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『最初のガンダム』を見ただけの人が『ガンダムユニコーン』を愉しむためのテキスト

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 『ガンダムユニコーン』話題ですよね。作画レベルも高いし、ストーリーだって面白い。
ネットでも大評判ですね。僕なんかも大好きなんですけど。

 ただ、問題もあって、それは、『ガンダム』や『ゼータガンダム』、『逆襲のシャア』さらには『ガンダムダブルゼータ』まで観ていないと、なんだかよくわからない描写やセリフがたくさんある、という所だと思います。

 せっかく面白いのに、惜しい。惜しすぎる。もっと多くの人に『ガンダムユニコーン』を愉しんでもらいたい。

 ネットにある解説だと、難しい単語を連発していたり、わざと解りにくい『戦記もの』っぽい書き方をしたりしているので、それだけで敬遠してしまう人もいるんじゃないかと心配になりました。

 そこで、『ガンダム』の後から『ガンダムユニコーン』の物語がはじまるまでを、なるべくわかりやすい表現を使って、書いてみたいと思いました。この文章を書くにあたっては、

○ なるべく『ガンダム』と『ガンダムユニコーン』で使われた固有名詞以外を使わない
○ 出来事を、可能な限り整理する
○ 勝敗とかは、やりすぎなくらい整理する
○ できるかぎり平易な文章で書く

 のを心がけました。そのために、うんと整理をしすぎてちょっと変質している部分もありますが、あくまで『わかりやすさ』を最優先して書きました。
 もし興味があったら、映像作品をぜひ観てみてください。全部近所のツタヤで借りれるはずです。

 それでは、書きはじめます。まずは『最初のガンダム』の大きな戦いの終わったところから。

 ●『グリプス戦役』(ガンダムユニコーンで、こう呼ばれる部分です)

 激しい戦いの末、ついに『地球連邦軍』は『ジオン公国』を屈服させます。ジオン軍の生き残った将軍たちや兵士たちは、散り散りに宇宙の彼方へ逃げていきました。地球連邦軍は勝ったのです。
 しかしそれは厳しい勝利でした、後に『一年戦争』と呼ばれるその戦いで、世界の人口は半分以下にまでなってしまいました。
 地球の主要都市のほとんども、焼け野原になってしまっていました。

 地球の政治家や人々は、こう考えました。『この戦いは、地球側が頑張って勝ったのだから、戦後の復興も、まず地球の都市や産業の回復から始めるべきだ』

 でも、上に書いたように、厳しい戦いだったのです。世界中が焼け野原になったような戦いの後で、生きていくために必要な資源や資産まで地球に吸い上げられてしまっては、スペースコロニーに住んでいる人たちは飢えてしまいます。

 そこで、コロニーの住人たちは、地球側に対して、待遇の改善を訴えてデモを起こします。
 ところがその平和的なデモは、地球に住んでいる人々からは、大変に恐ろしい光景に見えました。
 なぜならデモをする人々の背後にはきっと、ジオン軍の生き残りたちが潜んでいるに違いないからです。
 地球に住む人々と、コロニーに住む人々との間に、対立と不満が少しずつ高まっていきます。

 そんななか、ジオン軍の生き残りの一部が、大規模なテロを起こします。
 廃棄され、無人になっていたスペースコロニーを、地球に落下させたのです。
 テロはすぐに鎮圧され、コロニーも軌道を外れたため、大きな被害は出なかったのですが、地球にいる人々を恐れさせるのには充分でした。
 地球の人々の不安が、最も恐れていた形で現実のものとなった瞬間だったからです。

 コロニーの人々を恐れた地球の人々は、地球連邦軍の中に『コロニーの人々をいじめ、おどす』のを専門にした部隊を作り出します。恐怖でもって、コロニーの人々を従わせようと考えたのです。

 彼らは、デモの鎮圧や、ジオン軍の生き残りの捜索や逮捕などを、コロニーの人々の気持ちなどまったくおかまいなしに進めていきます。
 地球生まれの人々だけで構成されたその部隊は、もともとエリート意識が大変に高く、コロニーの人々を下にみるような所がありました。さらにコロニーの人々を抑圧し、暴力を振るっているうちに、彼らのエリート意識はどんどんと悪いほうに膨らんでいきました。
 そしてついに、デモが大きくなったコロニーの中に毒ガスを流し込み、コロニーの住人ごとデモを鎮圧するという、信じられないような事件が発生します。

