 俺はリュキに剣を渡した。
「ぶっちゃけ、オレって剣とか向いてない気がするんだよね」
「気づいちゃったかー」
「まあね」
 だから、俺より向いてるやつが剣を持ったほうがいいと思うんだ。
「それよりノリム、これからどうする?」
 オレンジ魔導士に顔をむけると、彼女は少し考え込んだ。
「わからない・・これほどまで遠くに来たことは私にもない」
「そっか・・・」
 仲間を集めるはずだったのに、全然だめだしなあ。
 バリュウもいなくなってしまった。
 これはひょっとして、俺には王の器がないということなのだろうか。
 天が俺を、見放したのか・・・
「大丈夫だよ、王子! きっとなにもかもがうまくいく日が来るって!」
「そうかなー」
 そんな気がしてこないでござるよ。
「元気を出すのは王族の義務」
「むちゃくちゃいってんなノリム」
「真実」
 これは手厳しい。
 俺はため息をついた。
「ま、仕方ないな。とりあえず、街を出よう」
「その前に、装備を整えない?」
「いいよ」
 市場で軽く買い物をしてから、俺たちは街の外へ出た。
「なんかいい風が吹いてるな」
「このあたりは、精霊王が治めている。だからいい風がふく」
「精霊王? 聞いたことないな。どこの国の王なんだ?」
「国ではない。精霊王は世界を治めている」
「そんなすごいやつがいるのか・・」
「世界は政治だけがすべてじゃない。いずれ王子にも、そういうことを分かってほしかった。でも王子は廃位された」
「うん・・・」
「時代は、王子にいい風をくれなかった。でもそれを、恨んではいけない」
「そうだな・・・・」
「むずかしいことはいいって!」リュキがどーんと俺を突き飛ばしてくる。
「いまは、生き延びることを考えようよ!」
「ま、なんにせよ、死ぬよりはマシだものな」
「そうそう! 前向きにいこうよ、前向きに」
「おう!」
 そうだ、俺はいつか、自分の国を取り戻すんだ。
 俺の王国を・・・
「で、これからどうする?」
「そうだな、ひとまずは、エルフの協力をとりつけたい」
「エルフ?」
「そう。彼らは優しいから、きっと俺たちを助けてくれるはずだ」
「なるほど」
「それなら、まずはエルフがたくさんいるデニミルの森へいこう」とノリムが言い出した。
「ここから南東にまっすぐ。とにかく、いいところだよ」
「わかった! そうしよう!」
 俺たちはエルフの里を目指して旅立った。
 少しでも長く、足を進めようと心得ながら。




「さあいくぞ! うおーっ!」
 俺は森を突き抜けて、探索を進めた。
 でもないわ~~~エルフの里とか。
 それどころかなんかツルとかツタとかモンスターとかいっぱいで、とてもきれいなエルフに出会いそうな予感がしないんですけど。
「ほんとにこんなとこにエルフなんかいんの?」
「王子、文句が多いよ! そんなこといってたらエルフが引っ越しちゃうよ!」
「そんなガバガバな感じなん?」
「・・・王子」
 ノリムが袖を引っ張ってきた。
「どうした、ノリム?」
「なにか気配を感じる」
「なんだって? マジか。どのへん?」
「あっち」
 見ると、確かに宮殿の柱のようなものが森の中に見えている。
「ノリムさん視認したんじゃん」
「そうともいう」
「気配とかなんの話だったんだよ」
 まあいいや。たぶんあそこでしょ。
 俺たちはその宮殿へと足を踏み入れた。
「ゆーめーじゃーない あれもこーれもー」
「なにその歌?」
「わかんね。てかなんか金色だなー。けばいぞこの宮殿」
 成金かあ?
「・・・・けばいとはお言葉ですね」
「なにやつ!」
 振り返ると、そこには青色のローブを着た緑髪のエルフがいた。耳とんがってる。
「あなたですか、モドル王国の王子キャッシュというのは」
「そうらしいよ」
「ふざけたかたですね・・・こちらへどうぞ」
「女王さまのところに案内してくれるの?」
「・・・・わたしがエルフの女王アドネアです」
「あっ」
 女王さま、怒ってる! めんごめんご~
「そんなに気にやむなよペチャパイ」
「ぶちころしますよ」
「てへぺろ~」
「・・・・王子、ふるいよ」
 なんでだよリュキ。これ新ネタなんだけど。まあいいや。
 俺たちはアドネアの案内でエルフの王座の前に案内された。
「ようこそ。エルフの里へ。用件はわかっています」
「そうか、金貸してくれ!」
「・・・・まあ、そういう用件でないとも言えませんが・・・つまり、クルシュア王子に対抗する力が欲しい、ということではないんですか? 彼の支配する王国・・・いえ、いまでは帝国となったあの国を倒すために」
「そうそう、そんなかんじ~」
「・・・モドルではそんなかんじで、外交をまとめるのですか?」
「ごちゃごちゃ言ったって仕方あるめぇ」
 俺はリュキから聖剣エキドナを返してもらって、女王さまの前に突きつけた。
「俺は、俺の国を取り戻す! だから金貸してくれ!」
「・・・金というより、兵なのでは?」
「そうともいう。とにかくくれ! あと腹減ったからメシな。それからもう遅いから泊めてくれ」
「・・・・・」
「あ、怒った?」
「当たり前だよ王子!」リュキが俺を蹴り飛ばして我が高貴な頭を踏んできた。
「女王さまにあんな失礼なことを! いますぐバラバラにして女王さまの供物にしてやる!」
「おまえまだなんかへんなのに操られてない?」
 文明人の発言じゃねーよ。
「・・・リュキ、と申しましたか」
「は、はい!」青髪の美少女(?)剣士はなぜか敬礼した。軍属ちゃうやろ。
「キャッシュ王子を解放してあげてください」
「そ、そんな! こんな無礼者を見逃すというのですか!」
「きみはだれの従者かな?」俺はなんとか頭をバカ女の足から抜こうとしたが全然とれねぇ。つーか髪抜けた。ころす。
「・・・王、とは、とびぬけたもののことを言います。それは優れたものでもなければ、強いものでもない・・・・そんなものに、それだけのものに、王になることはできません。王の資格とは・・・器」
「うつわ・・・」
「キャッシュ王子には、それがあると見ました」
 エルフの女王は立ち上がり、錫杖で俺の頭を突いた。
「あなたに、我がエルフの軍勢をお貸ししましょう。
 ・・・・・ロハでね」
「マジかよ」
 そういうわけで。
 俺はエルフの軍勢を手に入れたのだった。
 ・・・・・これでやっと、国に戻れるぜ!
 そして、待っているのは・・・クルシュラ!
 幼馴染のあいつを、俺の手で・・・
 倒す!!!!!!!!!!!!!!!!!






11, 10

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