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魔法少女達 その③

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 「…………」


 上半身は胸を潰すように巻かれた晒しのような物のみ、下半身は長い袴のようなものを纏ったその少女は手に大きな鎌を持っていた。スケ番の服装に非常に似ていたが、その少女は非常に暗い顔で目の下には深い闇のようなクマができていた。
 彼女は半壊したビルの陰に隠れていた。と言ってもそのビルのサイズはけた違い、それだけでも数百mはある。
 そんな彼女に向かって行くのは一体のピエロ。
 五mはあろうかという巨大な竹馬に乗ったそれは、両足を交互に前に出しながら、彼女を踏み潰そうと向かってくる。
 それを見ても、その少女はピクリとも動かない。
 二人の間の距離がほとんど零になる。
 そこでタケウマピエロは、大きく右の竹を上げると、その先端で少女を潰そうとする。
 その直前だった。
 少女の姿が消えたのだ。


 「!?」


 それに驚き、ピエロは動きを止める。
 顔をキョロキョロと動かすと、周囲を見渡して少女の姿を探し求める。
 だが、見つける必要などなかった。
 なぜなら、自分の肩の上にその少女が現れたからだ。どこから湧いて出てきたのか見当もつかない。文字通り、虚空から浮き出てきた。


 「ばいばい」


 少女はそう言い残すと。
 大鎌を大きく振りかぶると、躊躇なく振り下ろした。
 ピエロの首がその一撃で落ちると、そのままゆっくりと体も倒れていく。
 宙を舞った少女――九条暗――は満足気にそれを眺めた後、再び虚空へと消えていった。







 「はいはいはい!!」


 その少女――渚美幸はレイピアを振るい、次から次へと敵を突き殺していく。
 女の子が好きそうなピンク色でフリフリ沢山ついた可愛らしい服装。しかし決して派手なわけではない。テレビなどで見る魔法少女物のアニメで主人公が着ているようなものを想像してもらえばわかりやすいだろう。
 その手に握られているレイピアは無機質な光を放ちながら、親子連れの人形をバラバラにしていく。見事な太刀筋だった。
 目に入る範囲の敵を一通り殲滅した彼女はふぅと息を吐くと一休みする。


 「うーん、今日のヒトガタは数が多いなー」


 ヒトガタ
 この敵はそういう名前で呼ばれていた。ちなみに今日はピエロやサーカス団の姿をしているが、それは日によって変わる。この間は水族館だったし、その前はサバイバルゲームのような様相だった。
 人の世の歪みが生み出し、この世界を破壊していく怪物。
 そんなヒトガタに対する存在
 それが彼女達、魔法少女だった。
 「さてと、ラスボスはどこかな?」
 美幸はそう言いながら、また別の方にいる敵の方へと視線を向ける。
 そこでは後輩魔法少女たちがサーカス団を相手に戦っていた。

10, 9

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