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丙武

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 丙武(へい たけし)
 使用・改変は全て自由。作者的には自由だが、決して社会的には自由ではないかもしれないということは念頭に置いてもらいたい。越えちゃいけない一線、考えろよ。
 ちなみに乙家にいる乙文とは、士官大学で秘かにライバル関係だった。

 五体満足で名家(ただし、丙家と言っても末流ではあるが)に生まれた彼は、優秀な成績で士官大学へ入学、優秀な成績で卒業した。
 そんな彼に、ついにアルフヘイムとの全面戦争(通称:亜骨戦争)における出征命令が下る。厳しい訓練を終えて、少尉として任地に赴任しようとするも、途中で乗っていた艦船が人魚の自爆機雷によってあっけなく沈没。運よく近場を友軍艦隊が通りがかったため、なんとか一命をとりとめた。
 そんな不幸にもめげず、彼は任地に到着するとすぐに任務に取りかかるが、そこを決定的な不幸が襲った。アルフヘイム側の魔導砲が炸裂、両腕両足が吹っ飛ぶ重傷を負ってしまう。幸いにも、近くを通りかかった空挺師団の爆撃飛空船によって、その場の敵は撃退され、迅速な救助で一命をとりとめるも、彼の短い一回目の任務は、これで残酷にも終わりとなった。
 早速本国に帰ると、彼に待っていたのは差別と辛いリハビリだった。
 機械の義肢という代替手段があるものの、四肢全てを一度に機械化するのは無謀だった。
 まずは利き腕から義肢をつけていき、一本一本手足を使いこなせるようになっていった。
 辛く長いリハビリに数年を要したが、その間にほとんど以前と変わらない身体機能を取り戻していた。
 だが、この機械義肢の代償は経済的にも高かった。四本すべてを機械化する費用により家財が傾き、名家は落ちぶれた。丙武の看病を必死になってこなした母親は、心労と疲労によってちょっとボケはじめ、下着を取られただのと妄想の話をときどきするようになる。丙武はこれらも全てアルフヘイムの耳クソエルフのせいだと思い込むようになり、その復讐のために再度軍に復帰、最前線の任地を志願した。
 二回目の出征では、特例中の特例として3階級特進の少佐として任地に降り立った丙武だが、すでに中身は別人と化していた。
 手始めに、降伏に応じない亜人への見せしめとして、そこら辺の亜人たちを無差別に捕えては手足を全て切り落としてダルマにするという蛮行を犯すようになる。
 軍団指揮も苛烈を極めたが、それゆえに兵士は勇猛に戦った。何より、指揮官こそがあらゆる苦痛に耐えて戦場に立っていることを、兵士たちは知っていたのだ。
 そんな丙武は、亜人たちから「手足慈悲なし将軍」「手足おいてけ妖怪」「ダルマ職人人」など、様々な通称で恐れられることになる。そうやって切り落とした手足を、自らの軍用車両に飾り付けた。もちろん、取られた分を取り返すという意味もあった。
 こうやって亜人たちにおそれられた指揮官となった丙武は、やがて甲国軍からも浮いた存在になってしまう。あまりの残虐性、復讐心から、すでに軍全体の戦略とは別の行動を取るようになってきたのだ。だが、兵たちからの信頼は厚い。家財を傾けてまで手足を機械化し、戦場に舞い戻った英雄とされたからだ。それに後背地で命令を飛ばすだけの司令官とは違い、積極的に前線に出て戦う姿も人気の秘訣の一つだった。
 武器の開発にも関わり、リボルバー式ショットガンの「マッシャー」(すり潰す者)を作っている。と言っても、これは原案だけ出して設計は専門の兵器課に任せたのだろうが、アルフヘイムでの戦闘に適していた。強力なストッピングパワーで亜人の跳躍力をも相殺し、もし手足に銃弾が命中したなら確実にすり潰されて吹っ飛んでしまうだろう。森林での遭遇戦を考慮し、連発性もある程度確保、装填時間も従来のポンプアクションより短くてすむという優れものである。欠点としては、リボルバー部分の精密部品に強力な反動がかかるため、高価なミスリル鋼を使わなくてはならない、ということくらいだろうか。
 とにかく、丙武は独断である都市を攻め、見事にこれを陥とした。しかし、その後がまずかった。
