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第一話「君に幸あれ」

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青い空の下、2機の円盤が海の上を飛んでいた。
銀色に輝く2機の円盤には地球防衛機構のマークと、英字でAACRと描かれている。

「本部、こちらアークルシックス、ナインと指定空域に到着、これより飛行訓練を開始します」

円盤の密閉されたコクピットの中で、ヘルメット内のバイザーに映し出される外の景色と情報を確認して、青い戦闘服を着たパイロットが言った。

「本部了解」
「よし、ナイン、俺について来い」

パイロットは後ろに続く円盤にそう告げ、機体を一度空中に停止させると、一気に真上へと急上昇させる。

「了解!」

気合の籠った返答をした後続の円盤も、同じ軌道でそれを追いかけた。
音速を越える速度で急上昇を行ったにもかかわらず円盤内のパイロット達にはほとんどGは加わっていない。
先頭の円盤はある程度上昇すると急加速で前進し、急旋回、急降下、急上昇、空中での急停止を繰り返す。
後続の円盤はそれに対し、一定の距離を保ったまま完璧に追従していく。

「やるな」

振り切るつもりで操縦しているにもかかわらずぴったりとついてくる後続の円盤に、先頭の円盤のパイロットが苦笑する。
二人の操縦している円盤は操縦感覚が既存の戦闘機と異なり、使いこなすには熟練が必要な機体だ。
先頭のパイロットはベテランだったが、この機体をここまで使いこなせるようになるまで随分と苦労をした。
だが、後続のパイロットは新米であるにも関わらず、先頭のパイロットと同等の動きをして見せている。
相手が最初からこの新型機に則した訓練を受けて来ており、自分よりも長くこの機体に触れているとはいえ、先頭のパイロットはプライドを刺激されずにはいられない。
何とか一歩先んじている所を見せなければと、彼は更に高度な操縦技術を必要とする飛行を行う事にした。

「後続機、このまま超加速飛行の訓練を行う、ついてこれるか」
「問題ありません!」

即答で元気に返事され、先頭のパイロットは逆に驚いてしまう。

(自信満々だな、なら、見せてみろ!)
「よしカウント3で超加速する」

先頭のパイロットはそう宣言すると、操縦桿の横の機械を操作し、自機と後続機のヘルメットのバイザーにカウントを表示する。
そして3秒のカウントが終わった瞬間、2機の機体は同時にかき消えた。
今までも音速よりも早く飛んでいたが、それを更に上回る速度で飛行し始めたのだ。
これまでの飛行ではGを感じなかったコクピットの中にも常人なら即座に意識を失う程の強いGが発生し、正確な操縦を難しい物にする。
その中で先ほどよりも複雑な軌道で急上昇と急降下、急加速、急停止、急後退、ジグザグ飛行を連続して行う。
技術の全てをかけての複雑な飛行の数々を放って見せる先頭のパイロット。

(…嘘だろおい)

しかし、後続の機体はぴったりとついてくる。
パイロットはプライドだとか意地だとかを忘れ、言葉で言い表せない感覚に体を震わせた。
後続のパイロットの教官達が口を揃えてこいつは100年に一度の逸材と言っていたのを思い出す。
全く頷ける話だった、これ程までのパイロットに出会ったのは、彼で二人目である。

(まだまだいるもんだな、化け物ってのは)

パイロットは素直に自分の負けを認めると、後続に機体を減速させて訓練を終了し、本部へと戻る旨を伝えた。
凄まじいGを受けたにも関わらず、やはり元気のいい返事が返ってくる。



侵略宇宙人による大規模な破壊活動から10年。
侵略者が使った様々な破壊兵器や汚染による影響で自然界のバランスが乱れ、未知の巨大生物、怪獣の出現が世界各地で頻発していした。
更に、近年次々と好戦的な異星人が外宇宙から飛来し、人類文明を脅かしている。
人類はそれらに対抗すべく、超法的国際組織、地球防衛機構を設立した。
そして、その最前線で怪事件に立ち向かう精鋭部隊が、全危機対応特殊部隊「Anti All Crisis Ranger」通称「AACR(アークル)」である。



富士山麓、広大な滑走路とコンクリートの建造物が立ち並ぶ地球防衛機構極東支部、ベースセブン。
その中にある、近代科学の粋を極めて作られた円柱状の巨大建造物、セブンタワー。
その格納庫に、先ほど演習をしていた2機の円盤が鎮座している。
この円盤の名前はコンバットソーサー。
地球防衛機構が10年前の戦いで入手した侵略者の円盤の残骸を解析して作り上げた、戦闘、救助、偵察、潜水まで可能な万能円盤だ。
コンバットソーサーの周りを忙しく行き来する整備士達の中を、AACR隊員を示す青い隊員服を着た二人の若い男が歩いていく。
片方は頼もし気なベテランの雰囲気を、もう片方はそれよりも少し若々しくやる気に満ち溢れた雰囲気をしており、前者は胸と腕に「6」、後者も同じ部位に「9」と黄色い番号を付けている。

