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第一話

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タイトル:無題_1.txt   .exe   作者名:ぶジェ
モンスターの名前(種族):chentworchene  属性:肉
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朝霧に濡れて露を結ぶ草の中に身を隠し、濃厚な草の匂いに蒸せつつも「狩人」はじっと獲物を狙っていた。
狩人の名は、肉竜「ケントオルキーン」。森の木々のような鬱蒼たるその身体は暁を艶かしいばかりに反射する鱗で覆われ、引き締まった筋肉のラインは優美ですらある。
その紺碧の瞳に映るのはボリューム感あふれる肉付きの鷹の群れ。緊張感ある所作で巨大な翼を広げ、大地を一蹴して跳躍した。
黒い翼が慌しくはためくが、蒼き竜も翼を一振り、ふわりと舞い上がると鋭く獲物を捕らえて巨木の枝に軽やかに着地し翼を閉じた。
かの竜の強靭な顎の筋肉は、いとも容易く鷹であったものの皮膚を突き破り、肉を切り裂き、骨格を砕いた。
血をすすり、肉を呑み、骨粉で牙を漱ぎ、ひと時の充足を得た竜は、食休みを取るべく横になろうとした――
――したのだが。
鋼のような筋肉はがくがくと痙攣し、力を失って地に塗れた。
強靭な竜を死に至らしめたのは、無常かな、鳥インフルエンザウィルスであった。

こうしてケンタッキーのチキンは皆様のご家庭に届けられています。
3, 2

  






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タイトル:吾輩はポチである   作者名:ペペロンチーノ北島
モンスターの名前(種族):ポチ   属性:ギップル召還系
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 吾輩はドラゴンである。名前はまだ無い――などと続くことはなく、ポチという名がある。
犬の様な名前であるが、十数年も呼ばれ続けると愛着も沸き、割かしと気に入っている。

 吾輩はドラゴンであるから、真に屈辱の至りであるが、あの意地汚い人間共に追い回される運命にある。
奴等は金の為に、ドラゴンのウロコ欲しさに必死なのだ。
生後三ヶ月、しかも病院では未熟児との診断を受けていた吾輩に、奴等は容赦なく矢を浴びせ、この森に叩き落とした。
血も涙も無いとは人間の言葉であったか、正に奴等は冷血動物である。
思い返していると、はらわたが煮えくりかえり、ガオンと一声叫びたくなった――が、背中にふにゅっと、より一層押しつけられた、柔らかな暖かみを感じ、堪える事にした。

 吾輩の背中ではいつもの様に一人の女が眠っている。
繰り返しになるが雌ではなく女だ。
名をリーベロッテと言い、吾輩は彼女をリーベと呼ぶ。
年の頃は十八になるはずで、腰程に伸びた金色の髪は秋の小麦畑の様に艶を持って輝き、なかなかに愛嬌のある顔も良く、何より、豊満なバストが実に高評価である。
本来なら、吾輩の様な高潔なるドラゴンの背に人間風情が跨る、ましてや昼寝などと、言語道断であるが、彼女は吾輩の名付け親であり、同時に命の恩人でもあるから、許すより仕方が無いのである。
決して、うつ伏せに眠る癖のあるリーベの胸が背中にふにゅふにゅと当たるからとか、そういう理由で吾輩は喜んでいない。

 リーベと出会ったのは、吾輩が人畜生に叩き落とされた翌日、霧の深い朝であった。
吾輩は未熟児であったし、何より高度百メートル近くから叩き落とされ、色々と危うい、具体的にはナカミをぶちまける寸前の所までいっていたのであるが、親に使わされてキノコ狩りに来ていたというリーベが偶然に吾輩を見つけ、救ってくれたのである。

 リーベの家は貧しく、食う物にも困る始末で、それだから、朝っぱらからキノコ狩りなんぞをしていたのだろう。
であるにも関わらず、吾輩を殺せば大金を得ることも出来るのに、ちいともそんな気を見せなかった。
それどころか、動けない吾輩に貴重な肉やら食べ物を運んでくる始末なのだから、常識的に考えて、リーゼは頭の悪い娘であった。
それは今でも変わらずに、リーベは頭の悪い娘で、けれど胸は大きい。

