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第4話『良いことばかりは続かない』

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 ゴールデンウィークを二週間後に控えた金曜日の放課後。俺たち仲良し4人組は教室で帰らずにうだうだしていた。
「二見、お前何でそんなに嬉しそうなの?」
「ん?ああ、まあ金曜日だしな」
今日は俺はとても気分が良かった。それは金曜日で、ウチの親父が飲んで帰ってくる可能性が高いからだ。けれど、それだけじゃなかった。それは今朝。
 今日はなんだか早く起きた。昨日は親父の機嫌も良好だったし、気分良く寝れた。たぶん、そのおかげだろう。飯も早めに食って、いつもより15分程度早く家を出れた。そういうわけで親父には出会わなかった。『早起きは三文の徳』と言うが、親父に出会わない、それだけに三文全部払ってもいい気分だった。しかし、俺もそんな幸せだけじゃない。
 教室に入ると、15分も早く来たというのに、7人くらいクラスメイトが登校していた。その中には拓人がいた。けど、寝てた。ぐっすりだった。起こしちゃ悪いと思って自分の席に着いた。
「あ、おはよ。今日は早いんだね」
戸田が今日も話しかけてきた。隣の席が戸田になってから、毎朝話すのが日課になりつつあった。だからぁ、戸田さん?勘違いするって言ってるでしょう?余計な情報だが、俺は14年間彼女ナシの募集中だ。もの凄い勢いで募集中だ。
「早い時間に起きちゃったからね」
「二見って携帯持ってるよね?」
明らかに戸田の声は緊張している。携帯持ってるからなんだ?もしかして、アレか?電話番号とメアド教えて下さいってやつか?
「持ってるよ」
さぁ、こい。戸田レベルの女子なら大歓迎だ。聞け!俺に聞くんだ!!
「じゃ、じゃあ電話番号とメアド教えて?」
キター!!なんか俺最近勘とか凄い冴えてるんですけど!!
「いいよ」
内心もの凄く興奮してた。今すぐに拓人たちに自慢したかった。けれど、言いたくなかった。矛盾しているが、拓人はもの凄い勢いでおしゃべりなのだ。拓人に言ったら「二見と戸田がイイ感じらしいよ?」とか言って親しい人に喋りまくるだろう。前にも言ったが、今のところ戸田は好きではない。彼女候補に入ってるだけだ。
 とりあえず、俺の電話番号とメアドを戸田に教えておいた。本当に連絡がとりたかったらあっちからメールなり電話なり来るだろう。
 親父の機嫌も良いということもあり、最近良いことが続いている。やっと普通の生活になるのか?ごく普通の中学生の生活になるのか?という期待も少し持ったが、きっと、いや絶対に有り得ないだろう。実際そういう希望を何度か持ったが、持っただけで終わった。ウチの親父があの歳になって変わったり、落ち着いたりとかはないだろう。

再び放課後に戻る。

 気分が良いのは金曜日だから、という回答に千浩たちはハテナマークが頭の上にあった。そりゃ無理もない。ウチの事情を知らない人間だったら、予想すらできないだろう。
「それより、二見。お前戸田に電話番号とメアド教えたろ?」
「は!?」
「俺、聞いちゃったんだよね~」
コイツ、タヌキ寝入りだったのか…!
「「え!?マジで!?」」
充と千浩まで…拓人…あとでシメる…!!
「戸田に教えたのか!?あの戸田に!?なァ!?」
「落ち着け!千浩!」
「もしかして、ソースケと戸田っていいところまで行ってんの?」
充、お前も誤解を招くようなことを口に出すんじゃない。
「行ってるんじゃな~い?」
拓人。あとで死ね!あぁ…もうヤダ…帰りたい……
「聞かれたから、教えただけだよ。お前らが思ってるほど仲は良くないよ」
「嘘だ!!!いっつもお前ら楽しそ~に話してたじゃん。」
「でも、ソースケに気がないとしても、もしかしたらあっちはどうかもわからないぞ」
「いいじゃん、もう告っちゃえよ」
なんだ?そのシメ。なぜ俺が告らなきゃーならん。だいたいお前の発言から始まったんだぞ。拓人。その後、俺の必死の説明で
「じゃあ、そういうことでいいよ」
と拓人が折れた。あの時のニヤニヤした顔つきはイラッときた。

なんやかんやで家

 家に帰ると、二階がうるさい。どうせ妹が友達を呼んで遊んでいるのだろう。
 ソファーで某ハンティングアクションゲームをしていると、ピリリリリリリ!!急に携帯がなった。この時間なら拓人が駅前に来てという電話がこないこともない。しかし、電話の相手は知らない電話番号。とりあえず出てみた。
「はい」
「あっ、二見?アタシ。亜美」
俺は意表をつかれた。電話番号を教えたがこんなにも早くかかってくるとは思わなかった。
「どうした?」
「特に用はないんだけど、アタシの電話番号教えてなかったでしょ?だからかけてみただけ」
「そうか、ありがとう」
「それよりさぁ~聞いてよ」
「ただいま~」
母さんが帰ってきた。戸田との話を聞かれたくないので、自分の部屋に戻った。俺も思春期だなぁ。戸田の家族の愚痴を聞いていると、何者かが、家の中に入ってきた。母は気づいていない。不審に思い下に下りると、そこには親父が帰ってきていた。なぜだ。なぜなんだ。昨日の夜確実に飲んでくると言っていたはずだ。どうして帰ってきたのか状況を把握するため、趣味は悪いが盗み聞きする事にした。
「ゴメン、戸田。少し状況が悪くなってきた。電話切るね。」
「ん?あぁ、わかった。ゴメンね。こっちも急に電話かけて、愚痴こぼしちゃって」
「全然。じゃあまた来週」
「じゃね、バイバイ」
なんとか不審がられないように電話を切った。親父と母さんの会話に耳をたてる。
「あら、今日飲んでくるんじゃなかったの?」
少し、母さんも不機嫌そうだ。
「ったく、亀井のやつ、女房と喧嘩したから、機嫌とるために早く帰るって言いやがって」
亀井さん…あなたの事はなんにも知りませんけど、ウチの親父と飲んでやって下さいよ(泣)そういうわけで、結構親父の機嫌も不安定だ。ヒャ~怖い。頭の中で今日の夜の過ごし方を100%書きかえた。俺はいつも夜の過ごし方の予定をたてている。そうすることで時間を有効活用することができ、更に親父からの八つ当たりも極力回避する事ができる。しかし、たまにこういったトラブルがある。そういうときは今みたいに瞬時に予定を書きかえる。
 今日は良い日に思えたが、実際そうではなかった。放課後から一気に流れが悪い方向に向いた。しかし!戸田の電話番号とメアド、そして電話があったからいいとしよう。自分の部屋で某ハンティングアクションゲームをしていたら、親父の怒鳴り声が聞こえてきた
「なんだ!!その口のきき方は!!!」
妹がしくじったらしい。これは兄だからではなく、一般の人間から見ても、ウチの妹はアイドル級に可愛い。美少女だ。実際プロダクションのスカウトに名刺をもらった。しかしアイツは言葉遣いが悪い。俺と母さんでいつも指摘はしてきたが、直ってなかった。それがここで出たみたいだ。結局外に出され、家に入れてもらったと思ったら、説教が2時間くらい続いた。ウチでは可哀想にとか同情してる場合ではない。明日は我が身さ。とりあえず、怒りの矛先が妹に向いてるうちに寝よう。説教は深夜1時まで続いたらしい。
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