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 2016年からX年後......つまり地球の軌道の変化と、時空の歪みによって正確な日時が測定不可能になった頃。

新宿(しんじゅく)が国民の大反対にもかかわらず、これが世界の潮流とばかり政治家と自由主義者のノリで新陽区(にゅうようく)と名前を変えたころ。

地球には人々の不安やストレス、欲望を具現化した存在、「幻求」という魑魅魍魎が、そりゃもういたるところでバコバコしていた。


 この世界には「幻遊士屋≪げんゆうしゃ≫」という職業が存在する。国家資格であり、あまたの試驗を通過しなければなれない資格である。

幻遊士屋の仕事は「幻求」という魑魅魍魎を退治すること、だけではない。その魑魅魍魎の類を、周囲の野次馬達に、時に舞い、時に踊りながら、「魅せながら」退治しなければならない。

そうでないと、魑魅魍魎はふっかちゅしてしまうからだ。


 海西田止(かいせい たどめ)は、そんな幻遊士屋の一人だ。

いや、正確にいふと、幻遊士屋ではない。なぜなら、彼は試驗を受けていない、いわゆる非正規の幻遊士屋なのだ。 

たどめは、新陽区の日本興亜ビルに絡みつく、桃色の、ゼリーのように透き通った体をした、タコのような物体を見上げた。目の部分だけ不透明で、人の目のように血走り、周囲の人間には

目玉が空中に浮かんでいるかのように見せた。                                         ( ・∀・)
 
 タコは、全身を震わせ、ると、まるで野獣の咆哮のような音を出し、日本興亜ビルの窓ガラスを粉々にした。人々はどよめいた。なぜなら、日本興亜ビルの割れた窓ガラスの修理費用は、裕に1億を超えることは想像できたからだ。

たどめは、足を踏み出した。人々は騒めいた。なぜなら、たどめの体が、その白く華奢な肢体が、人々の心を強く、強くつかんだからだ。

「幻遊士屋が来たぞ!!」

と一人の男が言うと、ゆうに1000は超える観客がたどめのために道をあけた。

そのショートカットで茶色い髪が咆哮の余波で、風に吹かれる稲穂のようにざわめいた。しかしたどめはその白く細い足を一歩一歩、臆することなく進んだ。たどめの紅い足裏には、コンクリートの黒い砂利がついている。

 たどめの体は、ピンクがかった、銀色のビキニに包まれていた。そんないでたちにも関わらず、たどめにはだれもが幼さを感じた。でこを出した髪型で、胸が平たく、まるで中学生になりたての少女のようだった。そしてビキニの股間部分には、穴が開き、

そこから可愛らしい陰茎が飛び足していた。陰茎が飛び出していた。

皮は少し剥け、ピンク色の海綿体が顔をのぞかせていた。つまり、たどめはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーおとこのこだったのだ。

〈みんなぼくをみている〉

たどめはその気持ちを振り払おうとした。だめだ、考えちゃだめだ。

≪みんながぼくをみている≫




……むくり



たどめの、たどめの海綿体が血を得て、充血しはじめた。たどめは、たどめはつまり、勃起しはじめたのだ。

観衆は、中には悲鳴を上げるものもいた。どよめいた。たどめは、泣いた。泣き始めた。

勃起しながら、観衆に見守られながら、大泣きでべそをかきながら、嗚咽を漏らしながら、カウパーを垂らしながら、タコに向かいて歩いていった。


たどめは、間違いなく孤独であった。今、おそらく新陽区の中で、一番孤独であった。

この新陽区のどこに、股間開きビキニを着て、大泣きで勃起して涙をぬぐいながらあるく奴がいるだろうか。

タコはギョロっとたどめに視線をうつすと、そのタコのような腕、しかし大の大人が腕を広げてつかめるかつかめないかぐらいの腕をのばしてきた。

一度ベロン、とたどめの体を舐めると、そのまま掴み、そのままたどめはタコの体内に飲み込まれていった。







































たどめは息ができなくなった。透明の硬いゼリーのようなものに体と口を圧迫され、息ができない。

たどめは恐怖に襲われた。このまま死んでしまうのではないか。暴れれば暴れるほどに、肺が酸素を欠乏し、胸が苦しくなる。目の前にノイズが出て、目の前が真っ暗になろうとしたその時、

タコが苦しみ始めた。そう、幻求は先ほどの観客の「感動」、つまりたどめの勃起によって起きた「感情の動き」によって、ダメージを食らったのだ。

たどめは苦しみから解放され、空氣を吸った。まるで何時間も空氣を吸ってなかったような氣分であった。そのとき、たどめは自分がとんでもない高さにいることに気付いた。

タコは半透明なので、まるで自分が空中に浮かんでいるかのように錯覚した。

ーーーやばい

たどめはパニックになりそうになったとき、あることに気付いた。



目がすぐそばにある



幻求は、大概の個体が半透明な個所と、不透明な個所を持ってゐる。これはまたとないチャンスだ、目玉を攻撃することで、大ダメージを与えることができる。

たどめは幻求の目玉に近づき、パンチをお見舞いした。幻求は咆哮をあげ体を大きく揺らした。


ーーーやばい

たどめはそのぬるぬるした体で滑り、落とされそうになった。これは墮たらひとたまりもない肉塊と化すだろう。ぼくの可愛い体もめちゃくちゃになってしまうかもしれない・・・

そんな思いとは裏腹に、幻求は大きく体を振った。たどめは飛ばされたが、すんでのところでタコの足にしがみついた。

ほっとしたのもつかの間、たどめはタコの足にしがみつきながら、滑って堕ちていった。


ーーーーー命の危険だというのに……


堕ちれば墮るほど、下半身はいよいよ硬くなっていった。タコの足で滑りながら、たどめの股間が絶え間なく刺激されていた。+、死の恐怖で下半身が元氣になってしまったのだ。

たどめは焦った。おたまの中が熱くて可笑しくなってしまう。たどめの頭の中で白い火花がいくつも散っていった。

その時、肛門が熱くなったことを感じた。


奇跡


たどめはタコの足の尖った部分に肛門が引っ掛かり、墮ることを免れたのだ。

しかしたどめは反射的に焦った。肛門に急に物体が入ったら、逃げようとするのは生命的本能……たどめは必死に足を上ろうと足をつかみ、少しづつ肛門の物体から脱出していった。その時、たどめは不覺であった。

脱出するときにしがみついてた足に、股間が強くすられていたのだ。たどめは、物凄く切なくない気持ちになった。これは、もうだめだ。たどめの思考はすでに射精へと向かっていった。

肛門からタコの足が抜けた時たどめは、射精した。


ドク……ドク……


たどめは射精の心地よさに身を任せしばらくぼうっとしていた。

射精が落ち着き、周圍に気を戻すと。観客の笑い声が聞こえた。

「お、おい、あいつ射精してやがるぜ!!」

たどめは完全に目を覚ました。慌てるが、射精は止まらない。

ーーーーやだっ!やだっ!

たどめの目が潤む。観客は爆笑の渦だ。

たどめは、悔しくなった。みんなのために、みんなを救おうとして頑張ってるのに、なんで笑われなきゃいけないんだ……

怒りと、悔しさと、虚しさで、たどめは、大泣きした。

射精しながら、大泣きした。

その時

パン、っという音でタコが弾け、

たどめは地上へ落下していった


≪つづくかな≫











2, 1

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