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「祝日」カネコアヤノ

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動画はこちら
https://youtu.be/_qDgLENi2dA

「DRIP TOKYO」シリーズ第2弾、カネコアヤノ弾き語りライブの4曲目
https://youtu.be/_6rB7U-_yPg



 健三郎(筆者の息子。二歳七ヶ月)が近頃便秘気味である。きばってもうんちがなかなか出てこず、出てもカチカチである。朝三回排便をする私には便秘の苦しさがよく分からないが、つらそうにしている息子を見るのは心苦しい。小児科で処方してもらった薬を飲ませたり、軽くお腹をマッサージしたり。休日には主に私がサンドバック役になって遊んであげたり。

お腹が痛くなったら
手当てをしてあげる
手当てをしてあげる
手当てをしてあげる

 カネコアヤノの「祝日」の歌詞を思い浮かべる。カネコアヤノの他の曲も聴きながらいつの間にか寝落ちしている。夜中にふと目が覚める。二度寝しようとしてもうまく眠れず起き続ける。もう一度カネコアヤノを聴き、ちょっと毛色を変えようと思い、セパルトゥラを思い出して「Roots Bloody Roots」を聴く。クレヨンしんちゃんのようなカネコアヤノの声から突如デス声に切り替わる。セパルトゥラとはブラジルのヘヴィ・メタルバンドで……。

「セパルトゥラとは」
「泥さん、ちょっと待って下さい」
「1984年にカヴゥレラ兄弟を中心にブラジルで結成され、南米出身で大成功を納めた稀有なヘヴィメタルバンドとして」
「待てって言ってんですよ」
「心配しなくても、セパルトゥラについて語れる事なんてあまりないから」
「ちょっと状況を整理させて下さい」
「当時のメタル界隈の?」
「違います! まず俺が昼出勤してきてすぐに、『泥さん、腹痛いんで帰っていいっすか』と言いました」
「『ミュージック・ガンボ・チューズデー』ってヘヴィ・メタル中心に流すラジオ番組があってな。毎週カセットテープに録音して、お気に入りの曲はダビングして残してたんだ。『Roots Bloody Roots』はその中の一曲で、他のセパルトゥラの曲は全然知らない」
「そしたら泥さんが『そういえば健三郎も最近便秘気味で』って言い出して、『こんな曲があるんだ』って言って歌い出しました。仕事中ですけど」
「お腹が痛くなったら
 手当てをしてあげる
 手当てをしてあげる
 手当てをしてあげる

 うん、歌ったね」
「『誰の曲っすか』って俺が聞きました。『カネコアヤノっていう人で、同じ曲でも弾き語りバージョンの方がずっといいんだ』とか言い出して」
「つじあやのとは違うとかいう話をして」
「そうっす。合ってます」
「それでセパルトゥラに繋がるわけだ」
「そこっすよ! 何で急にブラジルのヘビメタの話になるんですか!」
「ノンノン、ヘヴィ・メトゥ」
「さっきそんな発音してなかったですよ!」

 小学二年生になった上の子の通う小学校は通常授業に戻った。今年の夏はプールは中止となり、夏休みも八月頭から半ばまでと、大幅に短縮される事になった。クラス替えで幼稚園の時に仲の良かった子と同じクラスになり、楽しくやっているみたいだ。だからこそ、目一杯一年間そのクラスを楽しませたかったなと思う。コロナ関連で仕方のない事とはいえ。

「改行してモノローグに逃げないで下さい」
「なつめちゃんちに遊びに行ったって」
「そっちには自然な流れでも俺には何の事か分かんないですよ!」
「結論としては、カネコアヤノはけっこう気に入ると思うから、そろそろSpotify無料版卒業したら?」
「まあそれは考えてるんですけど。泥さんを見てると、人としてこうはなりたくないな、っていうのもあって」

 職場に仕事用のスマホを導入した。通話機能はないが、トランシーバーのアプリを入れて、現場と上の事務所とのやり取りをすぐに出来るようにしたり、在庫管理や日付確認やら、パソコンを使わなくても出来るようになり、六月の棚卸にも活用すると、これまでの半分ほどの時間で終わらせる事が出来た。
 まだテスト段階なので、人に説明する為だけのやり取りもある。

「泥さん」
「はい、何」
「Nさんにトランシーバー機能の説明してるだけ。忙しい所ごめんなさい」
「了解」

「泥さんのぼけー」
「了解」

「アレクサ、ハウエバー歌って」
「たえーまなくーそそぐあいのなをー」
「アレクサ、続きを歌って」
「えいえーんとよぶこーとができーたーならー」
「続きは?」
「GLAY聴かないって」

「で、休みの変更の相談の話なんですけど」
 後輩との会話に戻った。
「こことここの休みを入れ替えたいんですよ。いろいろ解禁になったんで、祝日に友達と遊びに行きたくて。別に泥さんの休みを代えなければいけない所はないです。社員二人の日が増えてしまいますけど」
「USJも再開してるの」
「してますよ」
「そういえばUSJで働いてる彼女とはどうなったの」
「この間別れましたよ! 知ってるでしょ!」
「で、友達とUSJに遊びに行くのか」
「行きませんよ、気まずいわ!」


これからの話をしよう
祝日、どこに行きたいとか


 綺麗にタイトルに繋げて終われた。
 ちなみにこの後何故だか後輩にたくさん殴られた。


(了)
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