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魔法少女達 その⑥

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 一か所に集まった魔法少女たちは、それぞれ一息つきながらぺちゃくちゃと雑談を始める。
 そんな中、数人の魔法少女はあたりを見渡しながらこんなことを話し合っている。


 「で、大体終わったかしら」
 「そうですね、ぱっと見では目立った敵はいないっすね」
 「じゃあラスボスはどこにいる?」
 『それは……あれじゃない?』


 そう言って優希は腕を伸ばして指さす。
 その先は極彩色の巨大テントがあった。


 「そうよねぇ。あそこぐらいよねぇ」
 「じャ、行きますカ」
 「そうですわね」


 ここまで話して意見がまとまったところで、遥香が割って入って来た。


 「別に行かなくていいと思うよ」
 「あら? どうしてかしら」


 宝樹がそう尋ねると、遥香は首を傾げていった。


 「遥香は見たよ。アリスが行ったの」
 「「「「え?」」」」


 そういえば、アリスの姿がない。
 マリア達も首を回して見るも、視界の範囲内に確かにいない。
 いつの間に、と驚く。
 だが、あのアリスである。あり得ない話ではない。
 朱音はヘラリと笑うと言ってのけた。


 「じゃ、行かなくていいか」
 「それは酷くないっすかね」
 「そうかー?」


 苦言を呈するユウキ
 その次の瞬間だった。
 ドゴンッという爆発音が響く。
 急いで音のした方を見ると、テントの一部がはじけ飛び、そこから黒い煙が上がっているのが分かった。


 「…………」
 「どうよ」
 「別に平気そうっすね」
 「まぁ、アリスだしねぇ」
 「様子見でいいんじゃないかしら」


 満場一致でここに残ることとなった。






 アリスは高速で移動しつつ、敵の攻撃をかわしていく。
 テントの内部にあったのは広い闘技場のような空間、数えきれないほど観客席が円形にそれを囲んでいた。だが、そこには誰も座っておらずガランとしていた。アリスはそこを一切無視してまっすぐ闘技場の中央へと向かった。
 そしてそこにヒトガタのラスボスがいた。


 星のマークが刻まれた巨大なボールの上にバランスをとって立つ一体のピエロ。ただし他の奴と違うのが鼻の下にひげが生えていることと、目がうっすらと開いており、その中に眠る紫色の瞳が輝いていた。大きく広げた両腕には鞭が握られており、その先がまるで意思を持っているように動き、アリスを狙っているのだ。
 だが、全く持って当たらない。
 常人ではとらえきれない速度で宙を切るそれも、アリスから見ればハエが止まっているよう。
 動き回ればこれっぽちも当たらない。
 ついでにアリスはたまに爆破するナイフをぶん投げて、ピエロに圧力をかけていく。いくつかは鞭ではじかれあらぬ方向へと飛んで行く。結果どうなるかというと、テントの天井に命中しそこで爆発する。
 しかし、いい加減飽きてきた。


 「弱い」


 きっぱりとそう言い切る。
 数は多かったがその程度らしい。
 アリスはもういい加減帰りたいので終わらすことにした。


 「死ね」


 円を描くように動きつつ、腕を伸ばすと狙いをつけて指を鳴らす。
 瞬間、ピエロの乗っていたボールがガオンと消える。それでバランスを崩したピエロは重力に引かれると、そのまま地面にドサリと落ちる。それでも苦悶の声一つ上げないところは称賛に値するがもうこれで終わりだった。
 ピエロが落ちると同時に彼女は剣を振りかざしつつ接近すると、直後、倒れたピエロの首元に剣を突き刺した。
 一撃だった。
 それでピエロは息絶えると、そのまま消滅した。


 「これで、よし」


 アリスは満足そうにそう呟く。
 これでこのヒトガタも攻略が終わった。



 次の瞬間、世界が真っ白に輝きだすと――――



18, 17

  



 「「終わったー!!!」」


 瑠花とマリアの二人が万歳をしながらそう叫ぶ。
 その周囲に何人もの少女たちが集まっていた。既に麗装は解除してそれぞれ制服や私服姿でほっと一息ついている。久美やフレイヤは喜ぶ瑠花や世界、言葉を微笑ましげに見ているが、青葉照や一部魔法少女たちは既に帰り支度を整えている。やはり先輩魔法少女たちはマイぺースだ。
 瑠花はアリヤのもとに駆け寄ると、タッチを躱す。


 「やった!!」
 「………そうね」
 「ほら、詩音も!!」
 「イエーイ」
 「えーい!!」


 彼女はいつもこうだ。
 少しあきれ顔でそれに応じる。
 宝樹はあたりを見渡すと、隣にいたフレイヤと彩芽に話しかける。


 「あら? 遥香はどこに行ったのかしら?」
 「そういえばぁ、見ないわねぇ」
 「帰ったわよ。「カナタが家で待ってるって」」
 「あのブラコンが……」


 いつものことだが、呆れずにはいられない。
 そんな彼女たちにマリアは話しかける。


 「あのー、お姉ちゃんどこ行ったか知りませんか?」
 「あら、アリスもいないの?」
 「じゃあ帰ったわね」
 「え、早い」
 「いつもの事でしょぉ」
 「そうね、アリスは家で旦那さんが待っているものね」
 「むー、そうですけどね……」


 それでも何となく寂しいと思ってしまうマリア。
 自分も帰ることにすると、ユウキとデルタの方へと歩いていった。
 そんな彼女の背中を見て、詩音とアリヤも顔を見合わせるとこういった。


 「じゃ、帰るか」
 「……そうね」
 「お先に失礼しまーす」
 「…………さようなら」
 「はい、さようなら」
 「じゃ、また明日―」


 そんな言葉が投げかけられる。
 二人は手を振ってそれに返事をしてから、ゆっくりと帰路についた。


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