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9月14日更新ニノベ作品感想

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■9月14日更新のニノベ作品感想


 作品更新数:11作品(そのうち1作は次作品のため感想なし)

 昼間の時点では2作品と少なく不安に思っていたのですが、文芸作家は夏休みの宿題を最後までやらないタイプの方が多いのかギリギリになっていくつもねじ込まれてきた! なんてことだ! おかげで想定とほぼ同じ10作品の感想を書くことになってしまった!
 自作品を除くと、新作が3つに連載が7つ。顔ぶれも実力派揃いと堂々たるものです。みなさん今流行りの作家さんばかり。これらの感想を同時に書けるとはなんて贅沢であることか。
 さて感想ですが、以下の点だけご注意お願いします。
 ・感想を書く順番は更新された順。
 ・感想を上げる前に更新したものは感想を書かない。
 ・↑の場合でも、申告があれば感想を書く。
 申告はコメント欄やTwitterなどでよろしくお願いします。
 それでは気になる更新作品リスト。(表記は更新順)

「天使の喇叭」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18326
「仮面セーラー」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18270
「ゼロの海鷲」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18316
「俺のセクサロイドがヤラせてくれない」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18329
「素晴らしき世界」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18040
「愛と笑いの夜」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17738
「赤い悪魔と魔法使い殺し」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18118
「白昼夢のリップハンター」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18244
「イニシャルコード」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18331
「落ちこぼれの魔術士戦線」(自作品のため感想はなし)
「Bro.com!」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=13886

 手順ですが、まずはこの内の前半5作品の感想を書き、ラジオを行った後にageます。そしてそれから後半戦という形式になります。なのでラジオもage更新も2回ですね。
 というわけでひとまずは「天使の喇叭」「仮面セーラー」「ゼロの海鷲」「俺のセクサロイドがヤラせてくれない」「素晴らしき世界」の5作品の感想を書きます。結構辛口なところもあったりするのでくじけないでね。
 最初の感想更新予定日は今のところ17日を考えています。
「天使の喇叭」 作者:薄暮時

【第一印象】
 どこか異界の匂いがする短編。どこからともなく聞こえてくる美しい音――それは赤ん坊の泣き声。それを耳にしながら、主人公と、その傍らにいる男は何を思うのか。そういう話。
 あまり詳しくはないのですが、こういうものをSFって言うんでしょうか? 赤ん坊の声が楽器として高く売れる。そんな部分に僕なりのサイエンス・フィクションを感じました。
 短編ですので感想も短くなります。ご容赦ください。

【ストーリー】
 映画館に行く主人公と男。途中で天使の歌声が聞こえる。映画を見る。喋れないといったが、本当は喋れる主人公。男は主人公のもとを離れるが、「私」はそれを追えない話。
 短編というよりは掌編で、話の流れが断続的、どこかノスタルジーな雰囲気。美しい泣き声を持つ赤ん坊が生まれ、その美しさに誰も助けようとせず赤ん坊は死んでしまったり、時には楽器として売られることもある、と。短い文章の中に、色んな場面を想像させられる要素が盛り込まれている。オチも秀逸で、主人公は彼を求めようとするが、それは赤ん坊と同じだと踏みとどまってしまう。最後に轟いた滅びの音。それは赤ん坊のものなのか、世界が崩れ落ちたということは、主人公の泣き声だったのか――?
 そういう真相が明らかでなく想像の余地があるのが短編、もとい掌編のいいところ。本作でもそれを十分に堪能できた。無駄な部分が一切ない洗練された話作りと言って差し支えない。スタンディングオベーションを捧げたい。

【キャラクター】
 話せることを偽っていた私と、それを薄々気付いていながら(?)も付き合っていた彼。なによりも天使の歌声が強いアクセントになっていて、それを交えながらキャラクターを描くことで普遍的な人物づくりとは一線を画しているように見える。声を上げられない私。それから離れていく彼。歌声の存在。うまく言葉が見つからないが、おもわず感嘆してしまう小説を読んだ時はだいたいそうなってしまうのだ。ゆえに何を書いていいのか分からなくなってしまった。不覚。

【オリジナリティー】
 赤ん坊の声が美しく、売り物にもされるという点。生後間もない赤ん坊が見世物にされるという点が独自の世界観を如実に表している。想像の余地は多い。

【文章力】
 総じて高い。正直な話、突っ込むべき点はないように思える。それどころか「美しき生誕の産声は、同時に終わりを知らせる黙示録の緒言だ」「小さな世界が崩れて落ちる」と言ったキレのある一文のおかげでとにかくもうブラボーと拍手をする他の行動ができない。非常に流麗な表現力を持っていて、言葉選びがとにかく素晴らしい。売り言葉に買い言葉ならぬ、褒め言葉に称え言葉状態になってしまっているが、それだけ完成されてしまっているのだ。この切り取られた一端のフィルム、どこにも直すべき点は見当たらない! 強いて言えば、少しばかり淡白すぎるような気も?

【総括】
 というわけで総じて高い評価となった同作品、正直に申し上げると僕程度ではどこをどうすればいいとかいう指摘が思いつかない。薄暮時先生、只者ではない。ただ、ボリューム的に考えると短編ではなく掌編なので、もっと分量の多い作品を読んでみたい。そうなれば突出している点、書けている点も見えてくると思います。短編集とのことなので、これからもまた練度の高い作品を上げてくださるに違いない。楽しみにしています。
 まずい、本当に褒め称えるだけになってしまった……感想だからいいか。
122, 121

  

「仮面セーラー」 作者:崩砂糖
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18270

【第一印象】
 ヒーローに憧れる女中学生が四方八方に八面六臂の大活躍……というわけにもいかず、悩みながらも事件を解決していく。タイトルは決して目を引くものではないが、仮面セーラーだとどうしても仮面ライダーよりも仮面レスラーを想起してしまう。かといってセーラー仮面だとすでに話題に上がっている通り月に変わってお仕置きしかねない。つまり主人公は女の子。
 はじめの方の文章で主人公・緑十字那由多のキャラクターがよく分かるので、つかみはバッチリといったところです。確かに中三の夏でこんなことをしているのは正直マズイ。那由多は仮面セーラーとして名を馳せていくのか、それとも一般的な女子高生になってしまうのか?
 僕個人としてはどちらもアリです。

