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Aブロック 一回戦 第一試合

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途中版:アウトライン

「山田、生涯を振り返る」の巻
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バスに乗せられた山田は睡眠ガスで眠らされていた。
所詮はただの池沼、科学の力には勝てない。
目覚めたとき、山田は鉄格子の中にいた。
格子の柵は直径300cmの鉄柱。
池沼の山田といえどもそう簡単には破壊できない。
籠の中の鳥状態の山田はトラックによって試合会場に輸送されていた。

「じょ? あで~、ここはどこだい? オイラの知らない所だじょ^^」

檻の中から辺りを見回せば、そこはまるでジャングル。
試合会場は北西にある過疎地の孤島。
国はこの島を買い取り、島ごと池沼闘技場に作り変えた。

「あ”~~~!! お猿さんがいる”じょ!! ひきぃぃぃ!! ひきききききき!!!」

猿を見つけた途端にさっきまで考えていたことなど上の空。
檻の隙間から腕を出して、猿の真似をしながら猿を捕まえようとする山田。
だが、柵に阻まれる。

「ヴァあああああ!!! なんで出れないじょ!! じょぉぉおおおお!!!!」

いつもはコンクリートだろうが電柱だろうがタックルひとつで破壊する山田。
山田にとっては自分を隔てる壁など未体験、初体験。
その瞬間、烈火の如く怒り狂い、柵を掴んで無茶苦茶に揺さぶっていた。
もはや猿のことなど眼中にない。

山田の暴走によってトラックが揺れる。
池沼仕様のトラックは当然 池沼の暴走を想定済み。
幅12m、重さ800tの巨大ダンプカー並みだ。
揺れこそすれど転倒などするはずもない。
そうしてひとしきり暴れた山田は疲れ切り、目玉を真っ赤に充血させながら泥のように眠りについた。
キートン山田「その時、山田は夢を見ていた。それはまるで走馬灯のように自分の生涯を思い返していたのだった。」

清水の市民病院で山田は生まれた。
当時の記憶は無い。
ただ、母親の腹を食い破ろうとしていたらしく、緊急帝王切開をすることになったと聞かされた。

山田は物心ついたころから いじめの渦の中心にいた。
幼稚園に入れなかった山田は幼少時、ひとり公園の砂場で遊んでいた。
ある時から、中学生か高校生か、とにかく大人が集まって山田を袋叩きにするようになった。
池沼の幼体はまだ力が弱いので人間の恰好のターゲット。
普段から他の池沼に悩まされていた大人達によって、鉄バットで叩かれたり、やかんのお湯を掛けられたりした。
だが、池沼の中の池沼である山田は死ななかった。

その3才から小学校入学までの3年間、人間に対する途方もない憎悪が山田の脳内で醸成された。
しかし年を取るにつれて池沼度合いが進行、思考力はみるみる内に落ちていった。
幸か不幸か、白痴化したことで人間社会との決定的な対立をせずに、こうして今まで生きてこられた。

キートン山田「だが、その無意味な人生もこれまで。城ケ崎さんを殺してしまったことで山田は危険池沼として処分されようとしている」

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山田「じょ? あで? オイラ、いつの間にか寝ちゃってたのかぃ」

目覚めた山田は真っ黒な空間に居た。
黒い合金ずくめの部屋に寝かされていたのだ。

山田「ヴァハハハハハ!! あっちから人の気配がするんだじょ!」

振り向いた先には不自然に開かれたゲート。
窓一つ無い部屋で、そこからだけ光や風が漏れている。

キートン山田「そう、ここはコロッセオ広場に直通する選手控室なのだ」

目玉を剥き出して鼻息荒く歩を進める山田。
夢で見た屈辱の記憶が山田本来の闘争心を呼び起こしていた。
池沼として生を受けながらも生まれ持った人間並みの知能。
最強池沼トーナメント直前、一匹の池沼山田はいなくなった。

キートン山田「人類滅亡を前提とした狡猾な復讐鬼誕生の瞬間である」

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試合会場――
ゲートのオープンから13分後、ひょこひょこと揺れながら山田が入場する。
待ちに待ち、スマホやケータイを弄っていた頃合いの入場に観客席はどよめきと共に沸いた。

はまじ「ああああ!! で、出てきたぞ! 山田だぁーーーっ!!」
ブー太郎「ブヒィィィイイイイイイ!! ようやく試合が始まるブー!」



『青コーナーッ! 清水の面汚し!! ブサイク!! 息をするゴミ!!!』
『いったい誰がこんなリングネームを登録したぁ!!?』
『身長321cm! 体重880kg! 小学三年生ッ!!!』
『前代未聞の嫌われ者!! 推薦登録参加の山田笑太だぁああああ!!』

アナウンスに続いて四方八方からの大歓声。
会場中心に立った山田は両手を広げグルグルと回転しながら周囲を見回していた。
目は吊り上がって、口角も裂ける程上がっている。
片足で飛び跳ねながらホッピングベイブレードのように回っている。