「ポチ、ポチ」

 呻く様なリーベの声がして、ふにゅふにゅした感触が無くなる、起きあがったらしい。

「頼むから、いつぞやの様に寝ぼけて滑り落ちないでくれよ」

 吾輩はリーベの身体に尻尾をそっと巻き付けて、地面に下ろしてやる。
出会った頃は、それでもやはり――リーベも子供であったから――吾輩の方が二倍は大きかったが、今では五倍近く、吾輩の方が大きいであろう。
人間とは、まっこと小さい。とは言え、リーベの胸は大きい、無論彼女の身体相応にであるが。

「ああ、よく寝た。ポチは、ポチは眠れた?」

 アクビをして、背中を反らせながら、リーベは言う。

「うむ、リーベの目覚める寸刻前まで眠っていた」

 無論嘘である、ドラゴンに昼寝の習慣は無い。
しかしこうでも言わなければリーベは妙な気を使って
『それじゃあポチは退屈なだけじゃない、ごめんなさい。貴方の背中で昼寝なんて、私、二度としないわ!』
などと言うだろうから、ふにゅふにゅの為にも、吾輩の嘘は仕方がないのである。
ふと頬に湿った感触がして、見なくても解るが、リーベからの目覚めのキスである。

「ポチの背中は、いつでも気持ちいいわ」

 吾輩の頭を撫でながら、リーベは言う。
ドラゴンの頭を人間が軽々しく撫でるなどとは、許されないことであるが、リーベならば問題はないのである。

「うむ、吾輩もなかなか気持ち良かったぞ」

「何が?」

「うむ……昼寝がな」

「そうね、お昼寝はとっても気持ちいいわ……いけない、そろそろ帰らないと」

「そうか。気を付けて帰れよ」

「またね、ポチ」

「またな、リーベ」

 リーベの背が見えなくなってから、そんな時間かと空を見上げると、確かに、木々の隙間からは茜が差していた。
リーベとの、ふにゅふにゅを感じる時間は、実に早く過ぎる物である。



 明くる日、吾輩はいつもの様にリーベを待ち、そしてリーベもやって来たのであるが、どうにもその様子がおかしかった。
普段ならば、吾輩の姿が見える距離まで来ると、それこそ犬の様に走り寄ってくるのであるが、違ったのである。
俯き加減に顔を傾け、注意せずとも解る程に、水面の様に透き通っていたはずの美しい肌は蒼白く濁っている。
今にも力無くその場に座り込みそうなリーベを見かねて、吾輩の方から歩み寄る。

「ふむ、どうかしたのか?」

 尻尾を痛くない様に巻き付けて、リーベを背に乗せながら尋ねる。
リーベは暫く、沈黙を通していたが、やがて吾輩が場所を定め、振動を抑える為にゆっくりと腰を下ろす段になって、その口を開いた。

「私……お客を取ることになりそうなの」

 今にも泣き出しそうな、いや、既に泣いているのかもしれない。その声は震えていた。

「お客、とな?」

 吾輩、人間で言う知能指数が平均で千を超えるドラゴン族であるけれども、如何せん生後三ヶ月で汚れた地上に落とされてしまった類であるから、経済知識は余りない。
精々エンゲル係数の求め方程度が関の山である。
商売関連の悩みであるなら、困った、相談に乗れそうにないぞと頭を抱えていると、リーべは言葉を続けた。

「お父さん、借金があって、このままじゃ返せないから、仕方ないの」

 父親のせいでリーベが商売を始めねばならないらしいと言うことまでは理解できたのだが、どうにも、世情に疎い為、売れ筋の助言なども到底できそうにない。
どうしたものかと頭を抱えていると、リーベはなおも続けた。