「改めて腕前を見せてもらったが、流石だな。だが、実戦は不確定要素も多い、ここでうまくいったからと言って慢心せず、訓練を怠るなよ」

数字が6の方、先ほどの演習でアークルシックスと名乗って先頭を飛んでいたパイロット、海矢 ハジメが、もう一人の隊員に向かってそう言った。
技術面においてもう自分が彼に教える事は何もないと思ったが、海矢は彼が自分の技量に酔う事を心配し、あえて厳しい事を述べたのである。

「はい!!これからももっともっともっと頑張ります!!」

それに対し、力強く、元気いっぱいに返事する若い隊員、和鳥 昇(のぼる)。
そのあまりの大声に、海矢は怯み、周囲の整備士達も何事かと一瞬和鳥に視線を向けた。

「お、おう、しっかりな」

とりあえず海矢は和鳥に頷き、彼の言葉を受け入れる。
極東の地球防衛機構にAACR隊が結成されてまだ半年。
各所から優秀な人材を集めているが、まだまだ部隊規模は小さく、和鳥も数日前に合流したばかりで、海矢はまだあまり彼の事を知らない。
なので今回の演習は和鳥の技術は勿論、その人となりを知る為の物でもあった。

(こいつがまっすぐ進んでいけるように、手助けしてやろう)

そして何事にもまっすぐな和鳥に海矢は確かな好感を持つ。
和鳥には、支えてやりたくなる様な、もっと成長を期待させる様な、そんな魅力があった。
和鳥の側も自分を教え導こうとしてくれる海矢に素直に好感を持ち、二人の仲が深まった、その時。
基地内に警報が鳴り響いた。



海面から巨大な魚の背びれの様な物を出し、巨大怪獣が波を立てて洋上を進んでいく。
怪獣は背びれの部分だけでも人の背丈よりもはるかに大きく、海中に隠れている部分は有に数十メートルはあるだろう。
それは巨体に似合わず高速であり、体のほとんどを水中に沈めているにも関わらず60ノット近い速度で進んでいる。
その背後に一機、ぴったりと怪獣を追尾するコンバットソーサーがあった。

「こちらアークルフォー、異常反応調査中に怪獣発見、目測で40mはある。高速で陸へ向けて進行中」

女性の声でベースセブンへそう報告したパイロットは、進行する怪物へ機体から光を照射する。
光は怪物の体をスキャニングし、ベースセブンへと情報を転送していった。



AACRの隊員服を着た二人の壮年の男が、セブンタワー内、AACR隊作戦室の壁一面に広がるモニターで、コンバットソーサーから送られてくる現場の映像とスキャンされた情報を見つめている。

「この怪獣は6年前に海上自衛隊の護衛艦を撃沈した怪魚、マグナフィザスだ」

隊員服に1と書かれている男性、極東のAACR隊隊長、仁藤 群平が情報を確認してそう言った。
それに対し、横に立つ隊員服の番号が3の男性、AACR隊副隊長、太田川 三太郎が頷く。

「爆雷も砲弾も効かなかった凶暴な怪魚の怪獣ですね。もし港や船が襲われたら大惨事になる、直ちに殲滅すべきかと」

怪獣は基本的に巨大かつ頑丈、強力であり、凶暴で人間を襲う。
これは10年前に宇宙人が怪獣発生の原因となる汚染を行った際、作為的にそうなる様にしていたからだという説が濃厚だ。
故に、怪獣は基本的に見つけ次第殲滅が原則となっている。
太田川の進言に仁藤が頷いた時、作戦室のドアが開きいて、海矢と和鳥が駆け込んできた。

「怪獣ですか」
「そうだ、パトロール中の石野が発見した。おそらくマグナフィザスだろう」
「マグナフィザス…護衛艦の爆雷攻撃に耐えた奴ですね」
「そうです、まっすぐ陸地へ向かっています」

海矢と仁藤の会話を聞いていた太田川が、モニターを操作して怪獣の進路予想図をモニターに表示する。

「既に進路上の漁村には避難指示を発令してありますが、できれば到着前に殲滅してもらいたいですね」

太田川はそう言って、モニターに怪獣の到達予想時間と避難完了の予想時間も表示した、二つの差は殆どない。
怪獣が何らかの理由で加速すれば、避難のすんでいない漁村が襲われ、多数の犠牲者が出るだろう。
仁藤はそれを見ると、先ほどより更に真剣な面持ちで海矢らを振り向いた。

「海矢、和鳥、直ちにコンバットソーサーで出撃、現地の石野と合流し、怪獣を殲滅せよ」
「「了解!」」

敬礼し、格納庫へと走り去る海矢と和鳥。
その後ろで、仁藤は部屋の角の方へ視線を向ける。
そこには5と記されたAACR隊員服を着た前髪で目が隠れている細身の男が立っていた。
男は全く気配をさせておらず、先ほど去っていった海矢も和鳥も、彼には気づいていない。

