動画はこちら
https://youtu.be/GY9kQcWLvEM
※Serg Tankian サージ・タンキアン
アメリカのオルタナティブ・メタルバンドSystem Of A Downのボーカルの人。ソロでも活動。
いつもなら振り返り回にあてる60曲目だけれど、創作意欲優先で。
空が。
空が終わる。
空が終わっていく。
遥か彼方にあるはずだった空が。
容易く手の届く所まで落ちてくる。
瓦礫で傷付けて絵が描けるくらいに。
鳥達は人の背丈の範囲内しか飛び回れず。
車にぶつかり命を落とす。
ダイレクトに猫にかじられる。
空の寿命にいち早く気付いた背の高い者達が、少しでも高みに空を押し戻そうとするが。
背の低い者達はいくらかの窮屈さに半ば気付きながらも。
日常の営みを続けて頭上の異変から目を背けている。
巨大なキャンバスを見つけた背の高い絵描き達は。
空の終わりに構わず諸手を上げて無限の天井画を描き始めている。
それでもいまだ地面に落書きを続ける者達が。
描いているのは皮肉にも空を飛ぶ鳥達の絵だ。
その絵に降り立ち。
そのまま地面に溶け込む渡り鳥がいる。
何千年も前からこのような絵でありました。
そんな顔をして。
空を支える者達と。
空に絵を描く者達と。
空の異変に気付かぬ者達と。
何もかも見通していながらも地面を見続ける者達で。
等分された世界はぎりぎりのバランスを保ち。
どうにか続いていく。
あるいは順調に終わっていく。
子供達の描いた絵から飛び出した鳥達が。
窮屈な世界で鳴らされた楽器の音が。
人の歌声が。
低く垂れ込めた空を突き抜けていく。
その先は何もかもを焼き尽くす太陽だとしても。
止まる事はない。
誰も止める術を持たない。
それら。
空の破滅。
空への抵抗。
同数の諦め。
人の歌声。
低く飛ぶ鳥達が、ピアノの鍵盤を叩く。
連弾は鳴り止まない。
(了)