「仕方ないけど……嫌よ。知らない男の人となんて、絶対にいや!」

 最早声が震える程度ではなく、リーベのそれは叫びであった。
顔を押しつけて、泣いているのだろう。冷ややかな涙が幾つも、吾輩の首に落ちた。
ここまで来ると、どうやらただごとではないと吾輩もそれとなく悟り、何やら悪どい商売にでも手を染めるのだろうかと詳しく問いただすことにした。

「ふむ、今一解りかねるのだが。リーベよ、一体なんの商売を始めるのだ?」

 至って普通の尋ね方をしたつもりだが、何を誤ったのか、リーベは益々以てひどく泣きじゃくり、ついには、吾輩の背にコブシを叩き付け始めたから、弱った。

「金が必要なら、吾輩のウロコを一枚剥いでやろう。そうすれば、大金だ」

 泣き止んで欲しくて、そう言った――

「馬鹿言わないで、そんな事、出来る訳無いじゃない!」

――のだが、余計に激情させてしまった。

「何故だ、一枚程度なら、吾輩は痛くない」

 確かに、多少の血は出るかも知れないが、それでも、リーベに泣かれているのに比べれば、ずっと良い。

「そうじゃないわ……私がポチのウロコを売ったら、狩りが始まるもの」

「拾ったと言えばいい、一枚程度なら、有り得るだろう。狩りにはならない」

「みんな欲深いから、信じやしないわ。私が毎日この森に来てることも知っているから、必ずここに来る。貴方、殺されるわ」

 頭の悪い娘なのに、どうして、そんな事は吾輩よりも気が付くのか。
吾輩は何も言い返せなくなり、リーベはただただ泣きじゃくっている。

「リーベよ、そう泣かないでくれ。すまなかった」

 謝ってはみたものの、リーベは泣き止む気配も見せず、諦めて時に解決を任せる事にした。
ふにゅふにゅどころか、ゴツゴツであるのだから、やっていられない。
何よりリーベの苦しむ様は耐え難く辛く、吾輩まで、不覚にも泣きたくなってしまう。




 どれ程が過ぎたかは解らぬが、泣き疲れたのか、リーベは眠ったらしい、寝息が聞こえ始めた。
吾輩は一息つく間もなく、何をリーベがああまでさせたのか、気になって仕方がない。
これも世情を知らぬ故かと考えると、偶には物見気分で空から人間共を見下ろすのも悪くない、町を観察してみようではないかと思い立った。
起こさぬ様に、リーベを尻尾で下ろし、近くに立つ木の根本に崩れぬ様に据え置いて、翼を一振り、空へと舞い上がる。

 雲を超え、空の色が薄くなり、もう良いだろうと上昇を止める。
浮遊する為に翼を動かしながら、目をこらし、町を見下ろす。
吾輩はドラゴン族であるから、人間指標の視力で言うと五万くらいである、それこそ家屋の窓際に積もった埃までも、よく見える。
耳を傾け、人間共の声を聞く。吾輩はドラゴン族であるから、人間指標の聴力でやはり五万くらいある、すました面の人間がすかしっぺをしたのまで、聞き逃さない。

 相も変わらず愚かに暮らす人間共――暇つぶしの噂話で他人を笑い、金の無い者を見下し、金のある者は僻み、嫉み――に、やはり愛想を持てる物ではないと、どうしてリーベはああ育ったのだろうと不思議に思い始めたその時、町の片隅から、リーベ、彼女の名前が、確かに聞こえた。
見ると揃いも揃って禿げ上がった頭の男が三人、昼間から酒を喰らいながら、下世話な話をしているらしい。

『よう、リーベの乳はいつになったら揉めるんだ?』

『今朝話をしてやったよ、泡食ってたな。でもよ、アイツは馬鹿だからな、家族の為だと言っておけば、結局するさ』

『そいつは楽しみだ、何せ上玉だ』

『あのケツ、チチ、オマケに面まで整って。おうおう、一晩五千でも出すね』

『馬鹿いうない、あんなモン、一晩千でやらせてやるよ』

『太っ腹だな、おい!』

『でもよ、約束だ。これからずっと、酒代はお前ら持ちだぜ?』

『おうよ、当たり前だろ』

『俺達、友達じゃないか!』

 あまりの酷さに、吾輩は寸刻言葉を失った。
あの男、どうやらリーベの父であるらしい。
そしてどうやら、リーベの言った商売とは、つまり娼婦の事らしい。
挙げ句その理由は、借金など、本当にあるのかは知れないが、とにかくそれでなく、ただ日々の酒代を浮かす為に身体を売れと、嘘まで吐いて、リーベに身体を売れと、あの純真無垢なるリーベに、言ったのである。

