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ある姉妹の話

世界に原因不明の感染症が蔓延し、暴徒と化した人々が溢れた世界です。
ある二人に姉妹が小さな小屋に追い詰められました。命からがらなんとか逃げ込みましたが、食糧は両手で数える程度。
さらに、姉は妹を守って感染者に腕を噛まれて感染していました。自分の死期を悟った姉は、自分の死後に妹は一人で何をしていいかわからなくなり生きていけなくなるのではないかと考え、先手を打つことにしました。
それは、自分がいなくても妹に生きる希望と自信を持ってもらう事。
姉から見て、妹は普段から姉に頼る事で安心し自分の可能性を知らないように見えています。
感染の症状が進み、満足に喋れなくなっても懸命に励ましますが、口下手で高圧的な姉は最後まで自分の真意を伝えることはできませんでした。
最後に、姉は自分の事を妹に縛らせます。危ないので自分にフルフェイスのヘルメットを被せるように妹に言ってその後絶命しました。

――姉死亡。――

妹は一人になり途方に暮れます。自殺しようとしますがやっぱり怖くて上手くいきませんでした。
小屋の外ではゾンビの声がひしめき、この追い詰められた状況を再認識させられます。
妹は縛られた姉の亡骸の横でうずくまり、孤独に怯えきってしまいます。

――数日後――

食糧も尽きようかというある日、姉の亡骸が動き出します。添い寝をしていた妹はビックリして荷物をひっくり返してしまいました。縛られた姉の亡骸が頭や腕を掴み掛かってくる中で、荷物から飛び出た姉の日記を見つけて取り出します。

外では姉の声に反応した感染者たちが小屋に押し入ろうと押し寄せます。ドアは軋み、小さく割れた木片が飛び散ります。

構わず日記を読む妹。そこには口下手な姉が妹への文句や指摘をつらつらと書き綴っています。
さらに読み進めると気丈な姉の弱みなど、今まで見たことのなかった一面が書かれていました。

外の物音に連鎖して感染者がさらに集まり、小さな小屋のドアは今にも壊れてしまいそうな勢いです。

日記は後半へ進み、姉自身のことへシフトしていきました。姉は元々両親がいなかったこの姉妹には、先導者が必要だと考えていたようです。恐怖も戸惑いも無い先導者が。話し合う暇はなくこの世界の状況を切り抜けるにはそうするしかありませんでした。
だからこそ妹の可能性を奪ってしまっているのでは無いかとも考えていたようです。

文字が書かれた最後のページに差さしかかります。

「私は弱いから恐怖に動かされてしまったんだと思う。でも貴方はきっと違う。
あなたがあなたを動かすの。
最後のお願い。本当の貴方をお姉ちゃんに見せて。」

日記を閉じた妹は立ち上がります。もう姉のことは見ません。
装備を整え、前に進む準備を始めました。

その時、入り口の金具が弾け飛び感染者が雪崩れ込んできます。
しかしそこに妹はいません。ヘルメットをかぶって縛られた感染者が一体いるだけ。
なぜか割れている反対側の窓から風が吹き込みます。

部屋に入った感染者の背後から影が。それは妹でした。
感染者の不意を突き、一網打尽にした妹は部屋を後にしました。

姉のヘルメットには外れたドアから差し込む逆光で妹の影が映ります。
影はどんどん小さくなり。やがて見えなくなりました。



おしまい。
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