【ストーリー】
 基本的には那由多が事件のことを知り、捜査して解決していくという流れ。エピソードが独立しているようなので長編というよりかは短編集のように読むといいか。学校生活の中で起こる事件を解決……どことなく「私、気になります!」と言う少女だとか小市民を目指す二人組が出てきそうな雰囲気。ヒーロー活動を続ける那由多に、茶々を入れる後輩の黒嶋、常連である保健室の保健医、桃井。その三人の雑談に誰かが加わったり加わらなかったりしながら七色の時間は過ぎていく。もちろん登場人物の苗字には色の名前。つまりそういうことだ!(何が)
 典型的な勧善懲悪ではないというのが印象的。那由多の言う通り七色市はおしなべて平和的な街で事件は少ない。夏休み中街中を闊歩してもそれらしい事件ひとつなかったというのだからよほどなんだろう。だから那由多は自ら事件はないかと動きまわり、その結果なんとか事件にありついてヒーローとしての面目躍如を果たしているように見える。
 その裏で動くのは思春期の心。このまま突き進みたいという魂を時折邪魔する、もしも普通に過ごしていたらという思い。那由多は賢いからそういうことは分かっている。でも自分はヒーローで在り続けたい。今後那由多がどんなことに出会い、どんな壁にぶつかるか楽しみです。今後予想される展開としては、校内で何か大事が起こるか、那由多関連の人間が事件を起こすか。もしそうなった時、近しい人物が容疑者と断定できた時、那由多はどうするのか。いやそうなることが決まったわけじゃないんですが。
 話の作り方は非常に上手い。「おや?」となって先を読みたくなる部分(自演を疑うところなど)が多い。さすがは手練、崩砂糖先生である。ところで同先生の名前はどう読むべき? ほうざとう? ブロークンシュガー? 謎。
 まだ始まったばかりなので、ストーリーの起伏に関しては何も言えない。重箱の隅をつつくとすれば見せたい場面がどの辺りなのか判然としないところか。エピソード2で書きたかった場面はまどかの部屋での対面か、それとも後日ふたりきりの場面か。両方か。省略すべきところは省略できているので、あとはキモのシーンをもう少し長くとってもいいかなと思う。謎を解決する場面は読者も楽しんで読んでるだろうから長いとかダレるとか考える必要はない。今は全体的にバランスが良すぎるという感じはあるので、もっと突出した物があってもいいと考える。
 あと、夏休みという無限大の可能性を秘めたシチュエーションにおいて、何も事件が起こらなかったというのが、どうにももったいなく思えた。
 なんか、もっとこう、落とし所があったのではないか。那由多に憧れる男子生徒とのデートをセッティングされてしまうとか、街中で見知った人物に遭遇するとか。普遍的すぎて避けたとも取れるが、四〇日も休みがあれば事件が起こらない日なんてありえないはずだ。なんにせよジャンルが思春期のジレンマなのだから、そういうことを想起させるイベントがもっとあって欲しい。ちょっとそこが非現実的。個人的にはいくつか小話を挟んで、夏休みに大事件を起こして欲しかったと思っている。ストーリーそのものだけで評価するとややマイナス。話作りのためだけに何も「起こそうとしなかった」印象がある。

【キャラクター】
 那由多のキャラが良い。女の子でヒーローに憧れる主人公。そんな女の子がいないというわけではないが主役を張るというのは結構珍しい。ラノベは基本的に男主人公だから、女子が主人公だとライトノベルというより、ライト寄りの大衆向けエンターテイメント一般小説という位置づけに本作はあると思う。異能が出てくるわけでもないからね。やはり主役格にこういうぶっ飛んだキャラクターが居るのは大事。その存在自体が物語を引っ張ってくれる。ただ暴走し過ぎるといけないのでその辺りは注意してもらいたいところ。
 女房役(?)の黒嶋もサボリ魔という情報しか出てないが、サボるのにも込み入った事情があるらしく、その謎が読者の興味を引く。こういう情報の入れ方が上手い。読者はその謎が事件に関わっていると思ってしまい、難なくレッドヘリングに引っかかる。ぶっちゃけた話、僕も騙された一人だった。いやーまさかあそこでああなるとは。
 教師陣の存在感は希薄。まだ事件に関わったりはしてない。ただ七色というところから考えると、赤瀬、青垣あたりは少し匂う。あまり憶測で物を言って核心をついてしまってはいけないので言及は控えますが、そういう推理ができるのもいいところ。もしかしたらそれ自体がまたミスリードかもしれないし。くう、狡猾。
 最近出てきた幼なじみもどことなく薄幸オーラを出している。今回は彼女が事件の被害者となるか、はたまた加害者となるか。そしてレズ展開はあるのか。次が楽しみです。

【オリジナリティー】
 話自体は至ってシンプル、王道でありステレオタイプでもある。ならば普遍的な話に色付けをしていけるのはキャラクターだ。背景に真新しい物がないだけに、キャラクターの独自性というのは大事になってくる。前述した通り、学生が学校生活の中で事件に遭遇し探偵じみて事件を解決へ導くというのはよくある学園ミステリの形態だ。同作品もおそらくは同じ道をたどっている。住み分けするなら登場人物の個性、事件の意外性などが大事になってくる。
 今アクセントとなっているのはヒーローになろうとするが空回りする少女・那由多と何故かサボり続ける男子生徒・黒嶋程度。残りの登場人物に特別珍しい物はない。ネタバレにはなるが、まどかが本気で那由多に心酔したらそれはそれで面白かったと思う。
 再三言うがジャンルは思春期のジレンマ。中学生という役柄もあってか、どこかの砂糖菓子小説が頭をよぎったりする。そう思ってしまう以上、やはりオリジナリティーを出すには、どこかに突飛したものを設置しなければならない。
 それが奇妙な人物なのか、事件なのか、小道具なのか、僕には分からない。
 飽きさせないためにいかに「仮面セーラー」らしさを出せるか。それが今後の課題。

【文章力】
 長年書かれているだけあって筆は早いし文章は巧み。少しだけ気になっている地の文と会話文の間のスペースは癖? 作風? 合間合間に地の文や会話文が挟まったりすることがないように見受けられる。それでテンポよく読ませられていると言えるし、言ってしまえばその書き方のせいで理解が前後してしまう場面もあったりする。一人称だと問題ないのだが、三人称でこれをやると読者の想像と実際の内容が食い違って、読み返したりするはめになってしまうことがあるので(経験談)、気に留めておいてもらいたい。作風かもしれないので深くは突っ込まない。誤字なども特になく、模範的な文章。どうやったらスマートフォンでこれだけ書けるのか謎。僕なんてスマホで書こうものなら速度低下著しく、パソコンで書けば誤字が滝のように流れ出していく。不可解。ちなみにこの文章力という項目の文章を書いている時だけで二〇回はミスタイプしてると思う。しすぎ。
 一番重視している文章のリズムも特に問題なし。句読点の位置も(僕の)理想の位置にあって読み進めやすい。ここもまた重箱の隅に穴ができるほどほじくり返すと、漢字の単語が隣り合う場合はそこに読点を入れると読みやすくなる。(例:実際私は~ → 実際、私は~)どうしてもそこに読点を入れたくない場合は、「私」を「わたし」とするなどの工夫が必要になってくる。今作品では恐らく片手で数えられる程度しかそんな箇所はなかったので、まあ、一作家としての戯言として受け取ってもらえれば幸い。

【総括】
 読みやすく、王道。それに尽きる。だから特徴的な事件が起こらないと記憶にもあまり残らない。(たとえば可愛い女子生徒の水着が盗まれるという事件は小説の中においては割と一般的なので、落ちのつけかたが大事になってくる)
 今後の方針は分かりかねるが、このまま当り障りのない事件が続くと一本調子でだらけてしまう。同じくヒーローを志す人物の登場だとか、親しい人物が被害者になるだとか、そういうひとつひとつに自分なりのアイディアを盛り込まなければ普通の学園ミステリものとしか見れない。もちろん、先が読めない展開というのはそのアイテムのひとつにはなりえない。正直な話、先を読ませないのは小説として成し遂げるべき事項だからだ。思いもよらなかった展開、最後の最後でのどんでん返し――だけでは読者は喜ばない。
 もっと、もっと読者の思考に訴えかける、突出したものがほしい。ストーリーを除き、あらゆる点で及第点を超えていると評価するだけに、このままでいてほしくない。今後のさらなる超展開に期待しています。
「ゼロの海鷲」 作者:ヤーゲンヴォルフ