「津上、装甲救急隊もこれに追随、住民の避難を支援せよ」

男、津上 天次は仁藤の命令を聞くと力強く敬礼し、海矢等に続いて走っていく。



洋上を進む怪魚怪獣マグナフィザスは速度を上げ、波を立てながら陸地へと邁進していた。
それに対し、追随するコンバットソーサーはあえて接近し、怪獣の背びれの上スレスレを飛んで挑発する。
自分の頭上に何かがいる事を察したマグナフィザスは一度海中に潜った後、その魚の様な頭を海面から見せた。
上空のコンバットソーサーを視線で追うマグナフィザスに、コクピットの女性パイロット、石野 生は笑みを浮かべる。

「そうそう、私を見てなさい」

そう言って怪獣へ接近、すぐさま離脱するコンバットソーサー。
マグナフィザスはそれに対して鬱陶し気な叫びをあげる。
そこで、本部の仁藤から通信が入った。

「アークルフォー、武器の使用を許可する、アークルシックスとナインを応援に送った、それまで足止めしてほしい」
「了解」

余裕気に石野が返答したその時、突如としてマグナフィサスが海面から大きく飛びあがり、上空のコンバットソーサーへととびかかってきた。
石野は素早く機体を右側方に回避させると、横をすれ違うマグナフィサスに機体正面を旋回させ先端についたレーザー砲を向ける。

「あいつ…翼がついてる!」

マグナフィサスの全身を見た石野は驚愕した、その体には側面からヒレの様な巨大な翼がついており、更に尻尾にあたる部分には二本の脚らしき物まで見える。
完全に陸地に上がり、これを破壊できる様に進化しているんだなと石野は思った。
マグナフィサスは翼を広げると、重力に逆らって高度を上げ、再び陸地へと高速で飛行していく。
如何に翼があっても、この様な巨大な生物が自在に空を飛べるはずがない。
しかし、現にマグナフィサスは空を舞い、海中の生物にもかかわらず空気中でも平気で活動している。
これこそが怪獣が怪獣であるという由縁だ。
物理や生物の法則を無視し、人類に対して悪意と憎悪を持って行動する超生物、それが怪獣なのである。
マグナフィサスは速度を上げ、音速に近い速度で一気に漁村へと進んでいく。

「やらせるかい!」

それを阻止すべく、追随するコンバットソーサーが機首のレーザー砲を発射した。
光線はマグナフィサスの体表に命中し、激しい火花が散る。
それに反応し、急旋回してコンバットソーサーの方を向き、口から火炎弾を連続して放つマグナフィサス。
コンバットソーサーは縦横無尽、上下左右斜めに飛んで火炎弾を回避し、レーザーで反撃する。
レーザーは命中して火花が散るが、大きな効果は見られない。

「…硬いねぇ」
「アークルフォー、こちらアークルシックス、ナインと応援に来た」

石野が舌打ちした時、彼方から2機のコンバットソーサーが飛んできた。

「よっしゃ、それじゃあやっちまおう」

それを見た石野はすぐさまそれに合流し、自分を先頭に、海矢と和鳥を両翼につけた三角形の編隊を組む。

「単機の火力じゃダメだ、全機のエネルギーを結集してあいつの外皮を焼き払うよ、アークルナイン、トライフラッシュを使う、ついてこれる?」
「勿論です!!!」
「上等!行くよ!!」

3機のコンバットソーサーは編隊を組んだまま高速で移動し、マグナフィサスの後ろを取った。
マグナフィサスはコンバットソーサーのあまりの速度にその姿を一瞬見失い、反応が遅れる。

「トライフラッシュ!」
「ワン!!」

間髪入れずにかかった石野の号令に、海矢のコンバットソーサーから彼女の機体へ青いエネルギービームが放たれ、機体外周にある溝へ吸収されていく。

「ツー!!」

和鳥の機体からも緑のビームが放たれ、溝へと吸収された。
石野の機体の溝は赤く発光し始める。

「ファイア!!」

掛け声と共に一瞬、石野のコンバットソーサーの全体が真っ赤に輝いて、発射口から強力なビームが発射された。
青いエネルギー粒子と緑のエネルギー粒子は化合する事で爆発的なエネルギーを生み出す赤い粒子に変わる。
だが赤い粒子は長時間生成し続ける事ができず、単機のコンバットソーサーで飛行しながら生成できる青い粒子と緑の粒子は少ない。
そこで青い粒子を作り出す専門のソーサー、緑の粒子を作り出す専門のソーサー、それらを受け取って撃ちだすソーサーと役割を分担し、強力なエネルギーを生み出して放つ戦法、それがトライフラッシュだ。
ビームはようやくこちらの位置を見つけ、旋回しようとしていたマグナフィサスにさく裂し、巨大な爆発を起こす。
悲鳴のような雄たけびを上げながら火だるまになって海面へ落下し、大爆発を起こすマグナフィサス。