 地球連邦軍の中には、もちろんコロニー生まれの人々もたくさんいます。
 さすがにこれは許せない、と、その『地球エリート部隊』に対抗する組織を地球連邦軍の中で作り出し、戦いを始めます。

 この戦いを『グリプス戦役』と呼びます。ですのでこの戦争は、

 地球連邦軍(地球エリート部隊)
 vs
 地球連邦軍(コロニー生まれ部隊)

 で行われた、『内戦』という形になります。
 この戦いは、『コロニー生まれ部隊』が勝利する形で終わります。
 それではこれで、コロニー生まれの人々の待遇は改善されたのでしょうか?
 政治的要求は果たされたのでしょうか?

 残念ながら、そうはなりませんでした。
 内戦に夢中な彼らには見えていないものがありました。
 宇宙の彼方に逃げ去ったものたちが、密かに集まり、牙を研ぎながら、
復讐を果たす機会をずっとうかがっているのを、すっかり忘れてしまっていたのです。




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 ※グリプス戦役で起きた、ガンダムユニコーンにつながるトピック
 ① 戦場の変質
 グリプス戦役では、戦いに使われる宇宙戦艦の数やモビルスーツの数が、最初のガンダムにくらべるとかなり少なくなりました。
 もちろん『ガンダム』での大きな戦争の後、宇宙戦艦の数が少なくなってしまったせいもありますが、いちばん大きな要因としては、『一つの艦隊に匹敵するような、強力なパイロットや兵器の出現』があげられます。

 たとえばガンダムに出てきた『ビグザム』のような強力な兵器があれば、たとえばアムロやララァのようなパイロットがいれば、普通のモビルスーツや宇宙戦艦をいくら繰り出して来ても、相手にはなりません。
 そこでグリプス戦役では『強力なパイロットや兵器』をどのくらい所有しているのかが、ひとつの戦闘の行方を左右する最も重要な要素になりました。

 『量』から『質』へ。『組織』から『英雄』へ。
 現代の戦闘のようなものから、古代の、いわば『三国志』的な戦闘への転換がおきはじめたのがこの頃です。

 ②『強化人間』の登場
 ①に書いたように『強力なパイロット』をたくさん所有することが、戦闘の行方を左右するようになった時代、アムロやララァのような強力なパイロットを人工的に作り出そうとする試みが、さかんに行われるようになりました。人造ニュータイプ『強化人間』の登場です。
 この時代の『強化人間』は、ニュータイプの素質が少しでもありそうな人を探しだしてきて、投薬をしたり、特殊な訓練をしたり、意識の流れを一定方向に抑圧したり、身体のあちこちを強化する手術を行ったりすることで、ニュータイプの力を少しでも引き上げよう、というのが主なものでした。
 やはり方法に相当な無理があったようで、このタイプの強化人間は、

○ 作戦を他のパイロットと協力して行えない
○ 戦闘をとつぜん放棄してしまう
○ 戦闘中にパニックに陥ってしまう

 など『ちゃんと戦えるパイロット』とは程遠いものになってしまいました。
40, 39

  


 ●『第一次ネオジオン抗争』(ガンダムユニコーンで、こう呼ばれる部分です)

 『グリプス戦役』の地球連邦軍同士の内戦が激しくなって来たころ、巨大な隕石要塞とともに、ジオン軍の残党たちが『ネオジオン軍』を名乗り、宇宙の彼方から帰って来ます。

 旧ジオン軍の敗北から七年、暗い宇宙の深遠でパイロットたちは戦闘訓練を続け、将軍たちは復讐の炎を燃やし続けていたのです。

 宇宙戦艦の総数は、地球連邦軍とは比べるべくもありませんが、『強力なパイロットや兵器』の数では他のどの勢力をも圧倒していました。
 地球連邦軍はグリプス戦役という、身内同士の戦いの中で『強力なパイロットや兵器』のほとんどすべてを失っていましたから、ネオジオン軍と戦ってもまともな勝負にはなりませんでした。

