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佐渡鉄二

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 佐渡鉄二は死にかけていた。だから異世界に転移した。
 なぜ死にかけたか? それはこの世が地獄だからだ。癒えぬ孤独のるつぼだからだ。
 佐渡鉄二は幸福だった。異世界に転移できたからだ。
 何も恐れることはない。異世界は平和なのだから。


 ○

 東京から流民が流れ込んできていることはうすうす聞いていた。ギルドのメンバーもそれを危惧していた。彼らはアンデッドになってしまうウイルスに感染している。見つけ次第焼却しなければならなかった。
 冒険者として佐渡鉄二にもそのクエストが与えられた。
 東京からの人間は狩りやすかった。弓矢で頭部を一発。それで終わりだった。家族四人連れのパーティを全滅させた鉄二は、その夜の風俗代を稼いだ。セックスはいい。ぐっすり眠れる。


 ○

 感染が広がっている。もうだめなのかもしれない。東京とのゲートはまだ不明で、感染者だけが増え続けていた。そして鉄二は夢のお告げで、東京都知事が感染者を異世界に放流していることを知った。それでピークアウトなどと言っているのだ。鉄二は怒った。そして日本を襲撃することを決めた。


 ○


 日本襲撃計画はすべての亜人たちに了承された。なぜかというと東京の人間は腐っていて嫌われているからだ。助けてやっても礼も言わない。文句ばかり言う。怒ったドワーフに首を切り落とされた日本人がいたが、誰もドワーフを責めなかった。
 鉄二は作戦に参加した。そしてようやく見つかった東京いきのゲートから、故郷へ五年ぶりに足を踏み入れた。


 ○


 東京は戦場だった。
 怒ったエルフたちは人間どもを焼き殺し、ドワーフたちは首を跳ねまくった。
 自衛隊はその機能をハーフエルフたちに奪われ、人間たちと感染者たちはただその数を減らしていった。
 鉄二は昔のバイト先の店長を見つけた。店長は鉄二に助けを求めたが、鉄二は店長の局部を切り飛ばした。バイト先の女子大学生に手を出したいけないチンポだ。切ってしまって構わない。股間から血飛沫をほとばしらせながらのたうちまわる店長を鉄二は黙って見下ろしていた。それからも知り合いが見つかるたびに惨殺した。誰も鉄二を助けなかった。見殺しにした連中だった。構わない。ぶち殺してしまっても。


 ○


 東京は廃墟となった。エルフやドワーフたちは引き上げつつある。鉄二は残留部隊として茨城を攻める予定だった。もうこの国はだめだ。ぜんぶ更地にしなければならない。そして鉄二と亜人たちで新しい理想国家をつくるのだ。アスファルトをぜんぶめくって農地をつくるのだ。アメリカが核兵器を撃ってきたが反射魔法で北米大陸は消滅した。ロシアは無条件降伏してきた。核がきかなければもう打つ手はない。
 鉄二は最強の傭兵となっていた。


 ○


 地球人類は絶滅した。エルフたちは協議の結果、人間の影響がなくなるまで数百年間、この星を放置することに決めた。それから移民計画を建てるという。ドワーフたちの変わり者の何人かは残って自分たちの研究に没頭するという。彼らが作ったものは未来でダンジョンと化しているだろう。冒険者たちの腕が鳴るところだ。
 鉄二は最後に、自分をフッた女が自分の足に取りすがって助けを乞うているのを見かけた。鉄二はそれを振り払い、女の首を切り飛ばした。俺を捨てたくせに、命乞いとは見苦しい。自分の男を見る目のなさを悔やんで死ね。
 鉄二は疲れていた。もう故郷はない。それでも心は安らかだった。もう誰も鉄二を傷つけないのだ。もう誰も。 


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