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「軍神」作:ウッチェロ(5/16 13:30)

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「はじめるか」ひときわ大きな男がつぶやく。
男の名はゲオルク。若い頃よりあまたの戦場で武功をあげ、いまや『軍神』と称えられている。

「さんざん焦らされましたな。敵の大将は臆病なのか堅実なのか」
ゲオルクの後ろに控えている男が口を開く。副官のゴンザだ。

「いまにわかる」
「そうですな」短い言葉のやりとり。
しかし彼らには、ここ数日来の敵軍の動きから、敵の司令官には経験が少なく、
それが原因で慎重になりすぎているのだろう事が判っていた。

「ゲオルク様。聞いてもいいですか?」
ゴンザの横に控える若い女が話しかける。
女の名前はシャーロットという。ゲオルクは通常、熟練の戦士たちを廻りに置くことを好む。
「話が短くて済む」とはゲオルクの言だが、シャーロットはそんな彼らと異なり、ひときわ若い。
若く才能ある者をゲオルクの近くに置き、その考え方や行動を間近で学ばせ、次代の隊長候補に、という腹づもりであろう。

大柄で優れた運動能力を持つ彼女は、陽気で健康的な魅力に満ち、長く美しい髪を持つ。胸も尻も大きい。
胸の大きい娘を特に好むゲオルクの事ゆえ、そこを気に入って側に置いているのではないか、などとゴンザなどは軽口を叩くこともある。

「もちろんだ。何でも聞くがよい」
「我々はこの3日間というもの、小競り合いではさんざんに負けて、昨日の戦闘では大事な高地も取られてしまいました。戦いには勢いが必要ですが、今はそれがありません。
この状況での会戦はあまりに危険ではないですか?」
シャーロットには物怖じする所がない。遠慮なく物を言う。そんな所もゲオルクの好みであるのだろう。

「そうだな」
「ならば」
「なればこそだ」とゲオルクは話し始める。彼にしてはゆっくりと、諭すような口調である。

「敵の数は我がほうの3倍だが、いま我が軍が対峙しているのはその一部。彼らは我らとほぼ同数だ」
「は」
「ゆえに我らは敵が合流する前に正面の敵に戦いを挑み、打ち破る。でなければ包囲され、はなはだ不利となるだろう」
「ですがいまでも我が軍は…」

「わからないか」ゴンザが助け舟を出す。
「つまりだ。小競り合いで負けて見せたのも、高地をわざわざくれてやったのも、使者が来たときにゲオルク様が風邪のふりをしていたのも。つまり…?」ここまで言っても、答えまでは言わない。
自分で答えをみつけるのが、シャーロットの学びとなるだろう。

「…あっ! わかったぁっ!」シャーロットがさけぶ。
「ほう」

「つまり童貞の子を陥とす時みたく、胸元を開いて、パンツ見せて誘惑してたって訳ねっ!」

ほどなく男達の間から爆笑が巻き起こる。シャーロットは思わず赤面し、両手で顔を覆い隠す。
「そうだ。その通りだ」とゲオルクが男達を制する。自身も大いに笑いながらではあったが。

「今や敵は我らの誘惑に乗り、警戒を解き、ふらふらと不用意に近づいて来ている」ゲオルクの声が大きくなる。
すでに戦士達に向けて話しているのだ。

「次はどうする? シャーロット」
「…はい… 次は… その……きん…」シャーロットの声は、その大柄な身体に似合わず今にも消え入りそうだ。
「そうだ!」軍神、そう呼ばれている男がひときわ大きく声を張る。

「ようし! ものども出撃だっ! 敵の金玉を蹴り上げてやれ!」
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