「やった!!」
「まだ!」

爆発の水柱を見て喜びの声を上げる和鳥を、石野が厳しい声で制した。
怪獣は異様に強靭な生命力を持ち、首や心臓を失ったり、バラバラになっても再生する者もいる。
機器を用いて完全な死亡確認を行わない限り、決して安心はできないのだ。

「すみません!死亡確認を行います!」

石野に注意を受けた和鳥はすぐに海面に光を放ってスキャンし始めた。
海矢と石野も水中探査メカの投下や光学スキャンを開始し、死亡確認や海水の汚染の度合いを測定する。
とはいえ、マグナフィサスはトライフラッシュを受けて肉片のほとんどが燃えつきており、誰の目にもAACRの勝利は明白だった。
石野が和鳥を叱ったのは、こうした確実な勝利を前にしても気を抜かない事で今後油断から不意をつかれない様にしてほしいという老婆心からだ。
しかし、言われた和鳥は素直にその言葉を受け止め、油断無く海面を警戒し、汚染度や怪獣の生体反応を調べている。

(素直でいいじゃない)

その姿を見て、石野も和鳥に好感を抱く。
和鳥はまだ若く、年相応にプライドも高いかと石野は思っていたが、周囲の言葉を素直に受け取り、自分を高めようという強い心を持っている。

(まだまだ伸びるねこいつ、これは将来が楽しさなぁ)

海中の汚染や怪獣復活の兆候が見られない事を確認しながら、石野は口元に笑みを浮かべた。



仁藤は太田川と共に、笑顔でモニターを見つめていた。
ほんの数年前まで、撃破する事は難しく、現れる度に甚大な被害を出していた怪獣達。
それを、今では何の被害も出さず、一方的に撃破できている。
10年前の侵略者との戦い以前から防衛組織に属し、怪獣対策の黎明期から戦っていた二人には感慨深い物があった。

「こちらアークルフォー、怪獣復活の兆候、並びに海域の深刻な汚染は見られず、これより帰還します」
「了解、諸君らの迅速な対応によって漁村の人々の生活への影響は最小限で抑えられた」

報告してきた部下に仁藤は賞賛の言葉を送ると、太田川へ握手を求める。
太田川がそれに応じ、二人が手を繋いだ、その時、緊急事態を告げるアラートが鳴り響き、モニターがベースセブンの上空を映した監視カメラに切り替わった。

「ベースセブン上空に、強力な次元震動が発生しています!!」

オペレーターの報告が示す様に空に紫色の電光がバチバチとスパークし、徐々に強くなっている。

「これは……10年前の!?」

その光景に、太田川が驚愕の声を上げた。
見間違うはずがない、10年前、侵略者が初めて現れた際に発生させた時空の穴が起こる前段階で発生していた現象である。

「総員、戦闘態勢!政府並びに地球防衛機構本部へ事態を報告しろ!コンバットソーサー隊と装甲救急隊へ連絡!直ちに本部へ帰還させろ!」

仁藤の号令にベースセブン各所に隠蔽、格納されていた対空砲やミサイル砲台が現れ、セブンタワー内部からは反重力戦闘機が次々とスクランブル発進していく。
反重力戦闘機とは、コンバットソーサー以前の兵器で、侵略者から得た反重力技術を用いて作られており。
コンバットソーサー程縦横無尽な飛行はできないが、従来の戦闘機を凌駕する飛行性能を持ち、滑走路を必要とせず容易かつ迅速に展開する事ができるのだ。




着々と戦闘態勢を整えるベースセブン、その様子をほど近い森の中から伺う、黒いスーツの男がいた。
帽子を目深に被り、鳴り響くサイレンを聞きながら、男はそっと口を開く。

「アレでは、ダメだ」

やがて基地上空の空間に黒い穴が開き、黒い巨大な物がゆっくりと降下を始めた。
それ目掛けて各所からミサイルと砲弾が雨あられと発射され、閃光が走り、爆音が響き渡る。



3機のコンバットソーサーは本部への帰路を急いでいた。
マグナフィサスを倒した勝利の余韻に浸る間もない急な呼び出しに、海矢の顔にも緊張の色が浮かんでいる。
10年前の侵略者と同じと言われて、緊張しない人間はこの世界にはいない。

「俺達だって10年前とは違うんだ…」

不意に無線機から和鳥の声が聞こえてきた。
その声は震えており、彼も激しい緊張に見舞われている事がよくわかる。
実戦経験が少ない状況で、この様な重大事件に遭遇したのだから、無理もない。
海矢はその事を思い出し、息を整える。

