誕生日 その③
「デートだってさ、アリヤ」
「……そう」
「なんか意外といわれれば意外だが、予想通りと言われれば予想通りって感じだな」
「……そうね」
アリヤと詩音の二人は部屋にあるソファーで寄り添って座りながら、そんなことを話していた。ちなみにこの情報は達也経由で伝わってきた。ちなみに、アリスは携帯を持っていない。魔法少女組ではアリスのほかにアリヤ、デルタも持っていない。というかデルタは必要がない。
詩音はそっと携帯を閉じると机の上に投げ捨てる。
「アリス先輩どんな顔をしたんだろうな?」
「………たぶん無表情」
「ハハハハハ、それはそうだな」
「…………」
そんな会話を交わす二人。
だが、考えていることは全く同じだった。
先に口火を切ったのはアリヤだった。
「……ねぇ……詩音」
「ん? 何だよ、アリヤ」
「……私たちも行く? ……デート」
「行く?」
「………行こう」
「行くか!!」
話がまとまった。
アリヤはそっと詩音の方に寄りそうとそっと目を閉じた。
「デートねぇ」
「デートだと」
「だってさ、ユウキ」
「そうだな」
「でも、喜んでいるんだろうなぁ、お姉ちゃん」
「そりゃデートに誘われて嬉しくない奴なんかいないだろ」
「本当にそう思ってるの?」
マリアがあきれ顔でそう尋ねるとユウキはキョトンとした顔で答えた。
「お前は嬉しくないの?」
「え?」
「例えば俺がデートに誘ったらどうよ。嬉しいだろ?」
「えぇ!?」
顔を真っ赤にして驚くマリア。
予想外のリアクションにユウキは少し驚くも、すぐに気を取り直すと言う。
「なんだよ、そんなに驚いて」
「えぇ!? ユウキがデートに誘うの!?」
「例えばでそんな言いぐさないだろ」
「う、うーん」
顔を伏せて表情を見られないようにしながら、マリアは考え込む。
正直なことを言うと嬉しい、嬉しいがそう言ったら負けなような気がする。だが、嬉しくないというのは本心ではないし、それでは自分の言葉が間違っていると認めることとなる。これはこれで負けだ。
八方ふさがり。
どう答えても駄目な状況で、マリアは葛藤していた。
結局答えが出ることはなく。マリアがひたすら悩んだだけでこの話は終わってしまった。