たまえ「こんな時にふざけてるけど、あれで山田はちゃんと戦えるのかなぁ」
長山「山田君でも低学年くらいの知能はあるはずですから、ある程度状況はわかっているんじゃないでしょうか」
野口「そんなの関係ないね、どうせいつもみたいに暴れて相手に向かってくだけさ・・・」

戸川先生(ちなみに登録手続きをしたのは私です)




山田「くき! くききききき!! とっても都合がいいんだじょ! なんだかわがらないけど、いっぱい人がいるねぇ!!」 

満面の笑みを浮かべた山田が見上げる先には無数の人間。
異様な程透き通ったガラスで何重にも遮られているが、確かに人間がいる。
コロッセオの天井ガラスを破り続ければ届く距離。
天井までの高さ50m。

山田「ヴァハッ!!! みん”な~オイラと一緒に遊んでおきなよ~!」

アラレちゃんのようにキーンと走りながら壁を駆ける。
ガラスを一枚突き破り、山田がコロッセオ上段に突入を始めた。


キートン山田「後半へ続く」

8, 7

  



「み~んな み~んな殺してやるじょ!!^^」

第一の強化ガラスを破壊した山田が第一階層に登りつく。
しかし、さすがに池沼仕様の闘技場ということか、ガラス壁の突破は想定済み。
観客席まで行くには残りガラスは数十枚。

「ジョォォオオッ!!」

数十秒の間に6枚のガラスが突破された。
これは大会運営の想定を上回る速度である。


丸尾「ギエエエエエエ!!! ずばり、これは非常事態でしょう!!」
友蔵「ち、池沼の反乱じゃあ!! こ、殺されるぅ!!!」

会場出口目がけて逃げに逃げる観客。
ガラスの砕ける爆音の中で押し合う人の波

ひろし「ま、まる子ぉ! お姉ちゃんはどうした!!」
まる子「知らないよぅ! さっきどっかに流れてっちゃったよ!!」
ひろし「畜生、とにかく俺たちだけでも逃げるぞ!! オイ!」

まる子を肩車したひろしが倒れているガキ共を踏みながら逃げる。
山根「ガァッ、ァァァッ!!」
とし子「いだぁぁあああッ!!」

荒れる観客席。
しかし最前列のファーストシート付近の観客は皆冷ややかな表情。

花輪「まったくうるさくなってきたねぇ、秀爺。これじゃあゆっくりお茶を楽しむこともできないよ」
秀爺「ええ、まったくでございます」
右手を額に当てて、頭痛い系のポーズをする花輪君。

みぎわ「う”ぁ、う”ぁなわくぅん!! どうじで早く逃げないの!! どんどん山田が来てるのよ!!」

妖怪みぎわの言う通り、着実に下の階層から山田は登ってきている。
だが、花輪君は顔色一つ変えない。

秀爺「ご安心ください。会場と観客席の間の各層には対池沼兵器が設置されております。
加えて、この大会のガードマンは皆 軍属の半池沼でございます。
いくら山田様といえど、自由にはできはしません」

下層を見ればいつの間にか、体長2m程のプレデター風の兵士に取り囲まれている山田。
機関銃で滅多打ちにされて動きを止められている。

山田「キィィィイイッ!!!」

巨木のような腕をクロスして防戦一方。
しかし、じわじわと前進し逆に兵士を壁際に追い詰めていく。

山田「あでででで!? あで~!! オイラ、なんだか段々気持ちよくなっできたねぇ!!!」
上瞼の裏側まで反り上がった右目をピクピクと震わせながら呟いた。
服はボロボロになったが、全身かすり傷で血がにじむ程度。

山田「ヴァアアアアアアア!!!!」
いつものようにタックルを仕掛ける。
兵士を三人を巻き込んで壁に激突。
当然即死。
だがその瞬間、壁際に仕掛けられていた地雷が起動。
周囲に居た兵士諸共 山田が吹き飛ぶ。
そのまま真っ逆さまに最下層に落ちていく。


目を不気味に見開いたみぎわさんは呆然と試合フィールドを見つめ続ける。
花輪「どうだいベイベー、秀爺の言った通りだろう」
みぎわ「そ、そうね 花輪君・・・ でも、山田死んでないみたいだしまた登ってきそうよ・・・」

試合フィールドで兵士の死体に八つ当たりしている山田は元気そのもの。
観客席には負傷して逃げ遅れた凡人と 花輪君のように始めから逃げようとしなかった常連客しか残っていない。

秀爺「そろそろでございます」
花輪「フフフフフ」
右目と左目がほぼ対称に見開いた状態で笑う花輪君。

その時――
合金製の会場全体に鈍い振動が走った。
0.5秒刻みで規則的に壁と床を伝ってくる振動。
徐々に大きくなる響きの震源に山田も観客もすぐに気づいた。

――赤コーナーのゲートが開いているッ!!!