「そうだ、変に頑張りすぎるなよ」
「はい!!」

海矢が和鳥を励ました時、石野から海矢へ個別の回線で通信が来た。
何事かと一度和鳥との回線を切り、それをとる。

「あんたも後輩できたからって変に頑張りすぎないでね」

真剣な声音でそう言ってくる石野。
大丈夫だ、と返そうとして、自分がそこでわずかに苛立った事に海矢は気づいた。
石野は海矢と同期であり、自分の事をよく知っている人物だ、そんな彼女が心配してくれているのだから、感謝し、自分を見直しこそすれ、苛立つのはおかしい。
理性よりも感情が優先された時点で、自分もまたこの事態に動揺しているのだと海矢は自覚する。

「わかった、ありがとう」
「うんうん、それでよし」

素直に彼女の言葉を受け入れる海矢に、石野は余裕気に応じた。
敵わない、そう海矢は思った。
だが、彼女とて人間だ、どこで崩れるかわからない。
どんな事があっても冷静に対処しよう。
そう決心した海矢の前に、否が応でも動じざるえない光景が広がる。
爆発し、煙を上げる基地施設の数々。
撃墜され、地上で燃える反重力戦闘機。
そして黒煙の中を侵攻する黒い人型の怪物…。

「何だアレは…」

その怪物は、これまで幾多の怪獣を見てきた海矢から見ても、異様な姿をしていた。
全体的なシルエットは人間の様だが、両手が大きく、5本指の先は棘の様に尖っており、体の質感は金属質で真っ黒い。
一際異様なのは、人間の頭部にあたる部分が透明な球体になっており、中で赤や青の炎の様な物が燃えている所だ。
全身とてつもなく頑強な様で、基地砲台や上空の反重力戦闘機から放たれるミサイルや砲弾を受けても全く効果が見られない。
黒い怪物は自分を攻撃してくる物に頭の球体から紫色の火炎弾を高速で何発も放ち、戦闘機を撃墜、砲台、施設を破壊しながらセブンタワーへ迫っていく。

「これ以上好き勝手させるな!!」
「おう!」
「了解!」

石野の号令で、黒い怪物の背中へレーザーを放つコンバットソーサー各機。
レーザーは命中するが、黒い怪物はたじろぎもせず、頭の球体から真後ろのコンバットソーサーへ火炎弾を連射してきた。
死角から撃ったはずの攻撃に即座に反撃されたにも関わらず、それに素早く反応し、上下左右に飛び回ってそれを回避、更にレーザーで反撃するコンバットソーサー。
レーザーは今度はその頭部に命中するが、効果は見られない。
そうしている間にも黒い怪物はセブンタワーの前に立ち、勢いよくその巨大な手をタワーへと振りかざした。
基地のバリアーが発動してその一撃を弾くが、怪物は更に何度もその尖った指でバリアーを攻撃する。
激しいスパークを起こし、徐々に弱弱しくなるバリアー。

「アークルシックス、フォー、トライフラッシュを使いましょう!!」

本部施設の危機的状況を見て、和鳥が先輩達に提言した。

「よし!」
「私が撃つよ!!任せな!」

二人はそれを快諾し、石野が再び最後の一撃を撃つと名乗りでる。

「行きます!ワン!!」

まず和鳥の機体から青いエネルギービームが石野の機体に放たれた。
それに反応し、黒い怪物は再びコンバットソーサー目掛けて紫の火球を放ってくる。
しかし石野は青いエネルギーをうまく受け取りつつ攻撃をかわし、和鳥も容易く攻撃を回避していく。

「ツー!!」

しかし海矢は何とか回避はしていたものの、今の石野との距離ではエネルギーの受け渡しが難しいと判断し、和鳥もよりも石野に近づいて緑のエネルギーを発射した。
エネルギーを石野機は確かに受け取ったが、海矢機が石野機に近づき、分散していた的が集まった為、紫の火球の弾幕の密度が上昇してしまう。
石野はそれを難なく回避するが、海矢の機体を火球が掠め、機体下部から炎が噴き出した。

「うわ!」
「先輩!!」

黒煙を上げ、高度を落としていく海矢機に、動揺して声を上げる和鳥。
石野は動じるよりも先にトライフラッシュの光線を黒い怪物へ発射する。
光線は命中して爆発し、怪物の背中の表皮に白いヒビが入った。

「今だ!!」
「アークルナイン待て!」

海矢が撃墜された事で冷静さを欠いた和鳥は、石野の制止も聞かずに黒い怪物へ肉薄し、ヒビ目掛けてレーザーを連射する。
怪物の背で何度か火花が散り、ヒビから煙が上がるが、しかし、黒い怪物は致命傷を受けた様子はない。
それどころか黒い怪物はすぐさま振り返り、右手を胸の前にかざして、拳に紫色の炎を灯した。