【第一印象】
 ヤーゲン先生の飛行機ものだ。やったぜ。正直に言うとヤーゲンヴォルフ先生の作品で全部読めているのは「ドン亀」「ライジングサン」ぐらいしかないので、これを気にゼロの海鷲はリアルタイムで追っていきたい。ヤーゲンヴォルフ先生といえば軍隊モノ! というのが鉄板であり、かなり表現力豊かな先生なので、期待して読み進めて問題ないだろう。プロローグに位置づけにある文章もいい味出している。かっこいい。

【ストーリー】
 主人公水取は予科練を卒業したばかりの新米偵察士。そんな彼の新しい相棒となるのは、どうにも派手で演出のすぎる操縦士、鳳凰院。まだ始まったばかりなのでストーリーに関してはなんとも言えないが、つかみはオッケーだと思う。最初から軍事用語をずらずらと並べられたら投げ出していたかもしれないがそういうこともない。重営倉などぱっと意味の分からない言葉もきちんと説明してくれているので話に集中できる。
 話の展開としては、犬猿の仲(?)の二人がともに行動することを通じて潜水艦とか爆撃していく……のだろうか。きっとルーデルのように快刀乱麻の活躍を見せてくれるに違いない。ヤーゲンヴォルフ先生の話は戦争の一部分を切り取って、ある人物の生き様について書いていくという方針を取っていると勝手に思っているので、おそらく水取の成長を描く話になるんだと思う。どういうエピソードが続いていくのか今後気になるところ。

【キャラクター】
水取に関しては操縦士との折り合いがつかない、航法には自信があるが同僚よりも腕が劣るというだけで目立った印象はなし。鳳凰院は超然とした態度が面白い。この凸凹コンビが出撃するというだけで何か事件が起こりそう。わくわくさせてくれるものがある。現時点だと仕方ないことだが水取がどういうキャラクターなのか分かりづらいか。喧嘩を良くするというのは分かった。これから色んなエピソードが書かれると思うので期待。亜夕は……特に印象なし。主人公には少し甘かったりする、よくいる上官というイメージ。彼女に関しても色々掘り下げられるんだろうか。あと水取は偵察士? 爆撃士? それは同じもの? 気になる。

【オリジナリティー】
 文芸作家で軍事ものといえばヤーゲンヴォルフ先生という確固たるものがあるので、そういう意味でのオリジナリティーは獲得できている。物語の背景や設定に独自性があるかと問われると、正直微妙なところ。というのも小生そこまで軍事モノを読んできていないので、軍事小説の王道というものを理解しかねている。ヘヴィーオブジェクトくらいしか読んでない(軍事モノかどうかも怪しい)。戦争の始まりから終わりまで書くわけでもないので恐らく小話が続くようになるんだろう。ただ、主人公が新しい機体に所属するところから始まるというのは件の「ドン亀」に近似しているものがある。それ以外の切り口から導入しても良いのではと思った。あとヤーゲンヴォルフ先生は明るい軍事小説を目指している(と言っていた覚えがある)らしいのだけど、最終的に主要キャラクター死にまくりという事態がなきにしもあらずなので明るいとは一概に言えない。ヤーゲンヴォルフ先生の目指す軍事小説とはどういうものなのかを如実に示して欲しい。

【文章力】
 文章力はある。及第点以上だと思う。一見意味がわからなそうな用語も話の流れにあわせて解説を入れてくれており、理解が進まないまま読むということはあまりなさそうだ。
 あまりないということは、そういう部分もいくつかあったというわけだ。たとえば「索」と一言で言われてもパッとこない人は多いと思う。細かい部分にはなるが目立った説明もないまま進んでいる箇所もあるので、できるだけ分かりやすい言葉に言い換えたほうがいいような気もする。軍事用語は数多く存在するので、難しいのだとは思うけども。
 文章のリズムは良い。スラスラと読めて心地いい。誤字のような部分はたまに見受けられるものの、読点の位置が違和感あるだとか、読むと引っかかる部分があるというのはほとんどない。少々淡白な部分もあるかもしれないが、雰囲気にマッチしているので問題なし。

【総括】
 ヤーゲンヴォルフ先生の軍事モノは勉強になり楽しんで読めるので、軍隊のことなんかわからないよ! という方にもオススメできる。あとはもっと明るい側面を全面的に出してくれたらと思う。というのは日常を描くだけではなく、展開の問題だ。やはり戦う以上は死というものが纏わりついてくるだろうが、連載雑誌がニートノベルである以上はその恐怖を払拭できる要素がほしい。なので全員爆撃により死亡エンドなどは好ましくない、というのが持論。絶望エンドだとしてもその中に希望が見えて欲しい。同先生の技量が問われます。応援してます。
124, 123

  

「俺のセクサロイドがヤラせてくれない」 作者:和田駄々

【第一印象】
 やってきました駄々ちゃん新作。野生のプロとも称されるだけあって導入でしっかりと物語の世界観を伝えてきてくれている。というか書き方が上手すぎる。人類とAIの関係図というのが冒頭だけでかなりはっきりした。主人公の人間性もよく出ている。感服。本当にアマチュア作家? 暇を持て余したプロの遊びじゃないだろうな? という疑問が飛び出しそうになる書き出し。これは期待できる。

【ストーリー】
 人類が神を崇めたように、AIが人類を崇めているという世界。AIは人類にとって理想的な世界を作ると約束した。それを甘受している主人公の話。名前はまだ出てなかったかな?
 AIを語る時に重要となってくるのがやはり|技術的特異点《シンギュラリティ》(強いAIが出現して人間の知能を超える)だと思う。今作ではそれが過ぎた後の話のようで、言ってしまえばAIによって統治されている(とまではいかないだろうが)世界。そのなかで反AIを掲げる人々もいるが、現状は理想的な世界に浸るほうが有意義なのだろう。一話の最後に軍事AIという言葉が出てきて少しきな臭くなっている。軍事AI VS 反対勢力という位置付けになるんだろうか。それが主人公の手に入れたはずのセクサロイドに書き換えられたということで、セクサロイドがヤラせてくれない。これは男にとって由々しき問題である。
 流れとしては平凡な主人公が軍事上の事件に巻き込まれていくのかな? 主人公の素性はほとんど明らかになっていないが、今後どのように展開していくのか楽しみ。
 関係ないけどセクサロイドってどんなんだよ想像つかないって人はユリア100式っていう漫画を読むといいです。
 追記:主人公の名前出てましたね。いいタイミングで出すぎて忘れていた。

【キャラクター】
 主人公はレトロボ好きの変態。やって来たセクサロイドはセクサロイドにもかかわらず軍事AIが組み込まれた高圧的なセクサロイド。もうただのアンドロイドだこれ。主人公の行動から「やることには熱心に打ち込む、やらないでいい苦労はしない」というものが窺える。それで彼の相棒はセックスをしてくれないセクサロイド。正直似たような設定のニッチなラノベを読んだことがあるので真新しさはない。一般的に見ればおそらく新鮮なのだろう。
 まだ一話だけなのでキャラクターについて掘り下げることはできないので、次回以降更新を合わせてくれることがあれば存分に話していこうと思う。

