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嫉妬

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「なんで、あの女がいるのよ!」
 思わずわたしは親指の爪を噛んでしまう。これはわたしの昔からの癖。でも最近はお父様やお母様に止められていて噛んでいなかった。
 だけどこれは我慢できない。血が滲み出る。
「ここはわたしの病院。燕尾だって私のもの。誰にだって文句はいわせない」
「花梨さま、血が出ています! 傷に菌が入れば大変っすよ!」
「五月蠅い!! 二ノ宮!!」
「でも……」
「口答えする気?」
「…………」
 押し黙る。そうよ。権力のないものは権力の強いものに逆らっちゃいけないの。二ノ宮がどんなに喧嘩が強くてもね………
「そうだ、この前クビにしたやつ。いたわよね?」
「大樹さんっすか?」
「チャンスあげようかしら……さすがにあのままじゃ罪悪感があるし」
 二ノ宮はわたしの携帯でかける。大樹というどうでもいい使い捨てに声をかける。
「もしもし。アナタにチャンスをあげる。成功したらまたわたしの護衛に任命してあげる」
『ほ、ほんと、ですか!?』
 嬉々とした声が聞こえる。そしてわたしが下したミッションを告げた。
「ラミア・キキュロスを誘拐しなさい。そして元いた国に連れ戻していきなさい」
『ラミア・キキュロス……たしか、アメリカのマフィアの娘でしたよね?』
 ちょっと尻込みする。ここで優しいわたしの言葉をかける。
「べつに無理にとはいわないわ。でも、断ったらもっと最悪な人生になるかもね?」
 チョコのように甘くて唐辛子のように辛い言葉。
『……やり、ます』
「ふふっ。それでいいの。金がなくて大変ね」
『約束。忘れないで下さいね』
 さて、準備は整った。ラミア、あんたは燕尾の隣にいなくていいの。隣にいていいのは、

――わたしなんだから
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