「何をする気だ!?」

何か大きな事をする前動作だと察した和鳥はすぐさまコンバットソーサーを急後退させて距離を取ろうとする。
だが、それより早く黒い怪物が右手をコンバットソーサーの方へ向け、そこから紫色の光線を勢いよく発射した。
和鳥はそれを直上に素早く移動してかわそうとするが、光線も直角に曲がってコンバットソーサーを追尾し、その底面にさく裂する。
激しい爆発が起こり、コンバットソーサーは炎上しながらベースセブン近郊の森へと墜落していく。




不時着したコンバットソーサーから這い出た海矢は、和鳥のコンバットソーサーが落ちていくのを見ていた。
炎上する機体からパイロットが脱出する様子はない

「和鳥!!」

偶然にも和鳥の機体は自分の近くへと墜落しようとしていた為、海矢は消火器を手にそれを追って走り出した。
コンバットソーサーのコクピットは複雑な軌道で飛ぶ事で生じるGを激減させ、パイロットを守る為に特別に頑丈に作られている。
もしかしたらあれだけやれていても助かるかもしれない、そう一縷の望みを持って、必死に落ちていくコンバットソーサーを追う海矢。
やがて和鳥のコンバットソーサーは木をなぎ倒しながら森の中に墜落した。
爆発する様子はないが、自動消火装置が作動していないらしく、凄まじい炎に包まれている。

「くそお!」

消火器を放ち、炎の勢いを弱めようと海矢は試みたが、炎の勢いは消火器程度では全く弱まる気配はない。

「脱出しろ!!和鳥!!こんな所で死ぬな!!和鳥!!」

燃え盛る炎の中へ叫ぶ海矢。
あんなまっすぐないい男に、あんな将来有望な男に海矢は死んでほしくない。
海矢が炎の中に突っ込もうとした、その時、何者かが海矢の横を突っ切り、炎の中へと入っていった。
凄まじい勢いで現れたその人物は炎を物ともせずにコンバットソーサーにとりつき、高温になったハッチをこじ開けて中に侵入していく。

(何者だ?)

燃え盛る炎に阻まれてコンバットソーサーに近づけない海矢には、その光景を眺めている事しかできない。
やがて、炎の中から和鳥を抱いた黒いスーツの男が勢いよく飛び出してきた。
長時間炎に直接あぶられていたにもかかわらず男には何の外傷も無く、明らかに人間ではない。
銃に手をやる海矢。

「よそう、我々が争っている時ではないはずだ」

男を手で制し、ゆっくりと首を振りながらそう言った。
帽子を目深に被っている為表情は伺えないが、その雰囲気は穏やかであり、敵意を感じない。
それでも海矢は警戒を解かなかったが、男が和鳥を地面に寝かせた事で、和鳥への心配が男への不信感を上回り、彼は和鳥へと駆けよった。

「和鳥!!」

四肢や首が折れている様子はなかったが、和鳥はぐったりとしていて、意識がない。
海矢が呼吸を確かめると、既に息が止まっており、よく体を検めると、肋骨も損傷し、心臓も止まっている。

「…最早助からない」

心臓マッサージを始めようとする海矢に、男が冷徹な言葉を投げかけてきた。

「そんな事!!」

心無い言葉に海矢が怒りを見せると、男は懐から青いパスケースの様な物を取り出し、倒れている和鳥の胸にそれを置く。

「彼の命を救い、力を授けよう、その代わり、勝手ながら使命を背負ってもらう」

そう言って、パスケースの中にある銀と赤のカードの中心にある、青い水晶体の様な部分を押す男。
するとパスケースは黄金に光り輝き、和鳥と、海矢、男をその光で包み込んでいく。

「何が…何が起きて…」

驚愕する海矢の周囲で光は水面の様に波うち、揺らめいている。
それはまるで黄金の海の中に入った様だった。

「我々は彼を通じて、君達を見ている、我々の授けた力を使って君達の手で、平和の為に戦ってほしい」

男がそう言うと、和鳥の体が光り輝いた。
余りの眩しさに海矢は両手でを顔を覆う。
やがてその光が収まると、何か巨大な物が砂煙と共に近くに落ちた音がした。
砂煙が収まるのを待って手をどけると、海矢の視界一杯に何か巨大な赤と銀の建造物が現れる。
いや、建造物ではない、それは足だった。
彫像の様な、人間に近い形をした足だった。
足の主を見上げると、金色のプロテクターをつけた、銀色の巨人が現れる。

「ウルトラマン…」

それは間違いなく、10年前に現れたあの巨人、ウルトラマンだった。
そびえたつ巨人は、しかし自身の体を改めたり、周囲の景色を恐々と見たりと、まるで狼狽えている様である。