 ついにネオジオン軍は、宇宙戦艦の艦隊を地球連邦軍の首都に降下させ、一時的に占領します。そして、

○ ジオン公国の再興と独立
○ サイド3(ジオン公国の本拠地だったスペースコロニー群)の支配

 を地球連邦政府に認めさせます。これは、旧ジオン公国でもなしえなかった成果です。
 七年間も、暗い宇宙の彼方で頑張ってきた甲斐があったというものです。セミも喜んでいます。

 でも、やっぱりネオジオン軍はダメでした。
 戦闘訓練だけを何年も繰り返してきたパイロットたちは、戦うことしか知らず、将軍たちは、口で理想は叫んでも、心の中は復讐心や猜疑心、権力欲でいっぱいだったのです。
 彼らは戦う相手がいなくなると、こんどは他の将軍が持っている『強力なパイロットや兵器』を恐れるようになっていきます。
 ネオジオン艦隊がサイド3に凱旋した直後、ついにネオジオン軍の将軍どうしの内戦がはじまります。

 その内戦ですべての兵器やパイロットを使い果たし、片方の将軍が死に、ついにひとりの将軍が生き残りますが、横槍をさすようにして現れた『ガンダム』に討ち取られてしまいます。
 こうしてネオジオン軍は崩壊したのでした。

 ようやく世界は平和になる、と多くの人々が考えました。ですが人々は忘れていました。
 ジオン軍の最も強力で、最も優秀で、最も将兵の支持を得るであろう将軍のことを。
 その男が、この戦闘には参加していなかったことを。
 その男の名を『シャア・アズナブル』といいます。





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 ※第一次ネオジオン抗争で起きた、ガンダムユニコーンにつながるトピック

 ①『強化人間』の完成
 ネオジオン軍では、いままでとはまったく違った、新しい発想の『強化人間』が生み出されました。
 素質のある人を強化するのではなく、素質のある人の遺伝子をクローニングし、そこに改良を加えることで、『生まれながらの強化人間』を『数多く』作り出すことに成功します。
 代表的な存在に、『プルシリーズ』が挙げられます。彼女たちは、見た目こそ10歳前後の少女でありながら、

○ モビルスーツの殺人的な加速に耐え
○ 大人たちの立てる作戦を理解し参加でき
○ ニュータイプにしか扱えない遠隔ビーム兵器(ビット)を扱う

 ことができました。そんな完成された強化人間『プルシリーズ』も、将軍たちの内戦により全員が戦死してしまいます。
 ただ一人『プル12』を残して。

 ②『クイン・マンサ』と『クシャトリア』
 『プルシリーズ』の一人『プル2』の乗っていた超大型モビルスーツが『クイン・マンサ』です。
当時としては最高の性能を持つモビルスーツの一つで、特徴を『最初のガンダム』で例えるならば、『ビット攻撃もできるビグザム』といったところでしょうか。
『マリーダ・クルス』の乗機『クシャトリア』は、これを通常サイズまで小型化したものと言われています。

 ③ミネバ・ザビ
 最初のガンダムで、ビグザムに乗っていたジオン軍の将軍『ドズル・ザビ』の娘さんです。
 お父さんに似なくて、ほんとうによかったね。『第一次ネオジオン抗争』ではネオジオン軍の象徴、名前だけの総帥として登場します。第一次ネオジオン抗争が終了し、連邦軍が進駐すると、すでにミネバ・ザビの姿はありませんでした、どこかに落ち延びたものと思われます。


 ●『第二次ネオジオン抗争』(ガンダムユニコーンで、こう呼ばれる部分です)

 『第一次ネオジオン抗争』でガタガタになった『ネオジオン軍』に、颯爽と、まさに彗星のように現れた救世主、それが『赤い彗星・シャア・アズナブル』でした。

 シャアは敗残の『ネオジオン軍』をまとめると、戦うことしか出来ない彼らに、戦う理由と理想をあたえます。
 最初のガンダムからずっと続いてきた、『地球の人々』と『スペースコロニーの人々』との対立を、完全に、永久に、決定的に終わらせる、と宣言したのです。

 どうやったらそんなことができるのでしょうか?

