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VOL.11 交渉、そして疑惑

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VOL.11 交渉、そして疑惑

報復という名の十字架に架けられたスクール水着姿の天使―――。目の中に入れても痛くないほど愛おしい孫娘は、今、脅迫の名のもと明らかにロリコンめいた二人の鬼畜から、性的な悪戯を受けている。その様子がスマホの画面に余すところなく映し出され、柳原は心臓をえぐられるような、そして腸が煮えくり返る思いだった。
『あッ、あッ…いやん…はッ…くぅッ』
若葉は十の字に拘束された身体を悶えさせ、ネイビーブルーの布地を這う責め苦から逃れんとする。恐怖に震える12歳の冷たい肉体。あられもなく露出させられた薄紫色の乳首は、屹立を続けている。それは鬼畜たちの所業に身を凍らせているからだけではない。
『夢みてえだなぁ、現役小学生のナマ乳首をこちょぐりの刑にできるなんてさぁ!』
SMホテルだけに備品も豊富で、くすぐりようの長い刷毛を手にしたキモヲタが、快哉を叫ぶ。

『下品だねぇ、君。でもくすぐりにはテクニックがいるんだよ』
インテリめいた口調で気取りつつも狐顔の男は丹念に執拗に、12歳の乳首を狙いすます様にして刷毛を小刻みに振動させる。若葉の怯え切った表情が、時折羞恥心に歪み、何かを堪えるように唇を噛み締める様子が意地らしい。
『いいねえ、腋毛の生えていないつるっつるの脇の下をこちょぐっちゃいまーす!』
磔板の背後からキモヲタが若葉の無防備な、すべすべの二の腕から穢れの無い絹のような肌を刷毛で快擦し始める。
『くう――――ッ!』
若葉が天を仰いで身悶える。拘束具が軋む音が痛ましい。二人の変質者からいたぶられる愛らしい美少女という図は、さらに上級国民の怒りに拍車をかけた。

「あんたはあの事故と、どういう関係が…」
『聞いているのはこちらの方なんだよ、孫思いのおじい様?』
指令役の男は柳原の問いかけをむべも無く拒否した。
「頼む、孫にだけは…。若葉だけは解放してくれ、お願いだ、この通り、頼む!」
事態を直視できぬ柳原は、テーブルに突っ伏す様に首を垂れた。その光景の一部を確認した指令役の男は微かに満足げに微笑みつつ、追及を続ける。
『今あんたの謝罪を望んでいない。その前に、あんたの罪状を告白してもらう。あの日、貴様は一度、現場を離れているな? 被害者の救護も救急への通報も行わず、車ごと現場を離れている…。何をしていたかを正直に白状しろ』
指令役の言う通り、柳原はあの日、あの時、まだエンジンだけはかかる車をターンさせ、国道へ出るとしばし車を走らせた。そして数百メートル先の廃工場の駐車場へと車を止めたのだ。

事故現場を離れた理由、それを白状することは柳原自身の身を焼かれるも同然の事であり、それを話すことだけは、憚られるのだ。
『いいだろう、白状する気が無いのならこちらにも考えがある。若葉ちゃんが悲鳴を上げる羽目になることだけは約束しよう。また連絡する』
男は通話を止めようとして、最後にさらなる脅迫で追い打ちをかける。
『おっと、間違っても警察になど通報しないほうが良いぞ。俺らがパクられれば、容赦なくあんたの孫を拉致った理由を話すし、裁判になろうと懲役を喰らおうとそのことを訴え続ける。さすがにあんたの存在も罪状も世間の衆目に晒されるだろう。…それに、あんたの傍らにいるメッセンジャーが受けた辱めも、孫娘が受けた拷問の内容も、な…』
孫娘と、目の前にいる若い娘、双方が味わった耐え難い傷が世間に晒されることをも、脅迫の材料にする鬼畜な男に、柳原は味わったことの無い屈服感を覚えるのだった。
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