「まさか…和鳥なのか?」

海矢の呟きに反応し、ウルトラマンが自分を見下ろしてきた。

『海矢先輩!』

声とは違う何か、波動の様な物がウルトラマンから海矢の脳内に響く。
音は無かったが、和鳥が喋っているのだという感覚を海矢は確かに感じた。

「和鳥…」
『先輩……俺、今このウルトラマンと一体化しています』
「ああ……ああ、その様だな!」

自分よりも、異様な状態に置かれている和鳥の方が不安だろう。
そう考えた海矢は何とか平静を保とうと、精いっぱい頼もし気に和鳥に返答する。

『今俺の脳内にこのウルトラマンの力の使い方が流れ込んできています、俺……やってみます!!』
「え!?おい、和鳥!!」

しかし、次の和鳥の言葉に海矢は激しく動揺させられた。
異様な状態に置かれているにも関わらず、動揺するどころか即戦いを決意する和鳥の余りのまっすぐさに、海矢はただただ困惑する。
そんな海矢を足元に残し、ウルトラマンとなった和鳥は黒い怪物へと駆けだしていく。
セブンタワーのバリアを攻撃していた黒い怪物は背後から突進してきたウルトラマンへの対応が遅れ、胴体にタックルを見舞われる。

「シュワッチ!!」

黒い怪物の胴に組み付き、力いっぱい押して基地から引きはがしていくウルトラマン。
その様子は勿論、空を飛ぶ石野のコンバットソーサーと、セブンタワー内の仁藤と太田川にも見えていた。

「ウルトラマン!?加勢してくれるの?」

石野にはウルトラマンがセブンタワーを守り、ベースセブンを危機から救おうとしている様に見えた。
しかし、ウルトラマンの正体も目的も、10年前から今日まで一切わかっていない。
状況だけで味方と決めるのは早計なので、とりあえず石野は仁藤へ指示を仰ぐべきだと判断する。

「こちらアークルフォー、本部、指示を!本部!」

だが作戦室で状況を見ていた仁藤もまた、突然の状況変化に困惑していた。
兎に角ウルトラマンに関する判断材料が少なすぎるので、仁藤にもすぐには判別がつかないのである。

「アークルフォー、並びに全守備隊へ、こちらからウルトラマンを攻撃をするな、ウルトラマンが我々に対して攻撃的な行いをしない限り今は様子を見るんだ!」

とりあえず、仁藤は部下達に様子を見る様呼びかけた。
黒い怪物とウルトラマンは敵対している様子だが、ウルトラマンがこちらの味方であるとは限らない。
もしどちらも敵であるのなら、両者が戦って消耗した所を叩くべきと判断したのである。

一方、ウルトラマンは怪物に引きはがされ、激しい格闘戦を展開していた。
黒い怪物が巨大な尖った指で放つ斬撃を両手で受け止め、蹴りを見舞って吹き飛ばすウルトラマン。
蹴り飛ばされて地面に転がった怪物は、反撃に頭部から火球を放つ。
それに対しウルトラマンの両肩のプロテクターが反応してそこから光線が発射され、迫る火球を消し飛ばした。
更に光線は怪物の体に命中して爆発を起こす。
爆発に苦しみ、苛立ちながら、怪物は腕に紫色の炎を灯すと、和鳥のコンバットソーサーを撃ち落としたあの光線を撃ってきた。
再び両肩のプロテクターが反応して光線が放たれるが、怪物の光線はそれを物ともせずに進み、ウルトラマンの胸部にさく裂する。

「グアッ!?」

巨大な爆裂が胸元で起こり、勢いよく吹き飛ばされて地面に倒されるウルトラマン。
胸についている水晶体が青から赤に変わり、危険信号の様な物を鳴らしながら点滅し始める。

「和鳥!!」

その様子に、海矢は仁藤達に事情を説明して援護してもらおうと通信機に手を伸ばすが、何者かがその手を掴んだ。
あの黒いスーツの男だった。

「悪いが、彼のあの力は他言無用にしてもらおう」
「何故だ?」
「あの力の所在を知る人間が増えれば、それだけ力をめぐる争いが起きやすくなってしまう」

男の言葉に、海矢の動きが止まった。
確かに、ウルトラマンの力を知れば、欲しがる国家や団体は多いだろう。
AACRの仲間は信頼できるが、知ってしまった為に何らかの理由でやむ負えず漏らさなければならなくなる場面が今後出てくるかもしれない。
万一ウルトラマンの力が戦争にでも利用されたら、とんでもない事になる。
秘密を和鳥と自分の胸の内にだけ秘めさせる事は、決して間違いではないだろう。
しかしウルトラマン、和鳥は今まさに苦しんでいる。

「心配ない、勝負はこれからだ」

海矢の心を読んだかの様に男は涼し気にそういった。
その言葉に応える様にウルトラマンは立ち上がり、両手を握ると、胸の前で力いっぱいそれをクロスさせる。
黄金の光がウルトラマンの全身からあふれ出し、それが両手に凝縮して、そこで球体になっていく。
黒い怪物はその様子に狼狽え、再び右手に紫の炎を灯して、三度あの光線を放つ。
ウルトラマンはそれに対して胸の前にできた黄金の球体から手を抜くと、それを力いっぱい怪物目掛けて両の拳で打ち出した。
黄金の球体は紫の光線を弾きながら黒い怪物に直進し、黒い怪物の体に命中して大爆発を起こす。
黒い怪物は木っ端微塵に吹き飛び、塵も残さず消滅した。

