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一話

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第一話「山岳民族の長」


 大きく起伏の激しい山々。それは人間の侵入を拒む様につらつらと続き、さらに一面緑
色の絨毯が隙間無く広がっている。よく言えばのどか、悪く言えば不気味なほど静かな山
林は必然的に回りに無音の空間を与えていた。
 ふと、その静寂を破る者がいた・・・鳥である。鳥はこの寂しいほどの山々に自分の存
在を誇示でもするかのよう悠然と翼をはためかせ、自分の自由をアピールした。空は自分
達のものだと言わんばかりのその振る舞い。それもそのはず、その鳥は猛禽類最強オウギ
ワシである。メキシコからアルゼンチン北部にかけて分布し、頭にある黒い扇形の冠羽が特徴
的だ。雄は全長90cm、体重5~6kgくらい、雌は1m、7~9kgもある。この空で自分より強
いものなどいないのだという姿勢を常に貫き続けてきた王者の鳥である。
 別名、ハーピーイーグル。
 少し傲慢なこのワシは地上のサルやナマケモノだって捕食してみせる。まさに王者の鳥
と言っていい。

 だが落ちた。

 落とされた。

 この時のワシの驚いた表情と言ったら無い。自分が攻撃されたことによる衝撃と、それ
は自分と同じオウギワシでも、そこらの猛禽類でもなかった。
 硬い、それも暖かさを感じない、自分ですら破壊するのは無理だと首を下げる物体

 石だった。

 どこから?どうして?なぜ?・・・石が自らの意思で飛んできたとでも言うのか?
 もちろん違う。
 
ならば答えは一つ、投げつけられたのだ。この空の王者に、高速で飛び回る猛禽類に、
当てたというのだ。

誰だ?

落ちていく空の王者は最後の力で、自分を落とした者を見回した。
オランウータンか、ゴリラか、アカホエサルか・・・ああ、アカホエサルはこの前喰っ
てやったか・・・

「ふむ、しまった。喰えない鳥であった」

 !!!!!!!!!!こいつは・・・ッ!!!!

 ワシは驚きを隠せなかった。

それはもっともありえぬと考えていた人間だったのだ!

 その人間は、どうしたものかとこちらを見て思案している。弱肉強食。ワシはこの人間
が自分を食えばいいのだと思った。
 なぜなら、空も飛べない、ただの鈍重な不味い獣と思っていた人間に敗れたのだ。なら
ば尊敬するしかない。少なくともこのワシはそういう性格だった。
 そして気を失った。





・・・・・・・・ここはどこだ。
どうやら人間共の巣のようだ。人間の巣を遠目で見たことはあったが、中を見たの初め
てである。
 石造りの壁、壁、壁・・・出口を見つけた。
 あそこから出ることができそうだ。いや出よう。
・・・羽が動かない。さっきケガをしたらしい。しょうがなく歩く。

出口を潜ったところで・・・
「おお、起きたか」
俺を落とした人間だ。
「羽をケガしているらしい、あまり動かすな」
おまえがやったのだろう。
と、その人間の後ろからまた人間が現れた。
「族長~、客人です」
「わかった、すぐ行く」
族長と呼ばれた俺を落とした人間は。呼びにきた人間に何かを囁いて遠くに消えた。
「おまえは私が看病するって。自分で落としておきながらあの族長変わってるわよね」
話を聞くかぎりだと俺は死なないらしい。自分が新しい環境に置かれる不安だけが残った。


2, 1

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