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偽りの団結

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 闇夜に沈むブロフェルド駐屯地を満月が照らしていた。
現在、駐屯地に入ろうとするが、門を警護する守衛隊に邪魔されてしまう。
殺気立つディオゴ・J・コルレオーネを目にして、アーネストの処刑にやってきたことぐらい想像に難くなかった。

「コルレオーネ軍曹っ!君を駐屯地内部に入れるわけにはいかない!」

守衛隊の守衛司令ノースハウザー曹長に制止される。
彼も一連の騒動については、ブロフェルド将軍伝てに聞いていた。
目に余るアーネストの行動に、ノースハウザー曹長も我慢汁の限界だった。

「奴に招待されているんだ。」

目を血走らせ、そこをどけと言わんばかりにディオゴはノースハウザーを睨みつける。

「見え透いた挑発に乗るな……軍曹。君の気持ちは痛いほど分かる。
だが、ヤツはしかるべき場所に出て罰せられるべきだ……!」

「罰せられても、ヤツは今回の行動を起こした。もう法律ではヤツを裁けはしない。」

ディオゴの言い分もごもっともであった。だが、それでもノースハウザー曹長は、
ディオゴを通すわけにはいかなかった。

「君の行動がここで働く全同胞の生活を奪うことになりかねんのだぞ……!!」

ここでディオゴ・J・コルレオーネが上官殺しをすれば、
もはやこの一連の情報がセキーネ・ピーターシルヴァンニアン殿下……引いてはピアース3世の耳に入ることは避けられない。
ノースハウザー曹長とて、たとえ同じ白兎人族であろうとも、
アーネスト・インドラ・ブロフェルドを庇うつもりなど毛頭なかった。
上官でなければ、既に殺しているほど憎んでいた。
だが、そんなノースハウザー曹長をこれほどまで制止させるのは他でも無い。
ピアース3世の耳にここでの騒動が知られることであった。


そもそも、白兎軍に黒兎人族を入隊させるようになったのは、ハト派であるセキーネ殿下の発案だ。
彼は迫り来る甲皇国との戦争に向け、もはや白兎軍だけでは手に余るとし、
長年対立し合っていた白兎人族と黒兎人族が手を取り合うべきだと主張していた。

ピーターシルヴァンニアン王朝の国家運営は、
国家元首であるピアース3世と、国家宰相であるセキーネ殿下の2人によって行われている。
政治に公平さを持たせるため、元首・宰相がそれぞれタカ派とハト派につく習わしがある。
(元首・宰相がタカ派かハト派のどちらにつくかは双方の話し合いによって決めて良い。)
今回の騒動がピアース3世の耳に入れば、彼はおそらくこう言うだろう。
「元から仲が悪かった黒兎人族と手を取り合おうとした結果がこの騒動だ!」と。
世間がやや国家宰相であるセキーネ殿下を支持し、ハト派支持者がようやく過半数に達そうとしているものの、
国家元首であるピアース3世を支持するタカ派支持者は未だ根強い発言力を持っている。ピアース3世のことだ、ディオゴの言い分を全く聞き入れる場など設けずアーネストに有利な展開に持っていくに決まっている。せっかくの白兎人族と黒兎人族が共に手を取り合って同じ軍隊として戦うことが出来ると期待されているセキーネ殿下を大いに不利な状況に立たせるであろう。

ノースハウザー曹長の言葉を聞き、しばし躊躇うディオゴ。
だが、そんなディオゴの行動を後押ししたのは他でも無い同胞であった。
守衛隊の中にも当然、黒兎人族の兵士たちはいる。その彼等の代表である
アダム・クレメンザ兵長が軍曹の前に現れる。

「コルレオーネ軍曹……我々のことは気になされないでください。」

そう言うと、クレメンザ兵長を筆頭にした黒兎人兵たちは
腰のホルダーに収納されていたナイフを引き抜くと、襟元の階級章を切り捨てる。

「なっ……何をしているんだ!!君たち!!」

「……曹長 本日を以て我々は退役いたします。」

「なんだと……!!」

「……これより我々はコルレオーネ軍曹の掌握下に入ります。」

ノースハウザー曹長は部下であるクレメンザ兵長たちの突然の離隊勧告に狼狽した。

「諸君、考え直すんだ……ようやく我々白兎軍は、君たち黒兎人族と手を取って
戦うことが出来るんだぞ……君たちの行動が、国民の団結を乱すことになるのだぞ!!」

祖国存亡のためを思い、ノースハウザー曹長は彼らにむけて銃を突きつけた。

「……曹長、命令を護るために仁義を蔑ろにして
それで偽りの団結を得られたところで 何になりましょう。
互いに腹に不信感を隠し合っている今のままでは、団結など出来ません。」

クレメンザ兵長は、ノースハウザー曹長の突きつける銃口の見据えるかのように前へと立った。
ノースハウザー曹長はそのクレメンザ兵長の目を見て、銃を下ろした。

「……元教え子を撃つだけの勇気は私には無いな……」

クレメンザ兵長は、ノースハウザー曹長に向け敬礼する。

「……貴方の部下で居られたこと光栄に思います。」

ノースハウザー曹長はクレメンザ兵長たちに向け、敬礼をするとディオゴを見つめた。

「何をしている、君の部下たちだ。早く命令を下してやれ。」

クレメンザ兵長たちはディオゴへと向き直ると再び敬礼をする。

「コルレオーネ軍曹……命令を」

ディオゴは目を閉じ、下す。

「……目標はアーネスト・インドラ・ブロフェルド曹長。奴を捕らえ、処刑する。了解か?」

「了解!!」

ディオゴとクレメンザたちは、アーネストの居る司令室へと向かうのであった。
その背中をノースハウザー曹長は、羨ましそうな眼差しで見つめていた。
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