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3.自殺について

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3.自殺について
 

 私は、橋の手すりの上に座っていた。足下には、轟々たる川があり、私の決心は揺るいではいなかった。今、死ななければならない。死にたいという願望は、死ななければならないという義務感に変化していた。そうだ、死ななければならないのだ。後には戻れない。何度か深呼吸を繰り返し、少しだけ下を見た。昨日の雨で増水した川は、うねりを上げて空気を巻き込み、架橋にぶつかって水しぶきを立てる。よし、これならと思った。
手すりに上に手を置き、ゆっくりとバランスをとって立ち上がる。宙を歩くように、右足を出した。体が前に傾倒し、頭が下に移動する。そこで足首に違和感を感じた。誰かが足首をつかんでいる。


つかまれた足を軸に体が回り、橋の側面に顔を思いっきり打ち付けた。鼻血がでる。足首をつかんだ男がぼそりと言った。
「君には家族がいるか?」
男の目は冷たかった。まるでかみそりのように鋭く、私の目を見据えていた。男の顔は整っている。服装が奇妙だった。モーニングの礼服の上に赤黒いローブのようなものを羽織っていた。銀河を守る騎士、そんな格好だった。フォースのご加護があらんことを。鼻血で息ができない。
「金はあるのか?」
男が聞いた。私は無いと答えた。鼻血で鼻が詰まってうまく発音できたか自身は無かったが、男はうなずいた。
「そうか。じゃあ、君には用がない。これからこの足首を離す。いいな、今からこの足首を離す」
下を見た。茶色の川がうねっている。いまさら恐怖感が身を包んだ。男の顔を見て、言う。
「いやだ、死にたくない」
男が笑いながら言った。
「今さっき死のうとしていただろ? 早いか遅くなったかの違いだ。潔く死ね」
「お金ならあります。両親の保険が入ってくるんです」
少し考え込んだ後、ただ、と男が言った。
「落とすが、これで君が死ぬことは無いはずだ。お金についてはいらないが、君に少し興味がわいた。また会えるといいね」
やっぱり落とすのか、助けてもらえるのかと思っていたのだが。落とされた。5メートルほどの高さから頭から川に落ちる。走馬灯が見えた気がして、頭を動かそうとしたら目の前は茶色になった。これで死ぬのか。私の意識は深い泥沼のそこへと沈んでいった。



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