【オリジナリティ】
 所々に登場する未来機械が面白いものばかり。個人エレベータはどういう構造になっているのだろう。入り口はひとつ? それだと結局混雑しない? 各個人の入口がある? 良く分からない。そういう部分の説明が欲しかった。されてあれば自分の理解力不足。SFというのは作者の考案する(もしくは既に提案されている)特殊な機器が登場する話だと思うので、説明を妥協してはいけないと思う。書くなら書くで、きちんと理解できたほうがいい。確かに初っ端からあーだこーだ説明されるのはキツイものがあるけど、特に説明もされないまま次々と新しい物が登場すると混乱することもあるだろう。だから独自のものを出す場合はどういう見た目か、用途か、仕組みか、簡素でいいので書いておくべきだと思う(例えば軌道エレベータのようなものは説明しつくされていると思うので、一から説明する必要はない)。そういう部分で世界観がぼんやりしているところはある。これからの解説などに期待。
 H-VD-0式……ふしぎ……なんだかとっても懐かしい響き。

【文章力】
 野生のプロ、と先述した通り飛び抜けて高い。新都社でトップレベルを張る文章力は一朝一夕で真似できるものではない。表現すべき場面、そうでない場面の取捨選択ができていて、文章のリズムも申し分ない。改行や行頭スペースの不備が少し気になるけども、それは見逃していいレベルのことだろう。誤字も特になく、粗探しをする気にもなれない。実に模範的な文章。みんな参考にしようね。

【総括】
 始まったばかりなのでこれまた感想に困ってしまうものの、これからの展開を楽しみにさせてくれる一話であったと思う。駄々ちゃんには圧倒的な文章力と世界観で読み手を唸らせてくれる力があるので、今作でもそれを存分に発揮していただきたい。あとセクサロイドほしい。
「素晴らしき世界」 作者:ヤマダ=チャン

【第一印象】
 中世ヨーロッパを髣髴とさせる描写の数々。主人公の国は他の国を制圧したが、そこは主人公の生まれ育った国だった。その後は主人公の過去の話? 印象的な書き方をされているので良く分からない。雰囲気は大長編ファンタジーなので、自分の経験上、完結させられるかどうかで作品の評価は大きく変わってくると思う。

【ストーリー】
 時系列が良く分からない。0と1と2で異なる話が描かれているが、時間の流れは数字順で良いのかな? 場面を切り取りすぎて散らかってしまっている印象。漫画や映画でよくとられる手法だけれども、これは小説で使用すると混乱する可能性があるので多用は無用結局メインで進めていきたい話はどれなのかわからないまま物語が進んでしまう。これではいけない。小説は一本の木であると言われるように、一本の大筋の話から色んなエピソードに枝分かれしていくべきなので、現時点では種類の違う気が別々に伸びている印象。その大元はどこ?
 世界観は示されているが、まだ主人公の目的などが出ているわけではないのでストーリーの評価は難しいものがある。娼婦を助けてその娼婦と仲良くなるというのは割とありきたりな感じ。主人公(02)がどういう立場の人間なのかわかってくると評価しようもあるが、現時点では何も言えない。ただ、かなり長編になりそうな雰囲気はあるので、うまく風呂敷を畳んでくれることに期待。あまり広げ過ぎないように注意。

【キャラクター】
 色々出ているけど、どの人物もまだ登場時間が非常に短いのでなかなか掘り下げられない。冒頭の副隊長がもしかして02の主人公なのか、と疑ることはできるが、一人称なのでそれも判別できずもやもやが続く。切り取った別々のエピソードがあるなら早いところそれのコネクションも考えないと、本当は同一人物なのに照会されないせいで別々のキャラクターだと思っていたということになりかねない。あと厳しいことを言うと、どうもキャラクターが今ひとつ特徴に欠けている(ステレオタイプ)なので、今後どういうことになるのかあまり興味がわかない。こういう性格のキャラクターはこういう行動に出るという予測ができてしまうからだ。なので、それを裏切るような人物設計をしてほしい。人物の設定を考えることは大切。主人公にしてもゴロツキにしても、きちんとその人物を考えることで呼吸が生まれる。頑張って欲しい。

【オリジナリティ】
 はっきり言ってこれも微妙。よくある西洋ファンタジーの冒頭。たとえば娼婦が実は男の娘とかだと「そんなのアリかよ!?」ってなりそうだけどそういうこともなさそう。既存の世界観で、既存のキャラクターを動かしているという感想になってしまう。コレに関しては、いち早く独自の設定を練り込むことでしか解消できないと思うので、読者が飽きてしまわないうちに提供することが大事だと思う。それが娯楽、エンターテイメントとしての小説。辛口評価にはなるけど、これ以上既視感のある展開が続けば読むのを打ち切る可能性もある。

【文章力】
 及第点を超えていると思う。「暗闇に包まれてからがこの街の朝だ」という出だしなんかはとても好き。この一文だけでいろいろな想像ができる。誤字もなく、これはどうなんだと首を傾げる表現もない(ただ、「いきった」というのは厳密に言うと標準語ではないので違う表現にしたほうが見栄えが良い)。本人は書けないと言っているけどもこれだけ書ければ十分小説として読めるので、もう少し肩の力抜いてお話の方に力入れてもいいと思う。表現力は問題なし、あとは手の抜き方を覚えれば十分化ける。

【総括】
 全体的に辛口になってしまったのは、やはりファンタジーというジャンルが既に数量過多で真新しさを追求することに難しさがあるからだ。
 ファンタジーという話で新鮮味を獲得するのは難しい。それは仕方ない。だったら話の構成や世界背景、キャラクター造形で独自のもの(それも食いつぶされていることは多々あるが)を作り上げるしか手段はなくて、そうでないと多くの読者を惹きつけることは難しい。
 ファンタジーは一定数ファン層があるから多く書かれるようになったわけで、普遍的な物語でも一定数のファンはつくだろう。ただそのままだと飛び抜けた作品にはなれないのも事実。飛び抜けた作品といえば、新都社で言えばやはり「ドラゴンズペニス」などの作品になる。そういう作品の王道部分を吸収した上で、自分のなりのファンタジーを描いていくことが大事になってくる。
 投げずにがんばってください。楽しみにしてます。
126, 125

  

「愛と笑いの夜」 作者:ヤマダ=チャン
 ※すべての作品の感想を書こうと思いましたが、他の作品から続いているもの、既に感想を書いたものもあったので、今回は新たに追加された「水色革命」だけとします。

【第一印象】
 ヤマダ=チャン先生の短編集。企画のためにわざわざ書いてくれるナイスガイ。しかも今回追加された作品、時間が足りず続くそうです。短編とは何だったのか。読み切りというわけじゃないからまあいいか。内容はモテない男子の話のようです。辛い。

【ストーリー】
 フラれた現場に現れた謎の少女。その少女はチュッパチャップスをくれて、主人公は昔チュッパチャップスが好きな女の子と遊んでいたそうだ。いやもうその子じゃん。というか小さいとはいえ女の子と遊んだ記憶があるのならリア充認定すべき。僕がクソガキの頃はアリに気付かずにノイチゴ喰ったりバッタの足抜いて遊んでたぞ。女の子と遊んでるんじゃないよ。
 恋愛物の導入部らしい始まり方。ただこれが長編ならあーなるほどそこそこ続くのかなって感じなのだけど、短編でこの始まりはどこまで続くのか予測がつかない。そこまで伏線ばらまいてるわけじゃなさそうだからすぐ終わりそうっちゃ終わりそうだけど、大丈夫かな。ラッキースケベも起こってないし。しかし水色革命というタイトルがなんとも気になる。

【キャラクター】
 よくいる童貞とふわふわ女子。可愛い女の子からアメ受け取っておいてナチュラルにフっている主人公。そのチュッパチャップスで串刺しにしてやろう。いけない、本音が。なにか特別なものがあるというわけでもないので、印象には残らない。モテない理由に面白いものがあればよかったんだけど、そういうのもなさそうだなあ。幼なじみとのホモコースかな?

