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2017年11月11日「【実験漫画】クロンボ太郎」

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10月18日更新作品から


「ジャンヌ・ダルク=ブレイバー」
「【実験漫画】クロンボ太郎」
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=20570



 比家千有先生作品の短編集。
 最初は「ジャンヌ・ダルク=ブレイバー」の感想だけ書いていたが、後程「クロンボ太郎」もUPされたので追加で感想を書いていく。どちらも比家先生らしく、頭のネジ2~3本外したような作品だった。

◆ジャンヌ・ダルク・ブレイバー 
 非常に感想を述べるのが困ってしまう作品。
 私が感想を書くスタンスというのは、相当に新都社民の好みに寄っていると思うが、国語のテストで小説作者の心情を読み取る文章問題に取り組むように、真面目に一話から通読し、論理的に書いている。本作にはこういう意味やテーマが込められていて~というのを読み取って感想を書くのだ。文芸民でもあるのでそれが性に合っている。
 が、本作はそのスタンスだと苦戦する。こういう実に新都社らしいク…いや、作者の意図が良く読めない作品は、定義したり解釈するのが難しい。せいぜいボケた解釈をして草を生やしながら感想を書くのがやっととなる。
 が、敢えて意味を読み取って考察してみたい。

 ジャンヌ・ダルクが主人公。
 ジャンヌといえばフランス・イギリス百年戦争を戦い散っていった悲劇のヒロインである。神の使い、聖女とも呼ばれた。彼女を扱った創作は多く、中でも佐藤賢一の「傭兵ピエール」は大変な名作だと思うのでみんな読んで欲しい。歴史上の偉人を扱って作者なりのエッセンスを加えてエンターテイメントに仕上げる歴史物は大好きなので、本作もその一つかなぁと思ってスクロールしていったのだが…。
 粗筋。史実でのジャンヌは結婚しなかったが、本作のジャンヌは結婚しており、新郎の首を剣で刎ねるという荒業を見せている。首を刎ねられた新郎はなぜか頭部だけで自立して生まれ変わり、ジャンヌのパートナーとして祝福されている。
 そして苦難の旅路の始まりとなり、途中で現れたモンスターに殺されかかったジャンヌだが、彼女を救うためにパートナーが卵かけごはんとなってアンパンマンのように自分を食べさせることでジャンヌに力を与え、彼女は悲しみをこらえながらパートナーを食べ、敵を討ち果たす。

 ……粗筋を書いていても、自分が何を見たのか良く分からない。
 比家先生の世界は、私程度の常識で凝り固まった頭ではいくら考えても意味を理解することが難しい。ただ敢えて考察するなら、これは聖女と呼ぶには血塗られた史実のジャンヌの生きざまをイメージしているのではないだろうか。
 百年戦争でもフランス人を奮い立たせて旗をもって前線に立ち、勝利を得るためとはいえ、フランス人の血を流すことに心を痛めたジャンヌ。本作のジャンヌもパートナーを食べることで悲しみをこらえて敵を討ち果たしている。「僕をお食べ」と笑顔で言うパートナーの姿は、史実のジャンヌのために戦って死んでいったフランス人のように自己犠牲の愛に満ちている。
 結婚式の際に新郎の首を刎ねた時、誓いのキスをした時、旅路の門出の時のジャンヌの顔を見て欲しい。実に男らしいケンシロウかブルースリーのような凛々しい顔立ちをしているではないか。
 やはりこれは、大事なものを犠牲にしてでも戦おうとするジャンヌの悲しき苦難に満ちた生き様を描いているのではないだろうか。
 つまり、ジャンヌ・ダルク+アンパンマン+北斗の拳である。
 適当に言いました。
 すみません。


◆「クロンボ太郎」
 これはまだ分かりやすい。
 「借り暮らしのオヤジッティ」の系譜だ。
 クロンボは現在では黒人を表す差別用語として扱われているので、本作が商業化される際には名前は絶対に変更されてしまうだろう。比家先生は「ちびくろサンボ」のような感じでネーミングしたものと思われる。

 粗筋。周りから迫害を受けるクロンボ太郎だが、虐められて泣いている少女を助けようとする。少女は助けられたが怯えて逃げてしまう。その後、少女が犬と遊んでいるところにクロンボ太郎が現れたので、少女はクロンボ太郎に犬を預けて柿を取りにいき、助けられたお礼に柿をあげる。クロンボ太郎はそれを柿鍋にして食べようとするが、どうも変な匂いがする。犬の姿が見当たらない。もしや…?
 という感じで終わっている。
 クロンボ太郎は犬も食い物にしか見ておらず、恐らく柿と同じく鍋に入れてしまったようだ。

 異文化コミュニケーションの相互理解の欠如がなせる悲喜劇を描こうとしているのだろう。
 クロンボ太郎のデザインについても比家先生のテイストというか、キモい容姿でしかない中年男性を「オヤジッティ」として「アリエッティ」のように借り暮らしをさせていたが、それと同じく「ちびくろサンボ」のような可愛らしい黒人少年をボブサップのようなごつい黒人男性の姿にして描いているだけだ。
 そのように、キモいものをマスコット的にユーモラスに見せる試みは一定は成功しており、オヤジッティに比べるとクロンボ太郎はまだ可愛げがある。ただやっぱり身近にいたらちょっと怖い存在なのは変わらないので、比家先生の目指すところには到達していないだろう。また新たなキモかわいいキャラクターの創造を楽しみにしたい。




以上です。
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