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Red

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深夜の空いたファミレス。適当な席に座る。

「ご注文は?」

ウェイターがけだるげに訊く。

「コーヒー」
「かしこまりました」

そっけない返事。すたすた去っていく。

頭が痛い。あまり寝られなかった。こんな夜中に呼び出すなんて。あの野郎、何を考えてるんだ?

五分もしないうちに、その野郎・・・秋田がやってきた。おれを見つけて、

「おう、悪いな。待ったか?」
「今来たばかりだ」

秋田の顔を観察する。特に酔ってはいないようだ。

「どうした? 何か顔についてるか?」
「いや、別に」
「あ、そう。・・・いやあ、由美のやつがすねちゃってさ」

秋田はいきなり切り出した。

「へえ。・・・どうかしたのか?」

おれは平静を装って訊いた。由美というのは秋田の今の彼女。おれたちの幼馴染でもある。

「どうもね。倦怠期ってやつかな? 最近、くだらないことですぐ言い合いになるんだよな」
「そんなことで呼んだのか? それこそくだらない」
「いや、聞いてくれって。それでさ、その、おまえ、由美の元カレじゃん? ・・・あいつを慰めてやってくれない?」
「おれとあいつが恋人同士だったことはない。それに、慰めろ、だ? どういう意味だ?」

多少、気色ばんだかもしれない。

「変な意味じゃないんだ、ただおれから直接謝ったりするのは、少し恥ずかしかったりするんだよ。それに、おまえら二人、付き合ってなくても、いつも一緒だったじゃないか。おれは付き合ってるかと思ってたんだぜ。だから由美が告白してきたときは、驚いたんだよな」
「待て、由美のほうから告白したのか?」
「ああ、そうだよ。知らなかったのか? てっきりおまえに相談したのかとおもってたぜ」
「・・・それで、本当におれに由美のところへ行って、その・・・由美を慰めてほしいのか?」
「ああ、もちろん。親友じゃねえか」
「親友か・・・まあ、つるんだ時間は長いよな」
「冷たいな。・・・頼むよ」



秋田はここで時間をつぶすらしい。別れて、由美のいるアパートに向う。今、二人は同棲している。

秋田はなにも考えていないのだろうか? かつて彼女と親しかった男に、傷心の彼女を慰めさせる。なにもない方が不思議ではないのか? いや、奴もそこまで愚かではあるまい、なにか意図するところがあるのだろう・・・。それに、なによりも覚束ないのは、おれのほうだ・・・。

寒風が吹きつける。頬が、耳が痛い。ふと、空を見上げる。



そこには、星ひとつない漆黒の闇がひろがっていた。




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