【オリジナリティ】
 続きがあるとのことでなんとも言いがたいが、オリジナリティと呼べるものはない。恋愛ものって大体こんな感じの始まり方してる気がする。テンプレートをなぞっているだけ。だから続きを読まないとお話にならない。続きはよ。

【文章力】
 ヤマダ=チャンの一人称は読みやすいけど今回はなんだかクドい。こんなこと考えてるようじゃそりゃモテないよ山……塚田くん。クドいけどモテない男子の一人称としてはうってつけなのでプラス評価。お前がモテないのはどう考えてもお前が悪い。

【総括】
 短編の始まりほど語るに欠けるものはない。更新してくれた心意気に感謝。ただ次の更新で面白い引きや展開がない限りは読むのやめちゃうかも。頑張ってください。
「赤い悪魔と魔法使い殺し」 作者:七瀬楓

【第一印象】
 ご存知七瀬先生、通称ななせんの魔法学園モノ。リメイク作品なので以前の方も読んだことある人がいるでしょう。何を隠そう僕も読んでいた。面白かった。さて、リメイクというからにはそれ以上に面白くなければ許さない! 覚悟しろ! とまではいかずとも期待している作品。と言うか自作品と割と中身被ってるのでライバル視してる作品。
 始まりは自己紹介。荒城少年自己紹介する気なし。そして喧嘩が大好きな彼は、様々な生徒との戦いに身を乗り出していくのだった――師匠の敵を探すために。

【ストーリー】
 主人公の目的が明らかになっているので、筋が通っていて良い。師匠の敵を取るという名目で復讐相手を探し、その過程で色んな奴と戦うというところだろうか。いいね。血気盛んなのはいいこと。やれやれ系の主人公が「ワイ仇討ちする」って言っても説得力ないからね。
 今はまだ幸太郎が出会った人物と戦っているだけという感じなので大きなストーリーの動きはない模様。旧作はあれがああしてこうなったけど、さてさて今作はどうなるか。ぶっちゃけた話、導入部分は旧作のほうがインパクトあって好きだった。
 あと、なんかキャラクターの動きが便宜的すぎる気がする。幸太郎と季作が友人になる場面とか、会話がどことなくぎこちない。多分、読者の想像するキャラクターの性格と作者の考えている性格が食い違っているんだと思う。それか展開の速さ重視でお座なりになってしまったか。読んでいて少しむず痒かった。「ここはもっと時間とっていい場面じゃないかな」、と。

【キャラクター】
 幸太郎は師匠の仇を取るために魔法学園に入った義理堅い男。そんな彼は情にも暑く、初対面の男をあっさり友人として迎え入れる。あまりそういうキャラじゃなさそうなのに。これが仁義ってやつか。そして友人を名乗りでた季作。気さくな季作。頑張って解説役を務めてほしい。馬鹿にしてるわけではない。
 そして幸太郎に喧嘩を売る九波ナントカ。完全に噛ませの匂いしかしない。最初にその九波と喧嘩をしていたのは告葉という女子生徒(ちなみにこの辺りまで自作と展開かなり似てるので汗ダラダラである)。彼らを打ちのめし(後者は引き分け)、魔法使い殺しての地位を確固たるものとしていく。そこに現れたるは、我らが蜂須賀結衣こと、かゆい先輩! なんかかゆい先輩かわいくなってる! ぜひともナイムネを揉みしだいた上で罵詈雑言の嵐を受け貫かれて殺されたいですね。お待ちしております。
 とまあ、キャラクターはかなり個性的。
 少し言えば季作が少し薄味。ラーメン好きなのに。

【オリジナリティ】
 幸太郎が魔法を使えないというか、恒常的に利用できない理由はなるほどーと思った。ただ周りのガヤたちが言うようにその方が難しいのでは? と思う。実は幸太郎、魔法使いとしてもう熟成されているのでは? 何かしら制御されているだけなのでは? そう勘ぐってしまう。
 現在ニノベにはいくつかの魔法学園モノがあるので(ごめんなさい)、可能な限り独自性を貫いて欲しいと思っている。魔法の使い方、使う場面などなど。これからの戦いの中でそういうものも見せてくれるだろう。期待期待。

【文章力】
 読みやすい良い文章だ、と褒めてもいいのだけど、七瀬先生はプロを目指してる方の一人なので少し厳しめに言うと、前述した通りキャラクターの動かし方が微妙。台本に応じてキャラクターが動かされている印象がある。このキャラクターならココはこう言うだろう、という場面がいくつか見受けられた。
 七瀬先生の話は戦いのスピーディーさが売りだと思うのでそれを重視するのもいいけど、もう少しだけそれ以外の場面を深く掘り下げてみてもいいと思う。なんというか彼ら、戦意か拳でしか自分を表現できていない。それ意外は人間らしさが全く見えない。目に映る者全てに戦いを挑むキラーマシン状態。なぜならそれ以外の場面の割合が少ないから。なので、戦闘が好きな連中を集めるのもいいけど、そうでない場面も自然と織り込んでいくことでキャラクターが生きてくると思う。今の状態だとどんな理由があっても「じゃあ幸太郎学校行ってないで旅して復讐の相手探せばいいんじゃね?」と思ってしまう。台本通りに動いているイメージが強いので、キャラクターの行動に理由がないのだ。まずはその行動原理をはっきりさせないと、どれだけうまい文章でも空回りしてしまう。

【総括】
 文章でだいぶ突っ込んだものの、総じて評価は高く面白い作品。リメイク前を知っている人はどのように話が変わったのかを楽しむのもいい。投げられないことを祈るばかりというか他の作品がどうなっているのか気になるばかり。とかく、この小説は好きで最後まで追いかけていくのでぜひ完結をお願いします。あと赤い悪魔はいつ出るのか……。
128, 127

  

白昼夢のリップハンター 作者:はまらん

【第一印象】
 忍者が魔導学園に乗り込んで快刀乱麻! というわけではなく教師としてすり替わり、倒せば単位をくれるという話。よくあるよねこういう話。スポーツの試合に助っ人呼んで、活躍すれば単位やるぞって話。よくあるけど物語の動機としてはオッケー……なのかな? ただ結果的に単位目的で挑んでくる生徒は少なそう。あと僕にもキスしてください。

