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第一章「冒険更新中」(二月十八日更新)

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第一章「冒険更新中」

 世界が灰色でした。
「こんなことをして、何が変わるっていうんだ」
 ここは芸術文化の中でも特に漫画と小説が発達し、国民の多くがそれらに関心を寄せる新都国。あとは全部中世ファンタジーRPGっぽい感じ。そこでは人の価値は学歴や収入ではなくコメントを貰う力で計られていました。
 ですが、近年では漫画と文芸の間で争いが絶えません。同じく創作に情熱を注ぐ者達がいがみあう、悲しい時代でした。

 ──文芸禁止法。事の発端は、新都国が拡大し、運営王の手が行き届かなくなったことをいいことに、一部のモンスター読者が暴れたことにあります。
 モンスター読者達は面白半分に、読みもしていない文芸を「荒らしの温床」や「ゴミため」、文芸作家を「テロリスト」や「原始人」と呼び、自警活動という名で「文芸狩り」をはじめたのです! 小説は焼き払われ、文芸作家はいわれのない差別、迫害を受けるということがたくさんおきました。
 勿論、文芸の皆は団結し、モンスター読者達に対抗したのですが、彼らのコメントを貰う力は漫画作家に比べると小さく、姿の見えぬモンスター読者達の巧みな工作により、いつしか、漫画VS文芸という絶望的な構図にされてしまったのです。
 文芸作家達は絶望的な戦いに身を投じるか、自分がいつ標的にされるか怯えながら、こそこそ連載するしかありませんでした。

 ある日の事、TDN=エアーマンというしがない「 漫 画 作 家 」が二次キャラ(ロリ)で抜いていると、彼のもとに一通の手紙がきました。見ると差出人不明の手紙でした……。
 TDN=エアーマンは何かの悪戯かと思いましたが、何となく開いてみました。

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差出人:不明
件名:助けてください
内容:私はあなたが、今でこそ漫画作家ではありますが、かつては「カサカサオハダ」を連載していた人気文芸作家のTDN=エアーマンだと知っています。
現在の文芸の状況はご存じだとは思いますが、実はそれ以上に文芸作家達は窮地に立たされています。
先日のモンスター読者達の襲撃により、文芸を守っていた最後の秘宝「表現の自由」が砕かれ、その欠片の大部分を奪い去られてしまいました。

あなたの力が必要です。どうか助けてください。

あなたを信じ、危険を承知で深夜に編集部のねとらじスレで待ってます。

以上。

───────────────────────────────────────
 
 エアーマンはその手紙の内容と、涙や汗で滲んだと思われる痕を見つけると、胸が熱くなり、使命感に燃えました。
 そして、ティッシュカスを剥がしてゴミ箱に捨てると、急いで出発しました。

 ねとらじスレにつくと、文芸読者を名乗る男から、首から下げられるように細工されたキーホルダー状の小瓶に入った「表現の自由の欠片」を受け取りました。

「それは、手紙でも話した、文芸の秘宝『表現の自由』の欠片です。その輝きは他の欠片の在り処を指し示し、ときにあなたの身をモンスター読者達から守ってくれるでしょう。どうか全ての欠片を取り戻してください」

 こうしてTDN=エアーマンの冒険ははじまったのです。
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文:自演死太郎 絵:君(予定) 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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