荒野のサーカス団
陽気な音楽が流れてくる。
まるで豪華なオーケストラが無秩序に演奏しているような。しかし、はっきりと何かの戦慄を奏でているようで、音楽に聞こえるあたりかなり不気味だった。聞いているだけで心が躍り、それと同じだけ気分が悪くなってくる。だが、その音楽にまともに耳を貸す人はほとんどいなかった。
一方で、音楽が流れていのは現実とは思えないほど寂れた場所だった。
時はまさに世紀末、と言った様子でいくつものビルが無残に倒れ、傾いていた。空は不気味な茜色で輝いているのに、太陽は雲の裏でその身を隠し続けていた。そんなことしても、そこに彼がいることは疑いようのない事実だというのに。
基本的に灰色で色彩のない町
だが、たった一つ彩りあふれるものがそこにはあった。
それは何か。
大きな極彩色のテントだ。肉まんのてっぺんのような独特な形状、赤と白の二色が目が痛くなるほど輝いていた。サーカスが上演されるテントに非常に似ていたが、サイズがケタ違いに大きかった。
荒野とサーカス団
あまりにミスマッチな組み合わせだった。
ちなみに、周囲に何もないわけではなかった。
白い仮面をつけ、三人一組で歩く不気味な人形。アメとビラを配っているのは帽子にスカートが生えたような形状をした何か。そして、緑や青と言った派手な色をした巨像が闊歩して、不気味なピエロがそのそばで踊り狂っている。それは世紀末のサーカス会場にぴったりのありさまだった。
しかし、そこで演じられているのは笑顔のあふれる演目ではない。
戦争だった。
サーカス団とはまた違う姿形をした少女たちが、次々とピエロや人形を殲滅していっているのだ。