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『触手プレイだよ! ゴッホちゃん!』

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『触手プレイだよ! ゴッホちゃん!』


「あー、暇だわね。とても暇だわさ」
 日曜の午後という貴重の時間を、寂れた公園のブランコを漕ぐというとても価値の見出せない行為に使っている女の子が一人。僕達私達のヒロインゴッホちゃん。なにやらとても暇そうです。
「もう面倒だからメタ的な台詞もバンバン吐いちゃうよ。言われたとおり暇なのよ。日曜の午後だと言うのに年頃のキュートなナイスガールがこんな辺鄙な場所で暇を潰しているだなんて、嘆かわしい世の中だわ」
 ぎこぎこと音を鳴らしながら、ゴッホちゃんは力強くブランコを漕ぎ出す。なんだかとってもパワフルなその振り子運動は段々と速度を上げてゆき、なんてことはないと言った風に一回転。鉄製のアレ――よくよく考えたら名前わかんねえ――が絡まってしまい、ゴッホちゃんはつまらなそうに勢いをつけてジャンプ。綺麗に着地。
「暇だわ。今日に限ってパキケファロさち子ちゃんもBL太郎君も忙しいとかマジわけわかんない。特にBL太郎君。なんなのコミックカオスの発売日だから遊べないとかなんなの。そんなにコミックまんまんとくしょみしょテクニクスが読みたいわけ。もうセガール似のガチムチダンディにバックからずっこんばっこんとレイプされてしまえばいい」
 言い終わったところで、空しく一陣の風が吹く。春も近付き暖かくなっていると言っても、それなりに冷たい風はゴッホちゃんの肌を無情に冷やす。
「ああもう、そんなどうでもいい情景描写とかツッコミみたいな説明はいいから、さっさとこの暇な状況を変えるべく面白おかしい展開にしてよ。じゃないともう帰って寝る。ペットのフトアゴヒゲトカゲと戯れながらBL太郎君を呪いつつ寝る」
 ゴッホちゃんがそんなことを言いながら今回の舞台にしようと思った公園から出ようとするので、仕方が無く展開を進める。
 帰ろうとしていたゴッホちゃんは、急に何かの気配を感じた。……そう、何か。今まで感じたことのない気配。さすがのゴッホちゃんなので恐怖は感じたりしないが、気にはなったので振り返る。と、砂場の方になにやら卑猥にうごめいているモノを見つけた。
「なにあれ」
 触手である。
「いや見ればわかるけど何アレ」
 要触からお越し頂いた紳士な喋る触手さんです。
「へー。触手かあ。うわ初めてみた。なにこれ触っても平気なの? というか触っちゃうよ。いいよね。毒液とか出さないよね」
 まるで人の意見を聞く気が無いゴッホちゃんは、やや駆け足で砂場に近寄り、うねうねと“腕”を揺らしている触手に近付く。
 説明しよう。要触を見てくれたよいこのみんなは触手さんの腕から一定時間ごとに粘液が分泌されるのはわかると思うけど、その粘液は触手さんの体を乾燥させないためという役割を持っているんだ。けど、効果はそれだけじゃない。人間のティーンズ限定で効果がある催淫作用があるのだ。もちろん、こう無理矢理ぐいぐいっとつっこんでゴックンさせたほうが効果は高いけど、触るだけでも少しの効果は期待できるぞ! 要触で登場する結ちゃんは、ぎりぎりティーンズに含まれていないため、効果は無いのだ。
「長々と説明ご苦労様。……ってことは毒液と変わらないじゃないのよ!! あやうく“ローションみたーい(笑)”とか言いながら遊ぶところだったわ……」
 手を伸ばし、今にも触れそうな時にゴッホちゃんは慌てて手を引っ込ませる。天に向かって恨めしい表情を見せるも、あんまりメタメタしちゃうと読者が置いてけぼりになってしまうのを知っているので、適当に無視する。