 ふと、気が付けば吾輩は泣いていた。
目が、熱く、痛く、乾きは止まらず、涙は流れ続ける。
産まれてこの方、泣いたことなど無いのに、ボロボロと、情けなくも泣いてしまった。
どうして、リーベがあんな人間達の為に泣かなければならないのか。
どうして、リーベは、はにかんだ笑顔の可愛らしい、首筋に鼻を寄せるとくすぐったいと笑うその仕草に見惚れてしまう、目覚めのキスを決して欠かさないでくれる、吾輩の素敵な、吾輩の愛すべきリーベロッテは、あんな人間の元に産まれてしまったのか。
それとも偶然でなく、人間とは、皆がああであるのか。
浮かんだ思いに、全身の血は燃え、歯軋りが止まず、そのうちに、降り注ぐ涙は赤く染まっていた。

 涙の色は、吾輩の血であろうか。
真紅の涙は町へと降り注ぎ、炎となって町を焼いている。
零れ落ちる勢いは止まらず、火は力を増すばかりで、人間共は逃げまどい、至る所から阿鼻叫喚の叫びが響く。
吾輩は、その声を聞いても、少しも悲しくならず、けれども妙なことに涙も止まらず、笑いながら泣き続ける。
煉獄を与うにもおこがましい、汚れ、腐った人畜共を、涙で焼き殺してくれる。
吾輩の涙は、リーベの涙である。
リーベを裏切った罪、この程度の炎では決してすまぬが、しかし吾輩にはこれ以上の苦しみを与えることも出来そうにない。
さればこそ、吾輩は泣くのである。
奴等に精一杯の苦しみを与えてやる為に、吾輩は泣くのである。
この町には草木の一本、残す価値もない。
焦土と化してなお千年、あらゆる生物も住めぬ様に、その大地までも溶かし尽くしてくれる。

 泣いて、泣いて、泣き尽くし、やがて大地が溶岩へと変わった頃、吾輩は翼を閉じて森に戻った。





 森に降り立ち、木の根本を見ると、リーベは眠っていた。
その寝顔は初めて見る物で、どうしていつも背に乗せて寝かせていたのかと後悔する程に美しい。
そうして、ただただ眺めていると、いつの間にやら、時刻は夕暮れをとうに過ぎ、木々の間を縫って降る光は月に変わっていた。
穏やかな耳鳴りがしそうな程に静まった森の中で、暗闇を仄かに照らす月明かりは彼女の為にその存在があるようで――嗚呼、もう吾輩は、リーベを手放そうなどと、決して思えないだろう。