山田が不思議そうにゲートの先を見つめる。
薄暗い廊下にいる巨体の影。
同じ高さの視線を持つ両者の目が向かい合った。


(次回 1ep分はしんのすけの回想、それ以降試合)
10, 9

  

タイトル「好きなだけ暴れていいゾ」
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~回想~
園長先生ボイス「
ここは埼玉県 春日部市
時を遡ること大会の三ヶ月前の丁度午後2時くらいになった頃」

春日部市で聞き込みをしている運営黒服。
指令は「野原しんのすけ」の身辺調査。

――最強池沼トーナメントに備えた準備活動の一環。
中途半端な池沼ばかり参加させていては殺し合いにならないし、観客も盛り上がらない。
トーナメントには少なくとも一名は規格外の選手が必要なのだ――

と、そう指示を受けた黒服数名が春日部市を散り散りに練り歩く。
(しんちゃんキャラに黒磯という黒服モブがいるのでその見た目イメージ)

そして集まった情報はあまりに不自然。
池沼が居座っている町の住人というのは大抵池沼のせいで九死に一生を得ることになるため、池沼のことをボロカスに言うのが普通。
だがしかし、春日部市の住人はむしろ肯定的。
聞いた話から推測すれば、野原一家はある種のカリスマ性さえ垣間見せている。



一週間の身辺調査の後、運営本部によって調査担当者に真実は伝えられた。
「野原しんのすけは社会性池沼ではあるが池沼ではない・・・『超人』だ」

その時、ベテラン調査員だけが本当の真実に気づいた。
今回の最強池沼トーナメントは、「ただの池沼の殺し合い」ではない。
間違いなく「あの超人一家」が関わってくる。
野原しんのすけは彼への供物なのか、あるいは勝機があるのか。
21世紀を代表する超人衝突の予感は、それだけでこの壮年の男の全身を青ざめて震わせた。


~回想終わり~

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山田「あで!? オイラとおんなじ高さに目があるねぇ! そこにいるのは小杉君かい!?」

首をブラブラと左右に揺らしながら山田が入場ゲート先を見つめる。
刹那、けたたましい咆哮。爆音。
しんのすけ「ほほほほほほおおおおおおおい!!!!!!!!!!!」
体育座りのままの状態で、異常な速度のしんのすけが入場した。
俗にいうケツダケ歩き。
鉄製の床表面を溶かしながら火花を上げてジャンプし、山田の目の前に着地した。


『あ、赤コーナー!! 地上最強の幼稚園児がやって来た!! 』
『オーラが凄いゾ!! 天才[天災]的だゾ!! 』
『身長392cm、体重4.5t!! ふたば幼稚園ひまわり組!!!』
『嵐を呼ぶ五才児ッ!! 野原・・・しんのすけェェーーーーーーーッッ!!! (みさえ風裏声)』


首を肩より下に構え、腰を肩より上に突き出した異常な程の猫背。
それでも尚、山田と同じ視線。

とても異様な子供だった.
巨大な頭をさらに巨大な四角い胴体で支えている.
そんな子供特有の三頭身身の丈は,見ただけで4m近い.
しかも,ジャガイモのような形の頭は,頭だけで1mを軽く超えている.

しんのすけはライオンより大きいだろう顎をだらしなく垂らし,猿のように広げた口から歯茎と牙を剥き出しにしていた.
だが,それ以上に奇怪なのは巨体に似合わない服装.
血よりも鮮やかな真っ赤な半袖のシャツと
目がチカチカする程の黄色の原色の半ズボン,
そして汚れ一つ無い真っ白な靴下.
どう見ても化け物なのに,どう見ても子供なのだった.


山田「なんだい・・・? 君もオイラと遊びたいのかい」

先ほどまで運営の兵士と戦っていた山田には、この大会の趣旨さえわからない。
目の前にいるしんのすけさえ、人間の手先と思っている。
両選手、見合ったまましばしの沈黙が続いた。


そして――
ひろし『しんのすけぇぇぇ!! 頑張れよぉぉ!!』
みさえ『しんちゃーーん!! 無理しなくてもいいんだからねー!!』
ひまわり『たいたいたぁーーーいっ!!!!!! あ”あ”ぁぁいッ!!』

会場に響くマイク音声。
選手に深い縁のある者には呼びかけ用のマイクが渡されている。
基本用途は死に目の池沼に最期の罵声を浴びせることである。
だが、今回は違った。

しんのすけの両親である ひろし みさえ は当然として、
同じ幼稚園の仲間、商店街の人、近所の人、春日部住人の声援がそこにはあった。
選手用として、観客席が会場の壁のスクリーンに映し出されていた。


その光景を見たその時、山田に衝撃が走った。
池沼とは・・・人間から蔑まれ虐げられ、家族からもゴミ同然に捨てられるものではないのか。

山田「じょ・・・」

振り返った山田の目に映るスクリーン。
ほとんど人はいないが、確かに見覚えのある人間が少しはいる。
花輪、まる子、たまえ、はまじ・・・
そこには誰も山田を応援する者はいなかった。
皆一様に恨みがましい目をしている。
まるでかつて幼少の自分を虐めていた人間のように。

山田「ぐぎぎぎぎぎぎ・・・」

やかんのように顔を真っ赤に充血させて悔しがる山田。
人間に向けられていた敵意の矛先がしんのすけに移った瞬間であった。
11

源しずか「 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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