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その5

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 安楽死対象者収容施設『ライフ&サイクル』の敷地内に、一台の車が入ってきた。
 検問所を通過すると、車は鬱蒼とした森に入っていった。
 しばらくすると、森の中から若い男と数人の黒ずくめの男達が出てきた。
 若い男の後ろ手に組まれた両手には手錠がかけられており、黒い目隠しを施されていた。両足は拘束されていなかったが、ぐったりした様子で、黒ずくめの男達に肩を抱きかかえられながら歩を進めていた。


 若い男は、健二と変わらない年齢だった。
 彼もまた、これから安楽死を『許可』されることになるのだ。


 安楽死対象者収容施設『ライフ&サイクル』。
 今日もまたこの施設に、何人もの人間が送り込まれる。
 時折、施設の中が静まり返る。
 そんな時、ある近隣住民はこう言う。
「『ライフ&サイクル』の周辺は、いつも物静かなのですが、午後二時から四時までの間、うんと静かになるのです。その時間帯に耳を澄ますと、ストン、という音が施設の中のどこかから聞こえてくるのです。あの音は、一体何なのでしょう。私はあの施設で行われていることをよく知りません。しかし、ストン、という音を聞くと、何だかとても胸が苦しくなるのです。理由はよくわかりません」


おしまい
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