 やがて一筋の木漏れの光がリーベの白雪の様な頬を照らし、彼女は目を覚ました。

「あ……私、どうしよう、こんなに寝てしまって。もう夜じゃない」

 忙しなく首を振って辺りを見回し、慌てるリーベがまた愛おしい。

「うむ、おはやくないな、おそよう」

 言いながら、月に輝くその頬に目覚めのキスをしてやった。
面食らった様なリーベに、吾輩は続けて、もう絶対に帰したくないから、言葉を途切らせない。

「リーベよ、吾輩とここで暮らす気はないか。人間の雄なんぞより、ずうっと幸せをくれてやる。だからリーベよ、吾輩とここで、ずっと一緒に暮らしてくれないか?」

「ポチ、どうしたの?」

「どうもしない。そうして欲しいから、そう言った」

 リーベは、吾輩が冗談でも言っていると思ったのだろうか、手を叩いて笑い始める。
吾輩は冗談のつもりなど欠片もなく、大真面目であるから、ずいと顔を近づけた。

「吾輩は、真剣だ」

 ここまで来ると、流石に気恥ずかしくなってきて、鼻息が荒くなってやしないだろうか等とトンチンカンな思いが頭に過ぎる。
リーベは、吾輩の目をじっと見つめ、もうその顔からは笑いは消えていて、吾輩はドラゴンであるのに、人間に告白するだけでこうも緊張してしまうとは、思いもよらなかった。
ごくりと、生唾を飲んでしまったのと、正に同時だった――実は吾輩、リーベと唇を合わせたことはない。目覚めのキスは必ず頬だったので――つまり、初めて唇が合わさった訳である。

「それも、悪くないかもね」

 唇を離したリーベがそんなことを言うので――

「それが一番良いのだ」

――吾輩はそう言い返してやった。

 吾輩とリーベが見つめ合っていた時に、突然であった、眩いばかりの光が突然空から溢れる様に降り注ぎ、吾輩の身体を包んだのである。
リーベは飛び上がり、吾輩に何が起こったのかと抱き付いてくる。
吾輩はと言えば別段痛みを感じることもなく、はて、身体のナカミがグチャグチャと音を立てている気がするのだが、全く痛みは無く、呆けていると両足のバランスが崩れ――地面が消えたのかと思った程だった――尻餅をついてしまった。

 やがて光が収まり、吾輩はしたたかに打ち付けた尻の痛みに思わず顔をしかめ、尻を前足でさすっていたのであったが、どうやらリーベの様子がおかしい事に気が付く。
吾輩の顔を目蓋をこれでもかと言わんばかりに開いた目で見つめ、両手で口許を押さえ、驚き、固まったようであった。

「どうした、リーベ。吾輩の顔に見惚れたのか?」

 確かに吾輩は、高潔なるドラゴンであるから、そんじょそこらの人間とは比べ物にならない程に二枚目であるが、それも今更であろう。
リーベはなおも固まったまま、動かない。

「どうした、リーベよ」

 どうにも様子が妙であると、吾輩はつい前足をリーベの頬に当てようとしたのだが、その時、吾輩にとっても驚天動地を通り越す程の事態であった!
吾輩の前足が、人間の手の様に、五本の指のしっかりと生えた、色の白い物になっていたのである。
よもやと思い、自身の身体に目を向けると、どうした事か、人間そのものになっているではないか。

「これは、一体」

「ああ……ポチ」

 リーベは吾輩のことを強く抱きしめ、二度目の口づけを交わす。
吾輩は自分の状況が未だに理解できず、確かめてみるが、唯一残っている物と言えば翼だけ、それ以外は、どう見ても人間の姿であった。

「神様が貴方を人間にしたのよ! 私と一緒に暮らす為に、人間にしたのよ!」

 リーベの言葉は、しかし確かに信用出来る物である気もした。
吾輩は、あれだけの人間を、いかに理由があったとしても殺したのだから、人間にさせられてしまっても仕方がないのである。
これは、吾輩に神の与えた罰なのかもしれない。

「何と言うことか、吾輩は人間になってしまったのか」

「ええ、そうよポチ。確かに、貴方にとっては嫌なことかも知れないけれど、私は、私は嬉しい」

 ふむと考えるまでもなく、吾輩の胸の中で感涙するリーベを見れば、神に感謝せざるを得ない。
何より、人間になって何が一番変わったかと言えば、吾輩の胸に押しつけられるリーベの胸の感触が、ウロコがなくなったからだろうか、より一層ふにゅふにゅふにゅふにゅであり、最早吾輩には、折角人間になったことであるし、リーベとの子作り以外に頭が回らないのである。








 吾輩の隣では、いつもの様に愛しのリーベが眠っている。
じいと見つめていると、向こうも実は起きていたらしく、突然パチリと目を開いて吾輩をからかう。
その後は、吾輩の身体にその豊満な乳房を押し当てて、吾輩も人間の男になったのだから、この後のことは本能任せである。

 吾輩は人間である。名前はポチという。リーベに全てを捧いだ、吾輩はポチである。




            了
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