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第2話『油断禁物ってホントだね』

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 枕もとから目覚し時計と下の階からの母の声が挟み撃ちで俺を襲う。時計を確認する。7時02分。いつも通りの起床。しかし、まだ眠い。あぁ~今日はもう少し早く寝よう。
 1階に下りると、やはり妹が起きて学校に行く準備が完璧に整っている。こいつは一体何時に起きているんだ。半分寝ている状態で、白米にがっつく。味噌汁を飲む。どうせ一緒に食うんだったら、飯に味噌汁をぶっかけちまえ。うん、うまい。このスタイルはお気に入りだ。おかずは単品で食べた。
 飯を食べ終わって、程よく目覚めたところで歯磨きをさっさとして学校に向かった。親父と顔も合わせたくないしな。
 珍しく今日は登校途中で友達に会わなかった。
 教室に入ると拓人が必死に勉強している。まぁ、どうせ課題が終わってないとかだろう。
「何必死こいてしてんだよ」
「勉強。春休みの課題が終わってない。」
やっぱり。予想的中。
「確かそれ、今日提出だぞ」
「えっ!?ウソォ!?でじま!?」
「でじまってwウソじゃねぇーよ。マジだよ」
「あぁ、俺終わった…居残り決定…」
「居残りっつたって、授業終わって4時から6時までだろ。それに課題が終わりさえすれば、居残り終了なんだからさ。」
「それが堪えらんないの。だってどうせ二見たち放課後遊ぶんだろ。みんな楽しんでる時に俺だけ居のこ…」
「わかったわかった。お前の居残りが終わるまで皆で遊ばねーよ」
「マジで!?」
「でもその代わり、俺は彼女ゲットに全力を注ぐ」
「なんだよそれ!ズリィ!!」
「ハハハハハハハ!!まぁそう気にすんなって!」
馬鹿な事を言い合っていたら担任が教室に入ってきた。担任が「席につけー」と言うと同時に他の生徒が自分の席へと向かう。ハァ…テストが始まるのか…
「ハァ…」
思わずため息が出てしまった。
「どうかした?」
戸田が話しかけてきた。
「テストが始まるなぁと思っただけだよ」
「だよねぇ~。でも二見頭いいからダイジョブなんじゃない?」
くぅ~っ!この言葉!この快感は言葉にできない!でも実はそんなにできないんだよな、俺。でもできないからこそのこの快感!
「そう甘くはないよ」
「てか、勉強した?」
「とりあえずは」
「うわっ!!鬼に金棒その他もろもろじゃん!怖い物なしじゃん!」
「その他もろもろってw」
「こらー、二見と戸田。仲良いのはわかるがもう少し静かにな」
怒られてしまった。
 テストが始まった。ま、そこそこ解けたかなくらいは解けた。
 全科目が終わり、放課後。
「うへ~…やっと終わった~…」
全ての力を使い切りました。と言わんばかりの声で千浩が言う。
「ソースケ、どのくらい解けた?」
充が尋ねてくる。ちなみに俺を下の名前で呼ぶ人はかなり少ない。
「うん?まぁまぁかな?」
「二見のまぁまぁは俺らで言うだいぶってところじゃんよ」
「どうやったらそんなに解けるんだよ」
拓人と千浩が質問攻めしてくる。
「どうやったらって、わからんよ、そんなの」
「ハァ…いつもこの質問二見にしても、同じ答えだよ。やっぱり元が違うのかね…」
拓人が重たい声で呟く。コイツはテスト後になるといつもこんな感じなので特に気にとめない。
「拓人、お前そろそろ居残り行かなくていいの?」
携帯をいじりながら充が呟く
「ヤッベ!!じゃ、また明日な」
「じゃあな」「がんばれよ」「またな~」
拓人がダッシュで教室から出たのと同時に千浩が
「じゃあ、俺らも帰りますか」
というわけで家路についた。しかし、家に帰るのは少し嫌な感じがした。
 ここ最近親父の機嫌が不安定だ。昨日も母が台所に自分のバックを置きっぱなしにしていたのを見つけて、
「台所全部片付けろ!!」
と怒鳴られていた。結局、母が寝たのは4時くらいだった。バッグ一つでこれかよ…
 とりあえず、帰りたくないのだよ、俺は。
「ただいま~」
家に着いてしまった…それよりも、母が心配である。昔、父方の祖母ちゃんに聞いたのだが、母は親父の理不尽な行動で倒れたことがあったらしい。
 リビングに入ると、ソファーで母が寝ていた。今は3時。5時くらいに起こしてやればいいだろう。

 なんやかんやで夜。

 親父が帰ってきた。帰ってきて真っ先にテレビをつけ野球中継にした
「よし!勝ってるな!」
親父はある球団(イニシャルだと、YG)の熱烈なファンだ。負けた日は機嫌がもの凄く悪い。
 しかし、この夜、俺は油断していた。
 結局この日は勝った。喜ばしいことだ。「さすがに、今日は大丈夫だろう」と思い、ソファーでくつろいでいると、
「今日のテスト、どうだったんだ?一番とれそうか?」
その瞬間、嫌な汗が出た。え?なんで、今日テストって知ってんだ?俺教えてないぞ?母を見ると、こっちに向けて両手を合わせていた。またポロッと喋ったな。
「いや、それは…ちょっと…」
「いい加減、学年トップになれよ。アリとキリギリスの話何回もしたろ?お前今のままじゃ本当にキリギリスになって、将来苦労するぞ?あの学校で一番になれなきゃ東大なんて無理だぞ?だいたい今日も昨日もおとといもその前もお前の勉強してる姿、1分も見てないぞ。忘れたのか?平日3時間、休日8時間。あと、何時間勉強すればチャラになると思う?(後略)」
また、理不尽な事を言ってきた。俺は最初から東大目指してないし、それに、学年トップになれるはずがない。俺だぞ?この俺がだぞ?無理に決まってる。言い出せばきりがないと思うけど、勉強してる姿見てないってお前…じゃあお前の目の前で「ほらぁ~、勉強してますよぉ~頑張ってますよぉ~」ってすればいいのか?馬鹿馬鹿しい。俺の部屋に学習机ってものがあるのはお解かりかね?俺はそこで勉強してるんだよ。お前が見に来ない限り、俺の勉強姿は見れないよ。平日3時間休日8時間はもう無視。聞きたくもない。
 この事を言えばいいじゃないか、と思う人も居ると思うが、言った瞬間何されるかわからない。「逆ギレか!!この糞野郎!!」と言われて、殴られるかもしれない。家を追い出されるかもしれない。もしかしたら部屋に閉じ込められて、学校にも行けずに勉強させられるかもしれない。ないとは思うが、部屋に監視カメラと盗聴器をつけられるかもしれない。
 ところで監視カメラとかって特殊な工事とかいるのかなぁ。
 あぁ~、いやな事は忘れて、もう寝よう。何もしてないけど疲れた。携帯を見ると、3通メールがきていた。いいや、これも今日は無視。あ、これから好きなお笑い番組が始まる。まあ、妹がハードディスクに録画しているだろう。明日見よう。
 歯磨きをして床につくと、今日も5分程度で眠りに落ちた。
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