「ゴルド…インパクト…」

不意に、作戦室のモニターでその光景を見ていた仁藤が画面を指さしながら呟いた。
作戦室内のオペレーター達と太田川の視線が仁藤に集中する。

「あの光線の名前だよ、黄金の衝撃波だから…、ゴルドインパクト」
「ああ、なるほど」

余りのに凄まじい光景に、仁藤は激しく動揺していた。
なのでどういうわけか今ウルトラマンの技の名前を命名し、太田川もただそれを肯定する。
オペレーターの面々も頭の中が真っ白になっており、誰もがただただ茫然としていた。
数秒の沈黙の後、一番最初に仁藤が我に返る。

「しまった!!そうだ!!警戒態勢を敷け!!」

その一言に、止まった時間が動き出したように一同は我に返り、慌てて動き出す。

「巨人に対して所属と目的を問いただすんだ!」

太田川が石野に指示を出すが、しかし実行される前にウルトラマンが空に飛びあがってしまう。
飛翔し、加速して空の彼方へと飛んでいくウルトラマン。

「石野、追えるか?」
「もうやってます!」

石野のコンバットソーサーがすぐさま後を追うが、差はぐんぐん開き、やがてウルトラマンは黄金の光と共に消えてしまった。

「目標消失、目標消失!」

無線機から聞こえてくる石野の声に、海矢は安堵する。
どうやらとりあえずウルトラマンの秘密を守れたらしい。
そう安心していた海矢の肩を、何者かが叩いた。
大いに狼狽え、思わず体勢を崩して転倒しかける海矢を、何者かは素早く支える。

「大丈夫か?」
「津上…」

そこにいたのは津上だった。
彼の後ろには赤十字のマークが付いた白衣姿の兵士が数名待機している。
彼等は装甲救急隊という救急救命チームで、怪獣や宇宙人の破壊が起こる中で人命救助を行う救急救命のエキスパート達であり、津上はそのチームの隊長だ。

「和鳥は?」

海矢に問題ないと見ると、すぐさま和鳥の行方を尋ねてくる津上。
彼等は元々和鳥を助けに来る過程で海矢を見つけたのだ。
それに対し、海矢は突然の事だったのでいい作り話が浮かばず、返答に困る。
もしかしたら何か助け舟を出してくれるかとスーツの男を視線で探したが、既にどこかに消えてしまっていた。
一刻を争う状況である為、動揺する海矢を押しのけて津上がコンバットソーサーの方へ向かおうとした、その時。

「おーーーーーい!!」

元気いっぱい、手を振りながら和鳥がコンバットソーサーの方から駆けてきた。
余りの元気な様子に、津上達装甲救急隊は勿論、海矢も仰天する。
一度死にかけ、ウルトラマンに変身するという凄まじい超常現象に見舞われたにも関わらず、和鳥が飾り気のない綺麗な笑顔で走ってきたからだ。

「和鳥、お前…来い!すぐに!」

津上は和鳥が自分達の下につくなり、すぐに装甲救急車へと連れていこうとする。

「いやいやいや、大丈夫!大丈夫ですよ!!」

それに対し、いい笑顔で応じ、健康さをアピールして見せる和鳥。

「何故だ?アレだけ機体にダメージを負って、無事なはずがない!!」
「ウルトラマンが助けてくれたんです!!」

津上の質問に対し、再びいい笑顔で応答する和鳥。
その言葉に周囲は大いに納得した。
ウルトラマンは不可思議な超能力をいくつも持っていて、過去にはその超能力で多くの人命を救助している。
目的はともあれ、ウルトラマンの行動パターンだけを見て考えれば、今回和鳥を助けていたとしても何らおかしくない。

「それは運がよかったな」

そう言って、海矢は和鳥にウィンクした。
和鳥はそれに応じて懐から一瞬、あのパスケースを出して見せ、力一杯頷いて見せる。
そうして、二人はお互いが秘密を共有している事を確認した。

「だが、精密検査は受けた方がいい。海矢、君もだ」

とりあえず和鳥が無事だったので緊張がほぐれたのか、津上は先ほどよりも幾分か明るい調子でそういって、海矢と和鳥を装甲救急車へ連れていく。
それに従って歩きながら、和鳥は海矢に右手を差し出した。

「先輩、これからもよろしくお願いします!!」
「ああ…よろしく!!」

二人は固く握手を交わし合う。
物陰から二人の様子を伺っていた黒いスーツの男はそれを見ると、優しい笑みを浮かべて頷いた。

「願わくば、彼らの未来に幸あらん事を」

そう呟いて、男は歩み去っていく。

こうして、新しいウルトラマンの戦いは幕を開けたのだった。
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