 住民の亜人たちのうち、高価で売れそうな者は奴隷として売り払い、残りは全て両手足を切り落としてダルマにしたのちに集団で強姦するという、甲国軍史上まれにみる暴挙に手を染めてしまう。切り取った手足は城壁前に積み上げられ、それは城壁よりも高くなったという。数十万人の虐殺と言われているが、これは後の禁断魔法のために情報が錯綜し、資料が残っていないゆえの誇張であろう。指揮していた軍団の規模から察するに、せいぜい数万程度ではないだろうか。
 ちなみに、このときに亜人を売りとばした先はSHWとも言われているが、真相は定かではない。噂ではSHWのボルトリックの元へ売られたというが、もちろん証拠はなく、今となってはもはや誰にも分からない。
 今回の事件でついに甲国軍上層部も動き出した。数々の軍令違反、命令違反、軍法違反によって本国へ召還され、軍法会議にかけられることが決定する。最終的に今までの不幸な経緯、優秀な弁護士、上層部への賄賂、人脈、そして軍功に訴えた結果、軽い謹慎で済んでしまう。これには甲国側の根強い亜人への差別意識があったことももちろんだが、本国のマスコミが丙武を悲劇の英雄として持ち上げ、民衆がそれに扇動されたことも大きい。軍団内からも、無罪を求める兵士たちの署名と嘆願書が届いていた。
 ともあれ、今度は幸運にも助けられて虎口を脱するも、住民を売って儲けた金は、この時の裁判騒動で全て消費されてしまう。一部の説では、この時に儲けた金の一部を金塊にして、アルフヘイムのどこかに埋めたのではないか、とも、SHWのカンパニーア国立銀行(いかなる預金でも預かる、この世界のスイス銀行的存在)に預けていたのだとも言われるが、これも真相は定かではない。
 そして謹慎中に幸か不幸か、くだんの「エルフの禁断魔法」によってアルフヘイムの国土3分の一と、甲国軍の過半が消え去り、戦争は去った。もちろん、あのまま従軍を続けていたら、おそらく丙武は禁断魔法で戦死した可能性が高い。そうなったときには体は一瞬で蒸発し、今度残るのは黒こげになった機械四肢だけになっただろう。
 戦争終結からミシュガルド出現までの間に、おそらく科学と機械を信奉する宗教に入信している。
 さらに自伝的本を出版した。これは、戦争で傷を負った兵士の魂の再生という観点で書かれており、科学の素晴らしさを褒め称えてもいる。自らがなした残虐行為は全くなかったことにされている。また、最後は一見して平和主義的なムードで締めくくられているが、これは本心ではなく、当時の厭戦的世論に配慮しただけだろう。
 だが、これは傷痍軍人を中心に支持され、当時のベストセラーになる。思わぬ収入でほくそ笑む丙武だが、このままでは先細りは必定だった。機械義肢の維持費も、四肢全てとなるとバカにならなかった。
 そんな中現れたミシュガルド大陸に、丙武の心は躍った。新天地なら、自らの戦争の技能を生かせるだろう。また、禁断魔法によるアルフヘイムの焦土化は、皮肉にも新たな戦乱の肥沃な土壌となった。というのも、焦土化した地域は穀倉地帯であり、この戦争以後、急激な食料品価格の上昇によって、国民の不満は頂点に達したからだ。
 甲皇国はその時、穏健派の乙家が主導権を握っており、戦争による解決の代わりとしてミシュガルドへの移住を奨励したため、少なからざる国民がそれに応じて新天地ミシュガルドへ旅立った。当然、その中に丙武の姿もあったことは間違いない。このとき、一人ではなく、同じく義肢をつけた傷痍軍人を率いていった。食料品の上昇は急激なインフレももたらしており、義肢の維持費もかさむ彼らにとって、とてもではないが傷痍軍人年金だけでは生きていけないからである。
 裏ではホロヴィズの招聘があったとも言われるが、これも確かなことは何も分からない。ただ、後の状況から察するに、可能性は大いにある。
 こうして、悪鬼は世に放たれた。
 そして今、ミシュガルドで、越えちゃいけない一線で反復横跳びをするような、危険な冒険が始まろうとしていた……

 口癖とか……「ダルマが助走してグーで殴るレベル」「越えちゃいけない一線、考えろよ」「俺の右手が真っ赤に唸る! エルフを殺せととどろき叫ぶ!」(右手を股間に言い換えるのは可) 「亜人ハンターズ、ついに連載開始! これから気味悪い悪の亜人をやっつける仕事がはじまりま~す☆ To Be Jenoside」「亜人って色んな種類があるけど、みんな違ってみんなキモイよね」
21, 20

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