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ここの人たちはずいぶん性に開放的みたいだがそれはいいのだろうか

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 女の子は向きを変えて、また木の枝などをかき分けて進み始める。
 僕はその後についていく。
 やがて、けもの道のような、少し歩きやすいところに出た。

「ここからは、あんまり音を立てないで行こうね」

 女の子が笑顔で、ささやくように言った。
 どういうことなのだろうか、疑問に思いながらも、僕は足音を殺して彼女のあとを追う。

 やがて、前方に丸太小屋のような建物が見えてきた。
 その小屋にも周りの木々と同じようにツタが絡まっていて、なんだか自然の一部のようにすら感じられた。

 僕と女の子と、二人足音を立てないように小屋に近づいていった、その時だった。

「ああっ! やめて!」

 か細い、女の声。
 それが、小屋の中から聞こえてきた。

 何が起きているのか。
 女性が、暴力を振るわれようとしているのか!?

 僕は忍び足の中腰の姿勢からすっと立った。
 助けに行かないといけない、と思ったのだ。
 僕は隣りにいる女の子の表情をうかがった。

 以外なことに、彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべていた。
 ……緊急事態ではないのか?
 疑問に思いながらも、僕は動かずに、様子をうかがった。

 すると、さっきの女の人の声が聞こえてきた。

「……やめないでよ……」

 どういうことだろうかと僕が混乱していると。
 女の甘やかな喘ぎ声と。
 体と体がぶつかり合うパンパンという音と。
 みだらな水音が、聞こえてきた。
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 察しの悪い僕でも分かった、誰かが小屋の中でセックスをしているのだと。
 多分、恋人同士か。

 僕の横に立つ女の子はニコニコと微笑んでいる。
 最初から、声の正体がこれだと、気づいていたのだろう。

「壁の隙間から覗けるよ?見ていく?」
 女の子はとんでもない提案をした。

「い、いや、いいよ」
 僕は脳内の悪魔のささやきをノックアウトして、そう言った。

「ん? そう?」
「うん、覗くとか、悪いよ」

 僕はそう言って、もと来た道を引き返し始めた。

「ふうん、あなたは真面目な人なんだね」
 女の子は僕の横まで追いついてくる。

「まあ、そうかな……」
 そう答えながら僕は自分の心理について考えた。
 たぶん、僕はそれほど真面目ではない。
 周囲に誰もいなくて、自分ひとりだったら、僕はセックスを覗いていたかもしれない。
 単に、セックスを覗いている僕を、誰かに知られたくなかったのだ。
 ほんの少し自分が嫌になる。

「早く君たちの村に行きたいな。色んな人と話がしたいんだ」
 僕は自分の気持ちをごまかすように、そう言った。

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