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美樹が現れた現実を写す鏡を使った俺に100のダメージ

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※この回は美樹により書かれました。


最近、和哉の様子がおかしい。

なんだか中学二年生的行動を日常の中で繰り返しているのだ。

その原因は何だかは知らないが、このままでは困る。

なぜならば、和哉の親友である俺までもが、変人に思われかねないからだ。

もう変人に思われるのは、懲り懲りだ。

しかし、和哉と縁を切ろうにも、それだと何だか俺が薄情なやつみたいで、いい気がしない。

それに、あいつ程いじりやすいやつはいないんだ。
何としてでも、玩具を取り戻さなくてはいけない。




ということで、俺は和哉の1日を観察してみることにした。
1日見張れば、原因の一つや二つ見つかるだろう。


っと、和哉が来たな……。
「はよっす」
「はよー」
和哉は、俺に挨拶を返すと、そのまま自分の席へと戻ってしまった。
昔ならば、ホームルームが始まるまで談笑していたのに、今では和哉は、一人席に着いて、何かをブツブツ呟いているだけだ。

一度、何を言っているのか聞こうと思い、近くにいき、こっそりと聞いたことがある。

「我が邪眼をもってすれば、鬼畜魔神姉貴を瞬殺することも可能となろう……、いや、姫は殺戮は望まん、仕方ない、邪眼の108の能力の一つ、操縦眼で操り人形と化してやろう……ククククク」

と、何やら不穏な気持ちの悪い言葉を延々と繰り返していた。

ちなみに、次の日の和哉は、何故か、顔に痣がたくさんできていた。


今日は、どのようなことを呟いているのか、気にならなくはないが、朝から気力を全部奪われて鬱になりたくないので、聞かないことにした。


時折、クククククと笑いながら何かを呟いている和哉にどん引きしているクラスメートを見ながら、俺は盛大にため息を吐いた。



昼休み。

それは、授業という退屈で、窮屈な時間を終え、自由へとフライアウェイできる、至福な一時。



「な、はずなんだよなぁ……」

「ん?どうしたの?」

俺の横には、引っ付くように、夏美ちゃんがいた。

まぁ、これが今日限定の出来事なら、まだ許せる。
だがしかし、毎日だ。エブリデイなのだ。
別に、夏美ちゃんが嫌いな訳ではないが、流石に毎日、こう引っ付かれちゃあ迷惑だ。

それに、クラス内の負のオーラが俺に集中攻撃してきてヤバい……。
何がやばいって、帰りに嫉妬に狂った男共にぼこられる。

畜生、和哉がいたら、身代わりの術が出来るのに……。
しかし、今じゃ和哉は、変態に成り下がっている。

それに、昼休みになるとあいつ、いつも見ない内に、どっかいっちまうんだよなぁ。


それにしても……。

「なぁ、夏美ちゃん……流石にあーんはキツいのです。恥ずかしすぎるのです」

夏美ちゃんは、何をトチ狂ったのか、男として、してもらいたいことtop3である『あーん』をやってきたのだ。
しかし、それは、二人きりの時に、彼女にやってもらたいことなのであって、決してクラスの中心でやることじゃあない。
それに夏美ちゃんは、俺の彼女じゃないでしょ?
そういうことは、将来に取っておきなよ。
初あーんは、大切にね。


「私のあーんが受けられないの?なんで?どうして?私のことが好きじゃないの?なんで?どうして?」

アカン……夏美はんが、壊れてもうた。



「いやいや、夏美ちゃんが嫌いなわけじゃないんだよ!?ただね、やっぱりさ、こういうことはさ、こっそりとね……」


って何言ってるんだ俺はー!
こっそりとか、そういう問題じゃねえだろ!
やること自体に問題があるんだよ。


「そっか……そうだよね!美樹が私のこと嫌いなわけないもんね!恥ずかしいがり屋な美樹君は、しょうがないなー」

などと、最高の笑顔でのたまう夏美ちゃん。
もう、最悪です。

周りからの視線が痛い。


畜生……こういう汚れ役は、和哉の役割だろ……。

あいつめ……絶対ぶん殴ってやる。





悪魔の昼休みを経て、また一つ大人への階段を上った俺は、今ひたすらに、和哉へ呪詛を呟いている。

例えば、あいつ、階段を上ろうとして、踏み外して、転げ回らねぇかなぁとか、自転車のハンドルを盗まれねぇかなぁとか……。


しかし、今は授業中であって、呪詛を呟く時間ではない。

よって……。


「うるせぇぞ美樹!」

禿田先生に怒られた。

ちなみに、禿田先生は、文字通り禿げている。
禿げに怒られると、怒りが二倍になる……不思議!



