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33 Sunday Driver

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 ストームキープで数百年間止まっていた嵐を再開させた魔導師がいたというニュースを聞いた。なぜそんな面倒なことをするのかマリアには分からなかった。どうやら観光業にいい影響が及ぶので地元の人間は喜んでいるらしい。ストームキープは地上だけではなく上へ成長し続ける都市で、遥か最上部の鐘楼付近に吹き荒れていた嵐は三百年前、朧月の年代に突如原因不明で停止。凶兆だと騒がれたが何事もなく、しかし名物が減って地元の人間はがっかりしたそうだ。
 ジャックと大学で食事しているときにその話をすると、彼女は、それを成し遂げたのは有名な〈サンデードライバー〉=アマチュアの魔物狩りであり、現在この街に来ているらしい、という情報をくれた。まるで、かつてこの大陸に専業の魔物狩りが現れる前にいた冒険者たちのようだ、とジャックは言った。これまで東から来たということ以外謎に包まれていたジャックだが、ここに来て、自分は冒険者の末裔であると言った。つまりは、大公国の人間ということだ。
 帝都から黎明海峡を挟んで東、ザザの北にあるエングは、冒険者が築いた国として知られている。今日でも巨大企業ではなく、個人経営の冒険者が生き残っている唯一の土地と言ってもいい。同時に、グラニスクとザザ、帝国の文化が交じり合う交流点でもある。
「そこからなんでここに来たの?」
「魔法を学んでいたのですがあまり面白くないので就職することにしたのです。最初に働いたのは帝都の、ブロブを薬で溶かす仕事で、つまらないのでやめて西へずっと来ました」
「ああ。それこそ遁走王さながらの」
「つまらない逃避行でした」
「ここから先、まだ西へ行くの?」
「考えうることです」
 ジャックは謎だ。退屈するのが義務であるかのようにそうする。

 この日、奇怪な現象が発生した。発生した〈夕立屋〉たちが、自らロウサウンドを離れて飛び去ったのだ。同時に都市の中心部、そこだけ廃墟と化し、瓦礫に植物が繁茂する十三番放棄地区で一人の少女が目撃された。〈夕立屋〉は全て去ったのに、恐るべき勢いの驟雨が降り注ぐ中、しかし傘を差す彼女の上空だけはぽっかりと、雲に穴が開き晴れていたという。
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