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https://youtu.be/5MaUc9QAC0s
子供たちが空に向かい
両手を広げ
鳥や雲や夢さえも
掴もうとしている
何してんだ、旅人さんよ。
何俺の手を掴んでんだ、余所者さんよ。
どうしてあんたの財布をくすねようとした俺の手を掴んで離さないんだ、異邦人さんよ。
俺が財布を盗む権利を奪い取る気か？
あんたから盗んだ金で、食い物を買って、生き延びるんだよ。
でないと死ぬんだよ。
近いうちにあの世に行っちまうんだよ。
力を弛めろよ。
財布を置いてけよ。
金だけでもいいよ。
有り金全部置いてけよ。
嫌なら引っ掻くぜ。噛み付くぜ。ナイフも銃も持ってないからな。雑菌だらけだぜ、俺ら。
あなたにとって私
ただの通りすがり
ちょっと振り向いてみただけの異邦人
どうしてだって？
どうして盗みや恐喝なんてするのかって？
生きてく為だよ。
死なない為だよ。
食う為だよ。凍えない為だよ。眠ったまま二度と起きる事が出来なかった、なんてならない為だよ。
兄も死んだよ。妹も死んだよ。友達も死んだよ。親も死んだよ。殺されたよ。飢え死にしたよ。犯されてから殺されたよ。自殺したよ。
優しかった奴は誰も彼も死んだ。
俺は優しくなくて、遠慮がなくて、運が良くて、死にたくない気持ちが誰よりも強いから、生き残ってる。
生きてたっていい事なんてないんだよ。
悪い事ばっかりに出会うよ。
死んだ方がきっとマシなんだよ。
なんで生きてんのかって思うよ。
幸せそうに笑う親子連れやら、いちゃつくカップル達を見ると嫌になる。
それだけじゃない。
冴えない奴らも、死にかけの老人も、気が狂って叫びながら走ってる奴さえも。
妬ましく思えるんだよ。
生きてんじゃねえか。
その年まで生き残れてるじゃねえかって。
俺達はきっと大人になる前に死んじまうんだよって。
市場へ行く人の波に身体を預け
石だたみの街角をゆらゆらとさまよう
祈りの声ひづめの音歌うようなざわめき
私を置き去りに過ぎてゆく白い朝
何の話だよ。
あんたの国の事かよ。
自分も昔はストリート・チルドレンだったって？
寒い冬にマンホールを降りて下水道で過ごした日々があるって？
警官も政治家もみんな自分達を見て見ぬ振りをしていた事があるって？
そこから抜け出せたのは、助けてくれた人達のおかげだって？
食事を、服を、住む所を、教育を与えられたって？
だから今は、昔の自分と同じ環境の子供達を助けたいって？
何で俺なんだよ。
あんたの財布を、金を、あわよくば命を取ろうとした俺なんだよ。
どうして今なんだよ。
兄や妹や友達や親はどうして助けてくれなかったんだよ。
どうして俺一人なんだよ。
助けられない無数の俺達はどうしてくれるんだよ。
ここから抜け出してどこへ行けって言うんだよ。
急に希望を見せるなよ。
俺はもう駄目なんだよ。
人も何人か殺したし、誰かにとっての大切な物も取ったし、壊した。
かろうじて生きてるってだけで、とっくにいくつもの病気にかかってんだよ。
みんなと一緒だよ。
もうすぐ死んだ奴らに会えるんだよ。
でも空腹を満たす為に盗むんだよ。
いつ死んだっていいはずなのに。
時間旅行が心の傷を
なぜかしら埋めてゆく不思議な道
サヨナラだけの手紙迷い続けて書き
あとは哀しみをもて余す異邦人
あとは哀しみをもて余す異邦人
助けるなら、まだ助かる奴を助けてくれ。
出来る事なら、死ぬ前の妹を助けてくれ。
俺以外の全ての子供達を助けてくれ。
この国からみんなを連れて行ってくれ。
余所者よ、旅人よ、異邦人よ。
こんな所にいると死んでしまう、殺されてしまう。
他人よりまず自分を助けてやれ。
兄も妹も俺を守って死んだんだ。
もうあんな思いは嫌なんだ。
俺は生きたい。でも助かりたくはない。
希望はもういい。さよならだ。
小銭だけ置いて行ってくれ。
あそこのファミリーマートで、塩むすびを買いたいんだ。
それだけでもう、いいんだ。
（了）