 説明しよう。今ここにいる触手さんは触手さんであって触手さんではない。並行世界に存在している、“人間に迫害され続け結とも出会えなかった触手さん”をわざわざ連れてきたのだ。ここにいる触手さんは極悪非道、人間を単なる食料としか捉えていない正真正銘の触手……!
「え? じゃあなに? あたしってばそんな淫獣相手に話を展開させなくちゃいけないわけ? というか触手がこっちに向かってくるんだけど。結構速いんだけど。変な液体を飛ばしてるんだけど。逃げるわ」
 別にこんな触手程度あたしの敵じゃないわよと一言。それでも我らがゴッホちゃん、その秘められしティーンズ柔肌を晒すわけにはいかないと、砂場を背にして公園から出る。……が、甘かった。ゆったりとした“腕”の動きで油断していたのか、触手の移動速度は思っていた以上にすばやく、あっ、と言う間にゴッホちゃんの四肢は“腕”によって拘束されてしまったのだ!
「ちょ、ま、やめwwwwwww」
 ぬるぬるとした感触に襲われ、ゴッホちゃんはその秘められしティーンズ乙女力を発揮するが、僕達私達の触手さんも負けてはいない。さすがは一人称で主人公をはっているだけはある、触手さんの主人公補正でゴッホちゃんの類稀なるデラックスパワーは封じられてしまった。さすがのゴッホちゃんも貞操の危機を感じているようだ。
「ねえなんなのこれなんなの。あたしってば要短の中でもやばいくらいの不条理キャラで通ってんのになんでこのなんなのなんでこんな簡単に触手プレイされちゃうのさ!」
 うねうねと蠢いているだけのように見えるが、腕は確実にゴッホちゃんの華麗なセーラー服の内側に侵入していた。皮膚から侵入してくる催淫作用持ちローションもどきの効果もあり、まさぐられているだけだというのにゴッホちゃんの顔が上気してゆく。まじやべえ。
 次第に液体をふんだんに染み込ませた服は透け始め、いかにもゴッホちゃんらしいスポーツブラが眩しいシャイニング。
「こんなっ、ことして……ただで済むと思ったらオオグンタマぁ……!」
 貴重な産卵シーンが見れるという“フリ”ですね、わかります。
 いい頃合だろうと言わんばかりに、触手さんがとうとう人類未踏の地、僕らのユートピアである天国の扉《ヘヴンズゲート》に腕を回す。そのままゴッホちゃんの服は無残にも破かれてしまった! やべえ!!
「誰にも見せたことないのに……くやしい……。でも……ビクビクッ」
 感じちゃうと言わない辺りに彼女のアイデンティティが垣間見える。破かれた服の下には、黒のスポーツブラ、黒のスパッツ、ポニーテール。もうこの三つだけでお腹いっぱいなのにまさか触手までついてくるなんて! とってもリーズナブル!! この展開、YESだねッ!
 そんなこんなで触手さんはどうみても濡れ濡れな股間を腕でさする。その度にゴッホちゃんの体がビクビクと痙攣するように反応して。
「いやっ、やめてっ! それ以上はいやぁ…………なんて展開になるとなるかと思ったけれども、そんなことはなかったわ!!」
 ふんっ、と。女の子にあるまじき掛け声とともに、ゴッホちゃんは渾身の力を以って触手さんの腕をブッ千切る。見た目超絶ぐろいけどそんなことはお構いなし、ゴッホちゃんは怒りのボルテージマックスで触手さんの胴体に正拳突きを食らわした。ガッシ、ボカッ! 触手さんは死んだ(笑)。
「もともとあたしなんかに手を出したことがそもそもの間違いなのよ。大人しくBL太郎君の尻でも掃除してなさい」
 捨て台詞。動くことすらかなわない触手さんの死骸に向けて、ゴッホちゃんは言い放った。それでこそゴッホちゃん、我らがゴッホちゃん、そう簡単に膜はあげないわよ!! 完。
 
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