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5.降水確率への考察

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5.降水確率への考察

 空から女が降ってきた。比喩でもなく、虚構でもなく、現実だった。空から女が降って来た。駅ビルの中ほど、23階から地上へ向けて。

彼がたまには外れる、と言ったので私は安心した。元から信じていなかったが、もし本当ならどうしようと思っていた。なにしろ、自殺をみるのだから、死体も見ることになるだろう。私は血が苦手だ。その場で貧血を起こして女々しく倒れてしまうだろう。そのほうが私には相応しいように思える。
彼が駅まで送ろうと歩き出した。私は後をついていく。妙な話を聞いた。オタマジャクシの話だ。東北のほうでオタマジャクシの雨が降ったそうだ。車のボンネットや、屋根の上などに落ちて、住人は不気味がったらしい。
 駅に着いた。駅にはツインタワーと呼ばれる塔が二つ、ついていた。聳え立つ塔は、この町を象徴するにふさわしく思える。そこで彼が「ほら、あれ」とビルを指差した。駅ビルの明かりに照らされて、駅ビルの中ほどに先ほど見た女が立っていた。男にまとわりついていたあの女だ。スカートをはためかせ、呆然とし、ふらふらとあるく彼女はそのまま風に吹かれて飛んでいってしまいそうだ。

風が吹いた。彼女が飛んだ。

風のせいなのか、それとも彼女自身が望んで飛んだのかはわからない。落ちてきた彼女は、頭が砕けてしまい、見る影もない。上半身がほとんどなくなっていた。
彼が彼女を指して微笑む。
「ほら、大当たり」
5

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