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息子の苦悩

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 精神科、心療内科はどこも激混みだ。
私が通院することになったI医療センターは、診察開始の数時間前に玄関ドアが解錠され、診察券を入れてもいいことになっていた。
受付カウンターに設置されている診察券入れの小さなポスト口から診察券を入れる。診察時間になると、この順番が早い人から受付番号札がもらえる、というシステムだ。

 朝イチの解錠しそうな時刻に息子が診察券を出しに行ってくれる。こうしておけば、私は、診察開始時刻にだけ行けば良かった。
息子は診察券の提出と、私の付き添いとで毎回2往復してくれていた。
早朝5、6時に出しに行ってくれていても、受付番号は7番くらいのことが多かった。
開院時間ともなれば、2、30人の患者たちで待合室はあふれかえっていた。

 精神科に通院するにあたって、“精神保健福祉法第32条”に該当する重度かつ継続の精神障害であると認められて、公費負担制度で通院できると病院から説明があったらしい。
この手続きも息子が一人で役所へ行き、済ませてくれていた。
薬代も公費から出していただけるそうで、無料で通院することができた。

このI医療センターに通院し始めた頃に、担当医が「今の段階で病名をつけるとしたら…」と前おいて、
  
 “心因反応 
  急性一過性精神病性障害”

 と、メモに書き記して渡してきた。にこやかで明るい雰囲気の、良いお医者さんだった。
 精神通院を始めだして、処方された通りに薬を飲むようになってからも、具合が良くなるにはまだ数ヶ月ほどかかった。

一人ではしゃぎ出すことが多かった時は、買い物などに行こうとした時も息子がついて来ていた。
頼んだワケではないが、出かけようとするのが見つかると、黙ってついてくることが度々あった。
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 ある日、車関連の支払いの為に何十万円かをおろしてきておくように旦那に頼まれた。
この時、銀行にも息子がついてきた。
「息子です」・・「息子です!」・・・・・「息子です♪」
と、訊かれてもいないのに受付の人に紹介した。何度も何度も…
すでに成人していた息子が、私の傍らに連れだって銀行に行くことはとても久しぶりで、楽しくなってしまったんだと思う。
この時の銀行員の反応は憶えていないが…  
この後、「お確かめ下さい」と、引き出した現金が出てきたのでその一万円札を数えていると、ミョ〜に可笑しくなってきてしまって、数えられなくなるほどゲラゲラ笑った。
コレには銀行員もつられ笑いしながら「大丈夫ですか〜?」と言ってきた。
息子だけは笑っていなかったが・・・。

街で一人で爆笑し出すのを人に見られたら 恥ずかしいからついてきてたんだろうなー・・・と思う。

そうは言っても、私の外出のたびに家族の誰かがついてこられるわけでもなく・・・。
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多治見リョー 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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