 シャアは言います「隕石を地球にばんばん落として、地球に人が住めなくなれば、『地球の人々』というのがいなくなる。そうすれば、対立などなくなるであろう」
 そして隕石の一つを地球に落下させて、それが可能であることを世界に宣言します。

 こうして『第二次ネオジオン抗争』がはじまりました。
 地球連邦軍には、もう強力なパイロットはいないと思われました。みんな『グリプス戦役』や『第一次ネオジオン抗争』で死んでしまったか、あるいは戦いに疲れて軍籍を離れてしまったかしていたと思われたのです。
 ですが、一人、いたのです。たまたま宇宙での大きな戦いに参加していない、おそらくガンダムの世界でも最強のパイロットとされている人が。

 その人の名を『アムロ・レイ』といいます。

 『第二次ネオジオン抗争』はつまるところ、シャアとアムロの一騎打ちが、戦いの勝敗を決めることになりました。
ネオジオン軍が宇宙の彼方から持ってきた隕石要塞の地球落下をめぐって、二人は激しく戦います。
 そして最終的には、隕石要塞の落下は防がれるのですが、シャアとアムロは刺し違えるようにして、戦死してしまいます。
 アムロの死は、一人の強力なパイロットが失われただけですが、シャアの死は、ネオジオン軍を指導していた将軍の死ということになります。ネオジオン軍は戦闘をやめ、敗北を受け入れます。

 このようにして三度も決定的に敗れたジオン軍には、すでに昔日の面影はなく、もうどのような抵抗も不可能と思われました。しかし、ネオジオンを支持し、支援するコロニー生まれの人々がいなくなることはありませんでした。
 『地球の人々』と『スペースコロニーの人々』との対立と不平等が解消されない限り、ジオン軍は何度でも勢力を盛り返すことができるのかもしれません。





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 ※第二次ネオジオン抗争で起きた、ガンダムユニコーンにつながるトピック

 ①弱い男シャア
 シャアと呼ばれる男は、『グリプス戦役』の時には地球連邦軍の『コロニー生まれ部隊』にシャアとはまた違う偽名を使ってもぐりこみ、『地球エリート部隊』との戦闘を指導していました。
 そしてその裏では、ネオジオン軍の将軍の一人として、地球連邦軍の情報をネオジオン軍に渡したり、『コロニー生まれ部隊』とネオジオン軍の同盟の橋渡しをしたりしました。名前もそうですが、嘘の多い男なのです。

 グリプス戦役の最後の戦い(この戦いで、『地球エリート部隊』を倒した)の後、シャアは行方不明になります。
 部隊に戻ることもできたのに、そうしなかった。
 これは『コロニー生まれ部隊』にとっても、彼を信頼していたネオジオン軍の将軍にとっても、もっといえば、グリプス戦役の途中で、『コロニー生まれ部隊』のリーダーになる、と決心した自分に対しても、ひどい裏切りでした。昔からそうですが、裏切りの多い男なのです。

 第二次ネオジオン抗争のときは自らを『シャア・アズナブル』と名乗ります。本名の『キャスバル・ダイクン』ではなく。ネオジオン軍の総帥としてなら、『ジオン・ダイクン』の名を受け継ぐ意味でも、本名を名乗るべきなのに。
 その理由は、アムロとの一騎打ちの最中に明らかになります。
 彼のネオジオン軍の将兵に語った理想や目的、地球と宇宙との対立の解消は、全部『ついで』でしかなかったのです。

 本当の目的は、自分の大切な恋人を、最強のモビルスーツパイロットの称号とプライドを奪ったアムロをあらゆる意味で完全に打ち倒したい、という、ごく個人的な目的で始めた戦争だったのです。
 シャアを名乗るのも「アムロを倒すのならば、かつて敗れたこの名によって成されなければならない」という、びっくりするほど小さい理由からでした。

 声と顔がかっこいいし、能力がすごい人なんですが、人間としては、けっこうダメ人間なんですね。でもそこが、いい。
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