放課後になると、和哉は、俺に挨拶もせず教室を出ていった。

和哉の癖に生意気だぞっ!

と、某人気アニメの名脇役の真似をしつつ、俺は、和哉をストーキングもとい、追跡をすることにした。
11, 10

  




和哉を追尾していると、いつの間にか図書館についていた。

あいつ図書館で何やってるんだ?なんて考えながらも、和哉に見つからないように、ひっそりと本棚に隠れた。


和哉がカウンターの前で、誰かと話しているのが見えた。

目を凝らして、よく見てみると、それが女の子だということが分かった。

和哉め……俺に内緒で女の子と放課後イチャイチャラブラブ図書館デートかよ……。

憎しみで人が殺せたら……。

なんて、物騒なことを考えながら、和哉たちのほうを睨めつけていると、俺は、あることに気づいた。

――あれって、いつぞやの罰ゲームのときの女の子か?


なん……だと……、あんな変態丸出しの口説きで女が落ちたというのか?

いやいやいや、ありえないだろ……。
最近の若い奴らは何を考えているのかが全く分からない。
最近のブームは、変態なのか?セクシャルハラスメントボーイイズムーブメントなのか?

そんな流行聞いてないぞ?


畜生、なら、俺もやってやるぜ……。
俺も、このブームに乗って、一代を風靡してやるぜ。

変態王にっ、俺はなる!





何がっ……何が悪かったんだっ……

俺はっ……この流れに乗っただけのはずっ……

畜生っ…… 畜生っ……

ざわ……ざわ……

美樹……見事に流れに乗れずっ……
見事職員室行きっ……




見事変質者扱いされました。
本当にありがとうございました。




地獄のような、説教から解放されたのは、部活動も終わり、太陽が完全に落ちた、夜の7時だった。

放課後というパラダイスを説教により失ってしまった俺は、生きる気力さえも失いながら、生気を口から垂れ流して歩いていた。

今日は、なんという不幸な1日だろうか。
良いことが一個もないばかりか、悪いことばかり立て続けに起こった。


こんな日には、早く帰って、布団に潜るのが一番だ。
嫌な事を全て忘れて、夢の世界へ羽ばたこう。






俺は、暗い夜道を、走った。
ひたすら走ったあと、息を整える為に、一度立ち止まった。

すると、「おとなしくしろグォルァァ」という怒声が響き渡った。
熊のような、野太い声が聞こえる。
路地裏のほうだ。

それと同時に、か細い声、嗚咽が聞こえる。

そしてまた怒声。


逃げろ、本能がそう言う。
お前なら分かるはずだ。これは強姦か何かだ。お前じゃ救えない。お前のような、弱いやつじゃあ、根性なしじゃあ無理だと。
だから、逃げろと。
誰かが助けるさ、俺じゃなくていい。
それと同時に、俺は、絶対にこんな夜にこの人気のない道を通るやつなんかいないことを知っている。

また本能が訴える。
今日はいいじゃないか。
今日は嫌なことしか起こらないんだ。
どうせ、これも殴られるだけ殴られて、女は強姦されて終わりだ。
行ったって意味がない。
意味がないんだよ。



俺は、唇を噛んだ。
鉄の味が口の中に広がっていく、それと同時に涙がでてくる。
どうして俺なんだよ……。
この時に……この場所にいるのが俺じゃなきゃよかったのに。
そしたら、女は助かって、俺も何も知らずに、明日からまた馬鹿ができる。


それなのに……。
「どうして……俺なんだよ」


俺は、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、路地裏へと向かった。
走ってなんかいない、ゆっくりと歩きながら。
震える足がもつれて、うまく歩けない。
そして、このままもつれて、転んで歩けなくなればいいのに、とも思う。
でも、俺は、路地裏に歩いていった。