【ストーリー】
 代理教師・吹上ひるねを倒せばメンドクサイ授業の単位がもらえるということで、色んな生徒たちが挑んでくる。下心まる出しの炎系男子や雷使いのお嬢様。それに対してひるねはどのように立ち向かっていくのか。そしてひるねの目的とは何なのか。それは作中で語られているため実際に読んで確かめてみてください。
 最新話あたりではきな臭い話題も出てきており、これからどんどん話が発展していくのだなという印象。主人公(?)である伊織はすこし魔力が高い(?)くらいでまだ特に情報が出てないけど、彼も戦うことになるのだろうか。舞台背景もまだあまりはっきりとしていないのでこれから語られていくのだと思う。しかし魔導学園に忍者の教師? 魔法が使えるけど忍者の一族ってこと? 別にその二つは仲違いしているわけではない? 少し気になった。あとはひるねと戦った生徒の、その後のひるねとの関係が特に描写されてないので気になる。至なら打ちのめされても懲りない様子とか、お嬢様(名前ど忘れした)なら力を認めるなり汚いと罵って逆襲? するとか、そういうのがあると面白い気がする。

【キャラクター】
 ござる口調の少女……うーん、どう頑張っても和月伸宏の絵柄で脳内描画されてしまう。しかし相手へのトドメがキスというのはなんだか面白い。なんというかラノベっぽい。そして色恋沙汰はダメだと言いながらしっかり顔を赤らめるひるねの腋を枕にして昼寝したい。おっと本音が。忍者の格好ということは腋は開いてるんですかね?
 伊織は平々凡々な純朴少年。才能があるらしいけど、まだあまりそういう様子は見受けられない。そしてひるねに恋慕も見ぬかれ、キスも告白もダメだと言われる始末。大丈夫だ伊織。君の未来は明るい。負けるな伊織! 頑張れ伊織! 今のところすごい地味だけど頑張れ!
 それ以外のキャラクターも個性は抜群。饒舌に自己紹介をしたど変態野郎からファンクラブがあるお嬢様、仲の悪い二人の教師などなど、キャラクターを描くという点においてやはりはまらん先生はかなり強いものを持っている。魅力あるというか、説得力のある人物を書くのが上手い。行動一つ一つに人間らしさがあって良い。今後もこの調子で続けてください。

【オリジナリティ】
 キスでとどめを刺す忍者、すぐにやられた炎のムチ(笑)、通り抜ける雷。原理は一切わからないけどそういうものは「魔法だから」で片付けられるとして、なかなかに面白い魔法だ。通り抜ける雷というのは最終的にどこに落ち着くんだろうか。サイエンス・フィクションな脳を働かせれば突っ込みどころはいくらでもほじほじ出来そうだけど低レベルな質問をしそうなのでやめておく。それに今作はSF作品ではない。タイトル通り忍者がキスする小説だ。
 ひるねの目的は割とはっきりしているが、それ以外の面々の目的がはっきりしないという印象。物語の展開からするとこれからそれが明らかにされると思うので、そこでも本作独特のものがあるとなお嬉しい。今のところ予想はできないので、ガンガン突き進んで欲しい。
 それにしても忍術と魔法と来たもんだから、なんだかもう一つくらいは介入してきそう。

【文章力】
 本作の感想で一番大事になるのがこの文章力という項目。
 まずはまらん御大といえば癖になるキャッチーな一人称というイメージがある。文章作法(どうして「」の前にスペースを入れているのか等)は抜きにしてそれ以外で話をすると、文章自体は読みやすいのだが、どうも文章の中で違和感を感じる部分というものがある。いくつか理由はあって、まず視点が割とごっちゃになってしまっているのが原因のひとつだと思う。
 たとえばココ。

 窓から差し込むオレンジ色の光で、随分寝てしまっていたんだな、と考えたところで……。
 「……あれ、なんで伊織殿、ここにいるのでござる?」
 「え」
 胸を突き刺すような発言に、伊織の心が凍り付きかけた。

 この二つの文章をそのまま続けると、ひるねの視点と伊織の視点が混ざってしまう。前の文章が一旦終わっている(例:~眠ってしまっていたんだな、と考えた)のならいいのだが、そのまま続いてしまっている調子なので違和感が生まれる。こういった場面がけっこう横溢してしまっているので、今は誰の視点から書いた誰の話なのか明確にしてほしい。三人称というのはこういうものが常に付きまとうので注意すべし。それ以外にもいくつか修正する点はあると思うが、これはあくまで感想なのでこの辺りにとどめておく。

【総括】
 物語としては全く問題なし、ただ文章は人を選ぶ、といったところ。たまにクドい表現があるのでそれを良しと捉えるか悪しと捉えるかは読む人次第。それを受け入れられれば一気にファンになると思う。それほど人を引き付ける熱量はあるのだけど、どうしても空回りしてしまっている様子。一度、自分が思っているのとは別の書き方をしてみると面白いのではないだろうか。できるだけかぎかっこを使わずに表現してみる、とか。まだまだ荒削りという感じなのでこれからも切磋琢磨していきましょう。
「イニシャルコード」 作者:浅途ユカ

【第一印象】
 大学デビューをした少女が戦闘シミュレーションをする話? なんというか話がいきなり過ぎて、本筋が何なのかわからなかった。バレットのことが中心か、姉を探すのが中心か、というところに割り込んできた謎の少女。うーん、少しとっつきづらかった。

【ストーリー】
 始まったばかりなのでこれといってストーリーはない。というか、初っ端から怒涛の勢いで説明ラッシュがやって来たから理解するので精一杯だった。最初から何をやっているのか逐一説明するのもいいが、もう少し易しめというか、理解のし易い入り方でも良いと思う。
 タクティカルバレットの解説は実際のそのシーンを交えながらした方がいい。そうじゃないと実際の戦闘シーンでまた同じような説明をしかねない。というか、しないと恐らく覚えていない。まずはこういうゲームが有る、そのメンバーを探している、ということだけ分かればよいのでは?

【キャラクター】
 既に指摘されている通り、キャラクターの印象が薄い。タクティカルバレットの説明もあって、彼女たちの情報はもうどこにもない。服装はとびきり奇抜なものでないかぎり個性とはいえないのでやはり台詞や行動で個性を出すべきだ。
 たとえばカフェという場所なら、落ち着きなくコーヒーを混ぜたりだとか、ケーキの苺を最初に食べたりだとか、そういう行動で個性はいくらでも出せる。今のままだと座ったまま全く動かずに話をしている感じなので、もうちょっと人間らしさがほしい。そもそも会話が少なすぎる気もする。世界観の説明よりも、まずは出てくる人物の話を。

【オリジナリティー】
 タクティカルバレットは面白いと思う。が、いくら緻密に考えている設定であっても、小出しにしないと覚えきれない。面白くて読み返されるのは作家の至上の喜びだけど、前の話を忘れて読み返すのは喜びではない。キツイ言い方にはなるけど、もう少し自然に解説をしてくれればと思う。

【文章力】
 かなり高い。文章力だけなら上位を張れる実力はある。読み手を感心させるキレキレの表現もいくつかあるので、それだけにそれ以外の練り込み不足がもったいない。文章については別段問題ない。ただ、これがラノベというのならば流石に淡白すぎる。

【総括】
 かなり高レベルの実力を持っていそうなので、辛口にさせてもらった。現時点では必要最低限の感情しかない人間が指示通り演技しているようにしか見えない。なんというかキャラクターのアドリブがない。のでいくら明るい言動をしていても嘘っぽく見えてしまう。ラノベらしい設定ならばもうすこしキャラクターに重きを置くべき。ラノベはキャラクター小説だと揶揄されているけどその通りだ。個性的なキャラなくしてラノベではない。なので、そのあたりこれから改善があることを祈っています。
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「Bro.com!」 作者:キツヌコ

