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序章-忘却の世界

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「ここは・・・なんなんだ・・・?」

*
四角い部屋
窓際には白い花
ただただ白があるだけの空間
それ以外には
俺しかいない。
白だけの部屋
ただただ。天井を見つめるのみ。

此処は病院。
俺は横になっていた。
たしか、俺はトラックにはねられて・・・。
そうか、今まで眠っていたのか。
曖昧な記憶。思い出す・・・思い出す・・・。
頭に痛みが走る。
右手は吊るされ、足も固定されている。
しかし。怪我しているのかどうかまでは判らない。
打撲なのか、裂傷なのか・・・。
点滴などはない。意識を失っていたなら点滴は要るのでは・・・?
カレンダーには"15日"にまで×がついている。
事故にあった・・・んだっけか?
俺は確かバイクに・・・いや、車だったのか・・・?
何かがおかしい。記憶が曖昧とかそういう問題じゃない。
事故は確か・・・あれ・・・。
思い出せない、いつだ・・・?何日だ?
もしかして・・・?
自分で自分が恐ろしくなってきた。
自分自身がわからない。俺は・・・誰・・・だ?
此処は病院なのか?急に不安になってきた。
"記憶喪失"というやつだろうか。
病院であっているんだよな?
なら・・・どうしたものかとあたふたしていると、

「おや。おきたのか」
どうやら担当医のようだ。
ネームプレートには"石川"と書かれている
パッと見さえない顔立ちで
どうも「いままで適当に生きてきましたよ」オーラ満載だ。
こういっちゃ失礼だけど医者には見えない。
お兄さん・・・ぐらいかな・・・。年齢は三十より若いくらい。
「なぁ、あんたは俺の担当・・・だよな?
 俺は何日寝ていたんだ?俺は誰なんだ?」
怖かった。自分がわからないことが。
俺は素直に質問をぶつけることにした。
「記憶が飛んでいるのか?なぁ?どうなんだ?」
気がはやってしょうがない。一刻も早く真実を知りたい。
「君は14日間も眠っていた。
 それこそ、生死の境で、だ。
 "記憶喪失"に関しては何もいえない。
 ただ、
 記憶は無くなったのではない。
 記憶とズレが生じているだけだ。
 詳しいことは・・・いや、まだだ。」
なんだかよく判らない。知っているのに教えてくれない、そんな
もどかしさを感じる。
なにかあるようだった。
「なんなんだいったい!教えろよ!」
だからこそ怒りをこめて強く叫んでみた。
「君はいまどうしている?
 私は誰だ?何をしている?
 お前の担当だ。その私が知らなくていいといっているのだ。
 知る必要は無い。
 どうせ・・・・

 ・・・じきに知ることになる。
 そのときで十分だ。いまはまだ、早い」
こいつはすべてとはいわなくとも大体は知っているらしい。
少なくとも、俺が知りたいことは他にもある。
「ここはどこだ?
 おれはどこで生活すればいいんだ?」
「・・・」
そいつは黙っていた。
何かあるのだろう。
-ココハドコダ-
-オマエハダレダ-
「クソッ!」
此処から開放されれば・・・
一刻も早く。外を見ていつもと変わらない
何も起こらない平和な風景であることを確認したかった。
*

**
「もう大丈夫、みたいですね」
"石川"と共にいる女性が言った。
こっちは「きちんとした生き方」オーラ。
お姉さん・・・ってかお嬢さん?
石川についているより個人で行動したほうがあんたには向いてるよ。
それは置いといて。
俺はこの日を待っていたんだ。
外に出れる。退院の日。病院かどうかわからないから
退院なのかはわからんが。
いままでは何も見ていなかった。白い部屋。白い花。
何も変わらない日常に飽きていた。
「明日には退院できますね。」
明日・・・明日にはすべてが変わる
その時を待つんだ・・・
"じきに知ることになる"
その言葉を試すとき・・・か?

**

+
「何だ・・・?」
次の日、外に出た俺はそう漏らした
人は地上にはいない。いや、居ないことはないか。
空を見上げれば紫の満月。しかし、夜ではない。
昼間だ。
「これは・・・いったい・・・っ!?」
異様な光景。平和ではない風景。
紫を何かが横切る
「っ!?」
何かよく見えなかった、しかしよくよくみるとそれは。
人だ。人が飛んでいるのだ
「此処は・・・何なんだ・・・?」
ありえない現実に、ただただ俺は戸惑っていた。
+
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