過去の思い出。流れる涙に、血の匂い、叫ぶ女に、傍観する俺。


後悔するのは、もう十分だったから。
少しだけ、俺の昔話にでも付き合って欲しい。
なに、時間はそんなに取らせないさ。





昔、あるところに、仲睦まじい恋人がいました。
彼氏は彼女を愛し、彼女は彼氏を愛していました。


ある夜、それは彼氏にとって恋人たちにとって大事な日、付き合い始めてからの一周年記念日でした。

彼氏は、その時のために、半年前から小遣いをため、彼女のために、ハート飾りのついたネックレスを買いました。

彼氏は、彼女の喜ぶ顔が見たくて、一足早く、待ち合わせ場所へと行きました。


けれど、いくら待っても、彼女は着ません。
そうする内に、待ち合わせの時間を一時間過ぎていました。

几帳面な彼女がこんな大事な日に遅れてくるなんておかしい、と感じた彼氏は、彼女を探しに行くために、彼女の家へ向かいました。

彼女の家の途中、薄暗い路地裏、悲鳴が聞こえてきました。
鳥類の発するような金切り声、何かを殴打するような重く鈍い音。

彼氏は、興味本位に、路地裏へと覗きに行きました。


そこで見たのは……。



サングラスにダボダボのズボンを履いた、金髪の男が彼女を■■している姿だった。


彼女は、目に一杯涙を溜めながら必死に■■されることをあらがっている。

しかし、男の力は強く、されるがままだ。

それを彼氏は、放心したように見ていた。

そして、彼女は彼氏に気づいた。


それでも彼氏は、動きませんでした。

誰が現実で彼女が■■されるなんて考えるでしょうか。


結局、彼氏が放心している内に男は■■を済ませ、去っていきました。
残された彼女は■■から■■を流し、■■により■■■■■■。


彼女に、恐る恐る近づくと、彼女は嗚咽を交えながら、こう言いました。


「あんたのせいだ」


その後、彼氏は、彼女と別れました。
彼女は、田舎の精神科に通うために引っ越していきました。

彼氏は、ただただ呆然としていました。
この幸せになるための1日が、最悪の1日になったことが信じられなかったのです。





どうだい?
最低な話だろ?

カイジの利根川さんだってこんなことしないさ。


それに、俺は、その後、幸せに暮らしていた。
彼女ことを忘れたことはない、でも、それでも学校で馬鹿やって、夏美ちゃんに悪戯告白して、変態なことをやって……。
結局、俺は楽な方に逃げていた。


だから、という訳じゃないが、二度目のこの事態は、神様による罰なんじゃないかと思う。

本当は、良心の呵責に耐えられなく、自殺でもしているのが普通だったのかもしれない。

でも、俺は生きていた。


だから、罰を与えた。






俺が路地裏につくと、そこには夏美ちゃんがいた。


夏美ちゃんの手にはレンガがある。

そして、夏美ちゃんの下には、下半身丸出しの男。

夏美ちゃんの服は少し乱れていた。


……。
どういうこと?


「あっ!美樹くん」
夏美ちゃんは、まるで偶然町で会ったかのように、話しかけてきた。

「美樹くーん、聞いてよー、さっきさぁ、そこの道歩いてたらいきなり変な男に襲われてさぁ、最悪だよねー、私の肌とかベタベタ触ってくんの。それでいらってきちゃって思わず殴っちゃった」

テヘッとでも擬音がつきそうな風に、頭をコツンと叩いた。

「私の肌を触っていいのは、美樹くんだけだよねー」

そういってすり寄ってくる夏美ちゃん。

首筋をカプリと噛みながら、扇情的に誘惑をしてくる。



というより、俺の今の回想シーンの意味はあったのだろうか。

恥ずかしいいいい。
なんか一人で神様の罰だっとか厨二みたいなこと言っちゃってさ。
どう考えても厨二病患者です。
本当にありがとうございました。




ああああああ、誰か俺を殺せええええ


13, 12

薔薇輝石 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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