【第一印象】
 ミシュガルドや漫画でも活躍されているキツヌコ先生の小説作品。簡潔に言えば同級生の男女が再婚による影響で姉弟になるという話。実は似たような事案が周辺で起こっていたため他人事の気がしない。もしかして実話? ノンフィクションよりのフィクション? いやまさか。

【ストーリー】
 再婚によって絹子にできる新しい家族というのは、絹子にとって裏切り者である信太だった。そんな信太を中心とした人物と言葉を交わす日々のなか、ついこの間まで他人だった同級生との同居で一体何が起こるのか――? という話。人間関係を主に描いているヒューマンドラマのような雰囲気があります。宇宙人がやって来て侵略始めるとかはなさそう。
 なんだかんだ結局両想いっぽい絹子と信太。でも家族だからそういうことはダメ。姉弟として接していく……はずだったのだけど、最新話辺りから段々話が動き始めている気がする。信太は現彼女の風喜と別れられるのか? そして絹子と信太、二人の距離はどうなっていくのか? 気になるところである。大筋となるストーリーが特にあるわけでもなく、波乱万丈に満ちた日常を絹子と信太、それぞれの視点から進めていく物語。人によっては「結局何がしたいの?」と疑問に思うかもしれない。登場人物の目的がはっきりしないからだと思う。恋愛以外で何か目的があれば良かったけど、そういうものもなさそうなので、ゆるゆる過ぎていく時間を楽しむ小説。順序立てたストーリーを好む方は少し注意。ただ、今後の展開次第では楽しめるかも?

【キャラクター】
 どのキャラクターも活気がある。個性はどうだろう。詳しい描写がされているわけでもないので登場人物紹介の絵くらいしか情報がないように見受けられる。一部のキャラは言動で個性が立っているものの、信太はどうも印象に欠ける。年頃の普通の男子高校生。主人公のはずなのにその友人のほうが記憶に残っているという事実。まあそんなものか、普通は。
 ただ、些か情緒不安定すぎるのでは? と思う点もちらほら。信太母の行動だとか、風喜の行動だとか。それも若さなのかもしれないが、計算高いなら計算高いできちんとそれに見合った行動をしてほしい。とりあえず風喜、君は不安定すぎる。キャラが良くわからない。

【オリジナリティー】
 同級生が家族になる、というのは面白い話だ。当然のようにラッキースケベも起こっている。それ以外はよくある拗れた人間関係といった感じ。王道っちゃ王道なので問題はないだろう。キャラクターにも個性はあるが、独自性は微妙。というか設定を筆者が「語って」しまっている印象が強いので、キャラの行動なりで個性を示してもらえるとなお◎。せっかく面白そうな設定はいくつかあるのに、それが活かされないのは大いに不満。

【文章力】
 小説が苦手なのかなという感じ。小説というよりは脚本を読んでいるようなイメージ。文章作法などは個人の自由なのでとやかく言わないけれども、やはりどこか表現に乏しく、うまく物語の世界に入り込めない。
 たとえば人物の見ているものは何も他人だけではないわけで、気分が良い時は空の方に気が向くだろうし、沈んでいる時なんかはどちらかと言うと足元の水たまりだったりそういうものに意識が無くはずだ。キャラクターの感情をそのまま感情表現で書くのではなく行動(怒っているのならコップの底で机を強く叩いたり、悲しみで放心状態なら料理の味付けがいつもと違ったり)で示すと途端に人間らしくなる。今のままだと特定の行動によって特定の感情が呼び覚まされるだけのアンドロイドみたいだ。それだともったいない。
 少し急ぎ足な文章にも見えてしまうので、もう少し腰を据えて、ひと場面ひと場面を大事に書いてみてはどうだろう。これだとどのシーンを強く見せたいのか分からない。

【総括】
 文章はほどほどながら、ヒューマンドラマとしては良い題材で、良い感じに展開が進んでいる。最新話も気になるところで引かれているので、続きが気になってしまう。あとは多くの読者を獲得するための文章力が必要になってくると思われるので、いっそうの精進を期待したい。あと女子高生のEカップは偉大すぎてやばい。やばい。
■全体の総括

 というわけで自作品除き10作品、感想を書かせていただきました。
 凄いですね。熱量が凄いですね。ここまで熱くなれるものだとは正直思っていませんでした。感想ダルルォそこまで気張らなくても大丈夫でしょーと思っていたあの日の自分にシャイニングウィザードかましたいくらい疲れました。いやあすごい。
 どうでしたでしょうか。新たな形式の感想にラジオ。新たなものを導入した時ほど反応が怖いものはありません。ですが、意見なしに改善することはできないので、こうした方がいいという点がありましたらビシビシお願いします。協力者も随時募集しています。
 で、次の感想日というのはサイコロを振るまでもなく決まっています。

 9月29日。なんと文芸新都が10週年!
 しかも、キノコ先生が書く最後の感想!?
 これに合わせない理由はありません。新都社10週年の時の情熱を、もう一度。
 例によって、日付が30日に変わるまでに更新をお願いします。
 楽しみ楽しみ。
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★文芸・ニノベ作品感想3★

■はじめに
 ご無沙汰しています。黒兎玖乃と申します。
 新都社では八年そこら色々書かせていただいてます。でも、しっかりと書き始めたのは一年くらい前なので、新人と思ってフランクに接していただいて大丈夫です。優しくしてね。
 後藤健二先生、岩倉キノコ先生と引き継がれてきたこの作品感想企画。その後継者が見つからずにこのまま廃れてしまうのは嘆かわしいということで、恐れ多くも後継者として立候補させていただきました。実はその昔、編集部の方でよくレビューを書きまくってた時期があるので、少しはまともな感想が書けるかな、とは思っています。
 いけない。ハードルを上げる発言は控えようと重います。
 いやー、感想書くのは初めてです。緊張します。お手柔らかに。
 前置きが長くなってしまってはいけないと思うので、早速色々と説明に参ります。
 と、その前に。
 岩倉キノコ先生、半年間感想企画お疲れ様でした。個人的には後藤健二先生に勝るとも劣らない筆者であったと思っています。今後はOB(?)としてどっしりと構えつつ、感想日に何かしらぶつけてきてくださると信じています。本当にお疲れ様でした。今後はご自身の作品の更新に励んでください。
 ははは。
 いや~、私自身、現状四作品並行連載中なんですけどね。
 一応、御二人と同じように半年続けるつもりでおりますが、大丈夫なのかね。

■ルール
・雑誌の振り分けはニノベ→文芸→ニノベ→……の順。基本的には月4回の感想。
・感想更新日にサイコロを振り、次の日付を決めます。初回に関しては後述。
(ex.10月5日に振って1が出た場合→10月6日更新分の感想を次回書く)
・サイコロのログは特に無し。気にすることもないと思います。

ルール補足
・日程的に無理がある場合は日程を少し飛ばします。それはもう己の裁量で。
・作品更新~感想ageまでの間に更新があった場合は感想を書きません。作者直々に申告などあった場合は更新があっても書いたり、感想日でも感想を書かなかったり対応しますのでよろしくお願いします。
・基本的に更新されれば全て読みます。どれだけクソな内容だったとしても最後まで読みます。ただその場合は相応の感想になると思うのでそれだけご了承お願いします。
・完結作品の更新で番外編などの更新があった場合は、その番外編のみでの感想を書きます。
・短編集や長編も頑張って読みます。挫けそうなら途中で感想書きます。許してください。
・評論などの場合は感想を書きません。あくまで小説作品の感想を書きます。

