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2017年10月14日「単位を下さい」

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 2017年10月14日更新作品から

「単位を下さい」 http://tanihoshii.ichiya-boshi.net/



 まずは完結おめでとうございます。
 江野先生の漫画は前作の「僕の私の受験戦争」も面白かった。ギャグテイストがとても強くて、そこまでリアルさは感じなかったのだが、フィクションの漫画としてはとても楽しく読めるという印象。ぷげら連載の4コマ漫画がとてもしっくりくる。
 そして本作は、ギャグテイストはそのままに、リアルさが増している。これは絵柄の進化も一助しているかもしれない。「僕の私の受験戦争」の後半がそうであったように。普通のコマ割りとなってコニーに連載を移しているが、舞台が予備校から大学へ上がった分以上に、より大人向けになったなという印象だ。
 絵がリアルになるとストーリーもシリアスになってしまう人が多い気がするのだが、江野先生はそうならず、変わらず登場人物たちのドタバタ劇をギャグテイストで楽しませてくれる。
 このあたりに江野先生のお人柄が出ている気がして好感が持てる。作風が一貫していて、努力家で、謙虚である。

 余談だが、新都社民の年齢層は社会人が多いらしい。
 新都社も12年続いているのだから、初期からいる人はもうとっくに30代以上はいっているだろう。
 ただ、活発に創作活動をしている作家さんは、いつの時代も大学生を中心とした20代が多い気がする。
 より突き詰めると大学生~20代半ばぐらいまでか。
 少しは世の中のことが見えてきて、これまでの努力や経験や知識を元に、自分そのものである創作漫画を世に問うてみたくなる衝動があるのだろう。商業作家になろうと挑戦できる時期も一般的にはそれぐらいだ。そもそも漫画を描いている余裕がある時期というのが、大学生か、社会人になって仕事にも慣れて少し余裕ができてきた頃合いかと思う。新都社民に限らないが、20代後半になるとまた仕事で責任ある立場になったり家庭を持ったり、または自分の限界が見えてしまって筆を折る人が増えるので。
 またざっくりとした言い方だが、新都社漫画には商業漫画には無いアマチュアの良さというか、フレッシュさというか、何者にも縛られない自由さがあると思う。別に学生が出ていなくても、ファンタジーでも、SFでも、何となく作風が若い。サイト創設から12年経っていても、新都社はずっと青春時代のままだと思う。
 これが若さか・・・というか、アラフォーのおっさんに受験生とか大学生の話をリアルに描くのは難しいと思う。

 江野先生の実際のご年齢など私は知らないが、大学生~20代半ばぐらいのことをリアルに描ける年齢ではないかと思う。 
 本作は、大学生活を描いているからだろうか、そういう若い空気感というのが如実に表れている。
 実録漫画ではなく創作漫画であるのは明らかだが、モデルとなった人物がどこかにいるんじゃないかと思えるほど非常にリアルである。
 漫画そのものはどんどん商業作品のように高いクオリティとなっていっているが、空気感だけは「新都社で活動している大学生の作家さん」ってリアルでこんな感じなんじゃないかと思わせてくれるものがある。新都社での創作活動って、大学生活におけるモラトリアムに近いものがあるよなぁと。
 本作でも主人公の水町さんが大学生活(モラトリアム)を維持するために奮闘する姿が描かれているが、だからこそ読者の大いなる共感を呼ぶし、学生時代を懐かしんで楽しく読めるのだと思う。
 実際、私も本作を呼んで、もう一度大学生に戻りたいなと思ったので。 

 順調に長期連載を2本完結させた江野先生。
 もし次も新都社で描かれるおつもりならば、受験生→大学生ときたことだし、次は大学院生、もしくは就活生か新社会人か?と期待も膨らむ。
 個人的には、新社会人について描いてもらいたいなと思っている。
 拙作の「本当にあった後藤健二の話」なんかよりよっぽど読者の共感を呼べるだろうから。



以上です。
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