■感想形式
 ここから先は、僕個人で勝手に付け加えさせていただくルールになります。
 何と言っても、近年は文芸作品のレベルが総じて高い! 正直な話、某なろう系のサイトの小説よりも面白さの水準は高いと感じています(あくまで個人の感想です)。向こうの書籍化された小説よりも、新都社文芸作品のほうが出来が良いなんてザラです。早いところ出版社は目をつければいいのにと常々思います。原石どころかブリリアントカット済みのダイヤモンドがゴロゴロですよ、ココ。
 閑話休題。というわけで今回の感想企画には、小説賞のように様々な点からの評価をつけさせていただきたいと思います。主な項目は以下になります。

【第一印象】ざっと眺めて感じたこと。読みたいと思うかそうでないか。
【ストーリー】話の筋は通っているか。先を読みたくなる構成になっているか。
【キャラクター】魅力のあるキャラクターを書けているか。不自然ではないか。
【オリジナリティー】独特な設定であるか。この作品といえばこれと思えるものがあるか。
【文章力】文章作法は問題ないか。読みやすい文章であるか。読み手を唸らせる一文があるか。

 わー、かなりマジだー。ちなみに某電撃の選評とほぼ同じです。
 正直、かなり厳しいことを書くこともあると思います。というのも、これからもがんばってねー、ではなく、更に上を目指して頑張ってください! という思いが僕自身とても強いからです。なので更新を合わせてきた作品(特に作家志望の方)には、何の贔屓目もなく思ったこと・感じたことを書かせていただきます。あとで一番下に感想の例を載せておこうと思います。
 もちろん、「そこまでガッツリ書かなくていいよ」とTwitterなり作者コメントなりで言っていただければ、項目による評価のない感想を書きます。よろしくお願いします。

■感想ラジオ
 それで、新しい試みに感想ラジオを行おうと思います。主な内容・目的は以下。
・基本的には感想更新日の夜。おそらく21時程度から。状況によって日は前後します。
・文章だけでは表現できないことを直接伝える。聞きながら作業ができる。
・新都社のねとらじ文化を再燃させる。(これは個人的な目的です、ごめんなさい)
 以前漫画と文芸のコラボ企画で、新都社十周年感想企画ラジオというものをさせていただいたので、それをお覚えの方は同じ認識で大丈夫です。正直ここまでやっていけるのか些か不安ではありますが、何とか頑張ります。
 で、ラジオに関しても、感想自体に関しても、協力者は常に募集してます。そちらは後述。
 基本的には「冒頭あたりを読む→各項目の評価→総評→次の作品」という流れになると思います。なので、10作品とかあったりすると……うわー考えたくもない。日付変わっちゃう。そういう時は2日に分けたりすると思います。
 いやあ……墓穴掘ってるなあ。穴があったら入りたい。

■協力者募集
 それで、感想を書くにしてもラジオにしても、協力者を募集しています。
 というのも前述した通り、僕自身四作品並行連載中で、あまり余裕がありません。ぶっちゃけそれ以外の執筆活動もあったりしますので、感想が書けないという事態も考えられます。なので数人で持ち回りを出来ればいいかなと思っています。感想であれば各回ごとに執筆者が変わるとか、ラジオなら座談会形式で感想を言い合うとかとか。
 一人でも全く構いません。感想なんて書けないよーって方でもオールオッケーです。僕もそんなに書けないです。だから人がほしいのです。二人いれば会話ができ、三人寄れば文殊の知恵、四人集まれば麻雀ができます。ごめんなさい冗談です。
 ぜひとも、一緒に三代目感想企画筆者となって盛り立てていきましょう。

■さいごに
 まずは9月の後半、キノコ先生と二人で同じ作品の感想を書く、という形になります。で、どこかのタイミングで、10月1~6日のいずれかの文芸・ニノベ作品の感想を書くのかサイコロを振ります。そのタイミングがいつになるかは正直なところ不明です。また色々と相談して決めようと思います。あと明日9/6には事前告知ラジオも行います。
 不束者ですがよろしくお願いします。



 ==========

 ――感想形式の例――


「新都社物語」 作者:新都太郎
 http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=xxxxx

【第一印象】
 何の力も持ってない少年が、謎の少女に出会うみたいな始まり。
 タイトルは普通。タイトルで気になるから読んでみよう、となることはない。

【ストーリー】
 最新更新分まで読んだ部分を要約すると、「実は主人公は相手をニートにするという能力を持っていてそれを使って社会と立ち向かっていく」という話のよう。なるほど、力がないわけではなく、ニートだったために力を出す機会がなかっただけのようだ。ニートになる力。恐ろしい。国会議事堂にでも射出したらどうなることやら。そして主人公に襲いかかるのはワークオブハローという組織の戦闘員。主人公はなんとか凌ぐものの、力が効かない敵と出くわしてしまった! というところで終わっています。ううむなるほど。だいぶ気になるところで終わっているので早く続きを読みたいところ。
 ストーリーは良くも悪くも王道。なので、このまま行くと先の展開が読めてしまって読者の興味が薄れる可能性はある。少女の真の力や主人公の首にある謎の紋章などまだまだ謎要素は残っているようなので、それをいかに示して読者の興味を引きつけられるかがポイントになってくると思う。

【キャラクター】
 正直言って薄味。主人公が「どこにでもいるニート」なのにやたら正義感にあふれているのはどこか謎。どうしてニートになってしまったかも掘り下げられていないのでそれも知りたい。何かしら理由があるなら早めに出さないと感情移入できなくなってしまう。謎のままもいいけどそういうキャラクターは主人公に向かない。主人公はオープンにすべき。
 少女は非常にキャラが立っているために主人公より目立ちがち。実は少女のほうが主人公というオチなのかもしれない、と疑ってしまうほど。確かに主人公とは正反対のキャラクターでバランスは取れているけれども、天秤の釣り合いは取れていない。もう少し主人公のキャラクターを強くするか、少女にも弱い一面があるなどの描写をすれば◎。今のところこの少女入れば世界救えちゃうんじゃね状態。

【オリジナリティー】
 ニートになるという能力、非常に強力ながら独創的。しかもそれが簡単ではなく「自分が触ったものに触れさせる」ことでしか使用できないのが単なる最強能力じゃなくて良い。ただ逆に言えば完全なオリジナルといえるのはその部分くらいで、それ以外はよくある勧善懲悪のテンプレートをなぞっているようにしか思えない。これだとストーリーにも幅が効かせられないと思うので、もう少し強烈な力を持ったキャラクターだとか展開が待ち受けてもいいように思える。

【文章力】
 非常に高い。読みやすく語彙も豊富で、言葉を適材適所に持ってきている。特にダイヤモンドを使った比喩の部分は思わず「なるほど」と唸ってしまった。文章自体のリズムもよく、長編でありながらもスラスラと読めてしまう。今後にも期待。

【総括】
 各項目の内容は大体こんな感じになります。今回は架空作品の感想なので具体的なことは書いてないため、実際はこれの数倍の長さになると思います。そんなのいらねえ、総括だけよこせという方はぜひぜひ言ってください。あと、この項目も付け足すといいよ! って案がある場合もコメントやTwitterなどでお願いします。随時改定していきます。
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